仮想通貨はやっぱり危ない?

ブロックチェーンへの評価
(画像=The 21 online)

今年1月末に発覚したコインチェック社の仮想通貨不正流出事件以来、世間の「仮想通貨」への不信の目が強まっている。芸能人など誰それが仮想通貨で損をしたといった話題が出回り、日常会話の中でも「やっぱり仮想通貨は危ないね」という話がよく出てくる(日常会話に仮想通貨が出てくること自体、時代が変わったとも思うが)。

2014年に起きた仮想通貨消失事件、いわゆる「マウントゴックス事件」と比べれば対応は早く、問題自体は収束に向かいつつあるようにも見える。とはいえ、やはり仮想通貨に対する不安定なイメージを植え付けてしまったことは確かだろう。

ただ、この1年ほど、仮想通貨とその基礎技術であるブロックチェーンについての取材を繰り返してきた立場から見た景色は、それとは少し違う。

仮想通貨、というよりはその基礎技術である「ブロックチェーン」への揺るぎない信頼を、話を聞いた人ほぼ全てから感じるのだ。そしてそれは、コインチェック事件後もまったく変わっていない。

関係者から話を聞いているのだから当然ではないか、と言われそうだが、それだけでは説明できないほどに、ブロックチェーンへの評価は高い。評価というよりは、ブロックチェーンの有用性はもはや当たり前すぎて議論の余地がない、というレベルなのだ。

ブロックチェーンは信頼性を担保する

「インターネット以来の革命」とすら呼ばれるブロックチェーン。「分散型台帳」と呼ばれるように、データを記録する技術だ。簡単に説明するのは難しいが、すべての取引履歴がブロックに書き込まれ、それが多くのPCにより検証される。さらに、検証の終わったブロックは、鎖のようにつなげられていき、あとから書き換えるのはほぼ不可能。そのため信用度が極めて高く、お金や個人情報を低コストで気軽に送ることができる。専門家から言わせれば不十分かもしれないが、おおむね、このような仕組みである。

サトシ・ナカモトという日本人風の名前を持つ人物がその発明者とされている。ビットコインも、それに次ぐ仮想通貨として注目を集める「イーサリアム」も、コインチェック事件にて不正流出事件のターゲットとなった「NEM(ネム)」も、ブロックチェーンの仕組みを用いた仮想通貨である。

つまり、ブロックチェーンのキーワードは「信頼性」なのである。面白いことに、世間が感じている仮想通貨へのイメージとは真逆だ。

議論の余地がない大発明だが……

現在のブロックチェーン黎明期を、かつてのインターネット黎明期と比較してみたい。

当時、斬新な技術であることは認めながらも、インターネットについて否定的な見解を述べる人は多かった(そういえばセキュリティに関する指摘が多かった気がする)。そして実際に個人情報の流出などの事件が起こるたびに、インターネットの危険性に対する声が上がったものだった。

一方、仮想通貨を危険視する人はいても、この「ブロックチェーン」という仕組み自体を否定する人はまったく見たことがない。つまり、仮想通貨流出などの問題はあくまで取引所の問題であり、ブロックチェーンそのものの信頼性とは無関係ということだ。

伝わりにくい価値をどう伝えるか?

これほどまでにブロックチェーンというのは、革命的な「発明」だ。ではなぜ、その価値が正しく伝わらないのかと言えば、「イメージがしにくい」からではないだろうか。

そもそもの仕組み自体が簡単ではない、ということもあるが、たとえばインターネットなら、「家にいて世界中のすべての情報を閲覧できる」「店に行かずに買い物ができる」といった未来図を提示することができた。だが、ブロックチェーンが提示する未来には、そうした派手さがない。送金がスムーズになる、個人同士の価値の受け渡しが簡単にできる、など、言ってみれば、今でもできることがより簡単に、低コストでできるようになる、ということだからだ。

仮想通貨にしても、現在の通貨そのものがすでにバーチャルなものだと考えれば、とりたてて目新しいものとも思えないだろう。

一方で、乱高下するビットコインの価格の不安定さが、ブロックチェーンの信頼性というイメージと真逆の印象を与えている。ビットコインの乱高下は仮想通貨を投機手段と考える人の多さによると言われるが、一般には仕組みそのものの不安定さに見える。

ブロックチェーンを活用した新サービスは現在も続々登場している。仮想通貨はあくまでその一つだが、仮想通貨のドタバタがブロックチェーンの印象に結びついてしまっている側面がある。

だが、それによってこの「世紀の大発明」の真価を見逃すのはもったいない話だ。(『The 21 online』2018年03月03日 公開)

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