家族ぐるみでリスクがとれる教育を

変える力,未来の働き方
(画像=PHP総研)

永久 それをうまく料理できるようにする教育の仕方が必要だと思うのですが、具体的に学校現場でどのようなことをしたほうがいいのでしょうか?

磯山 これまではジェネラリスト教育というか、基本的にみんな同じ金太郎飴を育てるという教育だったわけです。これからはやはり自分で好きな道を選んで突き詰めることができるようにしないといけないですよね。それを応援するような教育のあり方が必要だと思います。

金丸 国語と算数、理科、社会という科目を、一つの序列をつくるためのツールとして使ってきましたよね。小学校から大学に入るまで。そうした科目が得意な子どもは、何でもできるけど特徴がない平均的な大人になってしまう。それらが苦手な子どもたちは、「できないやつ」というレッテルを貼られるから、グレるしかなくなる。これがいま日本の弱点として出ていると思うんです。国語算数理化社会が苦手でも、走るのがすごく速いとか、力が強いとか、一つでも二つでも得意なものを持っているということは希少性だし、社会的に価値がある。それらをもっとポジティブに表現して、そういう希少性や特徴を持った人たちがたくさん集まると強い社会になっていく。

磯山 今の社会だって現実的にはそうですよね。過去に成績がよかったやつが必ずしも豊かになっているとは限らない。

金丸 学校の成績が社会的価値なら、胸に偏差値や大学名を貼って歩けばいい(笑)。

永久 だけれど、それが分かっていても、自分の子どもには国語、算数、理科、社会、英語をきっちり勉強させたいという現実もありますよね。

金丸 まぁ、同じ間違いをする人たちはいるわけです。でも、福原愛選手のお母さんなんか、自分が卓球の選手で、娘を泣かせながらあそこまで育てました。グーグルの創業者ラリー・ペイジだって、6歳からプログラミングを始めたんですよ。両親はコンピューターサイエンスの学者です。要するに、子どもの将来は早い段階から、親ぐるみ・家族ぐるみで考えなければいけないと思います。

永久 それはリスクテイクとも言えますね。子どもの時に、何に才能があるか、あるいは将来何をしたいかなんて、なかなか判断できないですよね。ドイツ人の友達が、中学に入る前に自分の将来を決めなければならないけど、「そんなのできるか!」と言っていたのを思い出しました。

金丸 うちの息子は高校からスイスの学校に行っているのですが、最初の面接の時にいきなり「あなたは将来何になるんですか。何を目指していますか」って聞かれて、本人は「はあ?」と答える。私が横から「いや、まだこれからだと思います」って言ったら、「わかりました。ではお父さんは、彼を何にしたいんですか」と聞くんです。「えっ? それは子どもが決めることで…」って答えたら、「では、お子さんが決めるために、学校は何をしたらいいかを言ってください」と言われたんですよ。その時はもうびっくりしたんですけど、日本のほうが変ですよね。国語、算数、理科、社会の勉強の延長線上で入れる大学に行って。どんな職種に就くかも決めないまま…。

磯山 入れる会社に入る。

金丸 これでは、グローバル競争の中で勝てるわけがありません。日本の社会は、決めてない者同士だから、引き分けで成り立ってますが、国際的にはどんどん弱くなる。