税制など環境は変わったのか?

日本の2013年度税制改正は富裕層や高額所得者にたいへん厳しいつまり税負担が重くなるものとなりました。所得税の改正では、最高税率が40%から45%に引き上げられました。従来、課税所得が1800万円超の場合は所得税の税率は一律40%だったのですが、2015年以降は新たに課税所得金額4000万円超という区分が設けられここに課される税率は45%となります。

住民税率一律10%と合わせると所得税+住民税は55%になります。また、平成26年度改正において非居住者と外国法人の事業所得に関する課税の基本的な考え方が総合主義から帰属主義に変更される予定となっています。総合主義とは、国内に源泉のある全ての「国内源泉所得」に対して課税を行うというものでしたが、帰属主義とは国内のPEに帰属する全ての収益に課税を行うというものです。

したがって、日本国内にPEを持っていなければ課税はされませんし、また、PEを介さずに日本国内で事業を行うことによって得た収益に対しても我が国のPEが事業を行うことによって得た収益に対してのみ我が国で課税を行うこととなります。日本を脱出した非居住者である日本人富裕層が日本国内にPEを持たなければ日本国内で課税されることはありません。

しかしながら、租税回避行為に関しては日本は厳しい姿勢をとるように変化が見られます。日本でも、2013年末から国外財産調書制度が始まり海外保有資産が5000万円を超える場合、税務当局に報告する制度が生まれ違反した場合には罰則規定があります。

日本人富裕層の租税回避先の変化はあるのか?

シンガポールの日本人富裕層は、日本国内でのビジネスや日本に住所がある場合などには、税務当局によって厳しく監視されるようになりました。そのため、シンガポールへの脱出し、「非居住者」になる日本人富裕層の数が減ってきているとも言われています。

一方、日本の2013年度税制改正は、日本人富裕層にたいへん厳しい、税負担が重くなるものとなりましたので、アメリカへの脱出が増えてきているという話も聞こえています。

まとめ

以上の通り、株式などの巨額の含み益を抱えている日本人富裕層が、香港やシンガポールなどキャピタルゲイン課税のない国に出国し、その国の居住者(日本の「非居住者」)となって後に、保有する株式などを売却して巨額のキャピタルゲインを得る事例が増えていましたが、税務当局の監視が厳しくなってきたことや、最高税率の日米逆転もあり、アメリカへの脱出の事例も増えてきています。