親の過干渉、子供の反抗期にはこう対処する!

家族の悩み,信田さよ子
(画像=The 21 online)

「夫婦の間に会話がない」「子供が何を考えているのかわからない」――。一見、幸せに見える家庭にも多くの悩みがある。誰かに悩みを打ち明けたいが、身内のこととなると気軽に相談できるものではない。それだけに、家族の関係はこじらせると、当事者間で解決しにくいものだ。そこで、カウンセラーとして長年家族の問題を解決してきた信田さよ子氏に、現場で得た知見をベースに、Q&A形式でさまざまなアドバイスをいただいた。

夫婦の関係

Q 夫婦間の会話が少なくすれ違いが増えています。このままで良いのでしょうか。
A 夫婦は「異文化交流」。実は、「距離のある夫婦」のほうがうまくいきます。

夫婦がすれ違うのは、間にある距離が原因だと思われがちですが、実際には逆で、距離のある夫婦が一番長持ちします。つまり、「相手は相手、自分は自分」とお互いに違う人間であることを認め、尊重し合うことが、夫婦関係を長持ちさせる一番の秘訣なのです。

では、すれ違いの原因は何か。それは、夫婦の愛情に対する2人の異なる幻想です。「夫婦は特別な関係だから、お互いに理解し合えているはずだ」「私が疲れて帰ってきたときは気遣ってくれるべきだ」――。こうした幻想を抱いてしまうから、期待が裏切られたときに不満が募るわけです。

結婚生活の正体は、「異文化交流」です。育った環境も違えば、考え方も違う。そんな二人が一緒に暮らすわけですから、異文化のすり合わせが大変なのは当たり前です。子供が生まれれば、育児の考え方にも相違が出てくるでしょう。だからこそ、互いの違いを認め合い、尊重し合うことが結婚生活ではとても大事です。

お互いに絶対にやってはいけないのは、相手を責めること。責めるほうはあまり意識していなくても、責められた側にはしこりが残ります。とくに女性は、昔のことを持ち出してネチネチと相手を責めないように注意したいところです。また、結婚生活は、男性が譲ったほうがうまくいきます。いくら男性が「妻を対等に扱っている」と思っていても、女性のほうは男性が上に感じてしまうことが多いもの。だから、男性が一歩譲る・一段下がるくらいで夫婦の間はちょうどいいのです。

親との関係

Q もう大人なのに、親が必要以上に干渉してきます。
A 「境界線」と「家族のルール」を明確にし、はっきり伝えましょう。

父親のケースはあまり見かけませんが、母親は、娘を自分にとって都合のいいように育て、子供の人生を取り込もうとすることが多いものです。口では「あなたが幸せになればそれでいい」と言いながら、心の中では「最後はあなただけが頼りだからね」と思っている母親が非常に多い。母親は「自分は家族のために生きてきた。自分の人生を生きていない」という思いが強く、同性の娘を通して、自分の人生をもう一度やり直そうとしているからです。

娘が結婚していても、夫が少しでも気を許していると、妻の母親は家庭にどんどん入り込んできます。妻にすれば子供の面倒を手伝ってもらえ、夫にすれば育児の負担が減るのは好ましいように思えます。しかし、これでは母親が家庭の主導権を握るようになってしまうのも時間の問題です。

家族の核を成すのは、あくまでも夫婦です。いくら親でも、夫婦の生活に立ち入ることは許されません。子供夫婦を頼ろうとする親に対しては、「まずは自分たちの生活を大事にしたい」という意思を伝えてもいいと思います。

もし、二世代や三世代同居を選ぶなら、お互いに立ち入りすぎないよう、より明確なルールや配慮が必要でしょう。ただ、多世代同居の家族は、子供が人間の機微がわかる大人に育ちやすいという面もあります。

ともあれ、家族の基本は夫婦であり、「お祖父ちゃんとお祖母ちゃんはその外にいる」。そのあたりを明確にしておくことが大事だと思います。

子供との関係

Q 子供が道を間違えないか不安で、子育てに自信が持てません。
A 親のほうから「子離れ」し、自立を促しましょう。

まず、子育てに自信がないのは、誰もがそうです。他の人はうまくやっているように見えるかもしれませんが、子育ては、失敗して、日々落ち込むのが当たり前。時には、思うようにいかずに子供に辛くあたって後悔することもあるでしょう。しかし、そんなときでも自分を責める必要はないのです。子供の成長を感じ取れたり、感謝してくれたときは無上の喜びに変わります。 

ただ、親が子供夫婦の生活に立ち入ってはいけないように、子育てにおいても、自分の人生と子供の人生に境界を引くことが大切です。これは無力な存在である新生児の間は当てはまりませんが、子供が少し大きくなったら、「この子にも自分の人生がある」と距離を取り、自立を促していく必要があります。

たとえば、子供が小学校5年生くらいになり、親に対して隠し事をし始めたら、「親に隠し事できるようになったんだな。成長したんだな」と思うくらいがいいでしょう。

実は、真面目に一生懸命に子育てをしてきた親御さんのほうが、その子供たちが引きこもりや摂食障害になるケースが多いのです。親は「子供のため」と思って世話を焼いてきたのかもしれませんが、子供からしたら「うっとうしい」でしょう。でも、そう言えば親が傷つくから言えない。親に気を遣いすぎる子供が、プレッシャーからストレスを溜めこんで引きこもりになりやすいのです。

自分と子供の人生は別のものだと考えて、親のほうから境界を作っていくことが大切です。

兄弟の育て方

Q 2人の子供のうち、どうしてもひとりに厳しくしてしまいます。
A 親がそれぞれの個性に着目してあげましょう。

「兄弟は他人の始まり」とはよく言ったもので、兄弟姉妹の関係性は本当に難しいと思います。なぜなら、距離が近い相手ほど、激しい憎悪を感じるからです。家族でなければ、嫌な相手からは離れることができますが、兄弟だとそうはいかないでしょう。

では、何が原因で兄弟同士が反目するのか。その原因は、親の眼差しが大きく影響しています。親が兄弟を見る目は、ややもすると不平等なものになりがちだからです。

たとえば、兄は東大に入学したのに対し、弟は偏差値の低い大学に入学したとします。兄弟を無粋に比較する周りと一緒になって、親までが「お兄ちゃんはえらいのに、あなたはどうしてできないの?」といった態度を取ると、弟の心は傷つき、兄に憎悪を抱くようになるかもしれません。

そのため、兄弟の能力や容姿に差が生じたときは、片方がコンプレックスを感じないように、比較する発言をしないことが必要です。たとえば、勉強が苦手な弟には、運動をやらせたり、音楽をやらせたりするなど、親が「二人にはそれぞれ得がたい個性がある」という態度に徹します。そうすれば、兄弟の確執をある程度防ぐことができます。

なお、兄弟で同じスポーツや習い事をするのは避けたほうがよいでしょう。もし、兄弟が同じ習い事をすることになっても、親は絶対に兄弟を比較してはいけません。親がしなくても、世間が勝手に比較します。親くらいは比較せずに、それぞれの存在を認めてあげましょう。

親戚の関係

Q 親戚づきあいに疲れてしまいます。
A 受け流す努力をし、それでもダメなら第三者に相談しましょう。

昔、世間やご近所づきあいといえば、親戚関係とほぼ同義でした。狭い世界の中ですべてが完結していたため、親族関係がすごく濃かったのです。だからこそ、世間からつまはじきにされないためには、親族の動向に対して細かに気を配る必要がありました。一部地域では、親族が密につきあう家庭はいまだにあります。しかし、現在では会うのも冠婚葬祭くらいというあっさりした親族づきあいが増えているでしょう。親族が離れて暮らす家庭が増えてきているからです。

ただ、つきあいが少なくなったとはいえ、問題がなくなったわけではありません。集まったときに感情を逆なでしてくる親戚はいるものです。

たとえば、「いつになったら子供を産むの?」といった圧力をかけてきたり、家族の子供同士を比較してきたりします。こうした無神経な言動に、内心穏やかではないことも多々あるはずです。

ただ、それも込みの親戚づきあいだと割り切るしかありません。まずは、そうした会話も受け流す努力をしつつ、3回に1回くらいは集まりを断る口実を作ったり、何かと理由をつけて早めに帰るなど逃げる努力をしてみてはいかがでしょうか。

それでも親戚づきあいに疲れてしまったときは、親族以外の第三者、たとえば信頼できる友人やカウンセラーなどに相談してみるといいのではないでしょうか。身内のことは、誰にも相談しにくいものです。専門家による相談機関を利用するのが一番いいと思います。

信田さよ子(のぶた・さよこ)臨床心理士
1946年、岐阜県生まれ。お茶の水女子大学文教育学部哲学科卒業、同大学院修士課程家政学研究科児童学専攻修了。駒木野病院勤務、CIAP原宿相談室勤務を経て95年、原宿カウンセリングセンター設立。親子・夫婦関係、アディクション(嗜癖・しへき)、暴力、ハラスメントなどの問題に関するカウンセリングを行なう。著書に『共依存』『母・娘・祖母が共存するために』(ともに朝日新聞出版)など多数。≪取材・構成:前田はるみ≫(『The 21 online』2018年4月号より)

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