「大人の勉強法」にはコツがある!

資格,高島徹治
(画像=The 21 online)

「今さら資格を取る意味なんてあるの?」そう考える人も多いかもしれないが、それは大きな誤解だ。資格コンサルタントの高島徹治氏によれば、誰でも必ず一つか二つ、自分に役立つ資格が見つかるという。さらに、資格取得に遅すぎるということはないと断言する。自身も53歳から資格取得を始めた高島氏に、資格の活かし方とその勉強法について教わった。

53歳での資格取得で人生が大きく拓けた!

年齢を重ねると記憶力が衰えるなどと言われますが、資格取得に関して年齢によるハンデはありません。実際、私が初めて資格取得に挑戦したのは53歳のとき。経営していた編集プロダクションを譲渡し、ジョブチェンジしようと一念発起したのがきっかけでした。

当時は不動産ブームだったので、軽い気持ちで「宅地建物取引主任者」の資格に挑戦。試験勉強は大学受験以来でしたが、大人になってからの勉強は新鮮で、楽しみながら学ぶことができました。これを機に行政書士、社会保険労務士、危険物取扱者、アマチュア無線などあらゆる資格に挑戦し、いつのまにか取得資格は90を超えるまでになりました。

「今さら資格を取ったところで、何の役に立つのか」と思われる方もいるでしょう。確かに、資格はただ取得しただけでは何も始まりません。大切なのは、「取得後にどう活かすか」の自分なりの戦略を立てることです。

私の場合、それは「セカンドキャリア」に直結していました。出版メディアで培ってきたキャリアと、試験の勉強で得た資格に関する情報や合格のノウハウを組み合わせることで、「資格コンサルタント」という新たな仕事を生み出せると気づいたからです。以後、「資格コンサルタント」として、今に至るまで仕事を続けています。

「使える資格」の決め手!その二大条件とは?

私のように「数多くの資格を取ること」が目的である人は少ないと思いますが、どなたも考えてみれば、自分の仕事に活かせそうな資格が一つや二つは見つかるはずです。

たとえば、「野菜ソムリエ」という資格がありますが、これを食品メーカーや飲食業の営業マンが取得し、名刺に入れておけば「この人は食のプロなんだ」「仕事に対する意識が高い」などの好印象を与えることができ、お客さんとの会話の糸口にもなります。あるいはライターやブロガーとして食についての発信をしたいという人なら、資格が記事の信憑性を担保してくれるでしょう。

つまるところ、資格の最大の効用とは「ハロー効果」なのです。ハローとは「後光」という意味で、その人にプラスの特徴が一つでもあると、全体的にプラスに見えてくるというもの。テレビに出てくるコメンテーターの肩書きに「弁護士」や「ファイナンシャルプランナー」などとあると、コメントに重みを感じるのも同じ原理です。

もちろん、独立・起業のために資格取得を目指すのもいいのですが、まずは、「今のキャリアと組み合わせて活かせる」、「名刺に入れたら信頼度が増す」という二つの基準から検討してみることをお勧めします。

長年、人事や総務などで働いてきた人ならば、社会保険労務士などは勉強内容も理解しやすく、キャリアアップや独立に活かすことができます。商品企画や販売業などに携わってきた人ならば、カラーコーディネーターや色彩検定なども役立つでしょう。今の自分の強みと資格をどうリンクさせるかを考えることで、キャリアの選択肢は大きく広がります。

お酒を飲みながら勉強してもOK!?

さて、目指す資格が見つかったら、いよいよ試験勉強に取りかからねばなりません。ここで大切なのは、「勉強を楽しむ」意識に切り替えることです。

試験勉強は受験以来、という人も多いでしょう。そして大半の人には、「勉強は辛いもの」という意識が染みついているはずです。まずはその思い込みを捨てることから始めましょう。

たとえば、お気に入りのカフェや休日の図書館など、居心地のいい場所を見つけてそこで勉強すれば、気分よく進められます。また、そもそも社会人の勉強は、机の前で行なう必要すらありません。私は中小企業診断士の勉強をしていた際、資格スクールで授業を受けたあとに居酒屋に立ち寄り、一杯飲みながら復習することを楽しみにしていました。

一人で勉強するのが苦手な人は、資格スクールに通うのもいいでしょう。明確な目的意識のある人たちに囲まれることでさまざまな刺激を受け、モチベーションもアップします。また、授業では参考書に出ていない勉強や試験のコツを習得できるでしょう。

百点満点ではなく「67点」を目指そう

これから資格勉強を始める人に、これだけは言っておきたいアドバイスがあります。それは「百点満点を目指してはいけない」ということです。

資格試験の合否判定はあくまで、点数が一定のラインを超えているかどうか。つまり、満点でもラインギリギリでも、評価としては同じなのです。むしろ、満点を目指してすべてを完璧に覚えようとすると、細かいところでつまずき、結果、モチベーションがダウンしてしまうことも多々あります。

勉強に取りかかる前に、受ける試験の合格ラインをまず調べてください。そして、それより「少しだけ上」を目指します。たとえば、多くの試験では「60点」が合格ラインとして設定されていますが、私は万が一の保険の7点をプラスした「67点」を目指すようにしていました。

6割を取るための勉強法は、とにかく基礎重視です。基本となる「確かな知識」だけ身につけて、枝葉となる細かな知識は捨てていく。そうすることで、最短で合格を手にすることができるのです。

資格の世界でよく言われるのは、「高得点で受かった人が成功するとは限らない」ということ。たとえば、税理士や弁護士などの職業も結局は客商売であり、ある程度以上の法律知識さえあれば、あとはいかに親身になって相談に乗ったり、アドバイスできるかで評価が決まってくるのです。

勉強ができて、コミュニケーションが苦手という人ほど、とかく成果の出やすい資格試験の勉強にハマりがちです。ですが、試験で満点を目指すくらいなら、その労力を対人コミュニケーション力など、別の能力を鍛えるのに使ったほうがいいのではないでしょうか。

どの仕事も最終的には「自分をどう売るか」が勝負。どんな資格を取るのかと同様、資格試験の勉強においても、取得後のヴィジョンを描きながら臨むことが求められるのです。

勉強を続けるための3つのポイント

勉強を楽しむ「環境」を作る

自分の好きな場所、たとえば、カフェや居酒屋、図書館などを「MY自習室」としてしまおう。居心地のいい好きな空間であれば、自然と足が向き、集中して勉強に取り組むことができる。一人ではなかなかモチベーションが保てない人は、資格スクールに入学したり、SNSを通じて勉強仲間と情報交換をしたりして、モチベーションを自然に高められる環境に身を置くことも効果的。

自分の「学習タイプ」を知る

どんな人にも自分の「学習タイプ」があり、それに合わせたスケジューリングが継続の秘訣。タイプは大きく「スロースターター型」「スタートダッシュ型」「バランス型」の3つ。スロースターター型はエンジンがかかるまで時間を要するので、最初は少しずつ始め、徐々に時間を増やす。スタートダッシュ型は意欲が高い初期に一気に勉強する。バランス型はコツコツ均等に、がベストだ。

ゴールを「先取り」する

仕事でも勉強でも、まず「ゴールを定める」ことが重要。試験勉強を始める前に試験日を調べ、そこから逆算して日程表を作ろう。いい意味での危機感が得られ、勉強への集中力が増すはずだ。また、「合格体験記」を書くのもお勧め。その資格を目指す理由、努力の軌跡、将来展望などを書いていくことで、自分の中の目的意識がさらに強固になり、モチベーションを保つことができる。

高島徹治(たかしま・てつじ)資格コンサルタント
1937年、東京都生まれ。早稲田大学中退後、週刊誌記者、編集プロダクション社長を経て、53歳の頃から資格にチャレンジ。社会保険労務士、中小企業診断士等90を超える資格を取得。現在は資格コンサルタント・能力開発コンサルタントとして活動、講演やテレビ出演等でも活躍。『40歳からは「この資格」をとりなさい』(中公新書ラクレ)をはじめ、著書多数。《取材・構成:麻生泰子》(『The 21 online』2018年2月号より)

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