アウトプットを意識して情報を集める

情報,理央周
(画像=The 21 online)

ネットの発達により、膨大な情報が溢れている昨今。大量の情報に埋もれてしまい、必要なものを選び出せないという悩みを持つ人は多いかもしれない。「情報の8割はムダ。有益な情報だけをピックアップするためのフィルターを養うべき」と話すのは、マーケティングコンサルタントの理央周氏。ムダな情報を整理するコツを聞いた。(取材・構成=杉山直隆)

情報の8割はムダ!上位2割を見分けよう

インターネットの登場によって、情報量が膨大になったといわれます。情報サイトやメールマガジンなど、情報が得られるメディアも格段に増えました。

しかし、そのぶん有益な情報が格段に増えたかというと、そうは思いません。実態は、メディアが細分化していて情報の流通量が増えただけ。たとえば、「見出しは違っても、本文を読んでみると他の記事とほとんど同じ内容が書かれている」といったことも少なくありません。メディアが乱立し、真偽が不確かな情報も増えたようです。

このような玉石混交の情報を何でもかんでも鵜呑みにしたり、ストックしたりしていたら、混乱するだけです。

ビジネスの世界では、よく「80対20の法則」が言われます。「会社の成果の8割は、優秀な2割の社員によってもたらされている」というように、全体の数字の大部分は一部の要素から生み出されていることを示す法則ですが、仕事と情報の関係も同じことがいえます。「仕事の成果の8割は、2割の情報から生まれる」ということです。つまり、8割は不要な情報だというわけです。

そんな不要な情報をじっくり読んだり、ストックしたりするのは、時間のムダです。情報収集を仕事の成果に結びつけたいなら、目の前の情報が、上位二割の必要な情報なのか、残り八割の不要な情報なのかを瞬時に見分けるフィルターを持つことが不可欠です。

単なる「知る情報」を「ウィズダム」へ

私たちが集める情報は、財務データや市場シェアなどの、数値を使って表せる「データ」と、メディアや口コミ、仕事の現場などで得られる「事実」を元にした「インフォメーション」の二つに大別できます。

これらの「知る情報」を集めただけでは、仕事の成果には結びつきません。これらを自分の頭で解釈・分析し、「考える情報」を生み出すことが必要です。

知る情報の背景にある法則やポイントなどの「インテリジェンス」を見つけ出し、それを元に「ウィズダム」、実際の行動に落とし込みます。そうすることで、あなただけの仕事の知恵が生まれます。

たとえば、パン店が「ネット通販で売っているラスクが、毎週水曜日になるとすごく売れる」「水曜日はネット通販モールの売上ランキング発表がある」という情報があるとしましょう。これを見て、「水曜日はランキングを確認した客が来る。水曜日に販促施策を打てば売上が伸びるかも」と考えるのがインテリジェンス。「ラスクと他の商品を一緒に買うと送料無料に」というのがウィズダムです。

「考える情報」を生み出すには、「知る情報」を元に、考えに考え抜くことが必要ですが、すべての情報について考えていたら時間が足りません。数多くの「知る情報」のなかから「ヒントになる」と思える情報を見つけることが重要です。そのためにも、情報を仕分けるフィルターが必要というわけです。

「名著」を読んでおけば情報収集はラクになる!?

ではどうすれば、必要・不要な情報を見分けるフィルターを持てるでしょうか。新聞を読んだりネットを見たりしていると、面白い情報が多数見つかりますが、全部チェックするのではムダだらけになります。

まず大切なのは、情報を収集する時に、「最終的なアウトプットを強く意識すること」です。私の場合は、まず見出しを見て「すぐに仕事に役立ちそう」「中長期的に仕事に役立ちそう」な記事だけを選んでいます。そうすれば、不要な情報を短時間で選別できます。

たとえば営業マンなら「お客さんに提供する情報になるか」「業界の動向として知っておくべきか」など、一歩引いて情報を見て、ストックすべき情報かどうかを考えてみましょう。

また、情報収集をする前に、アウトプットをしなければならないテーマに関する基本的な知識を身につけることも重要です。基本知識がないと、その情報が正しいのか間違っているのか、当たり前なのか珍しいのかがわからず、必要・不要の判断がくだせません。

たとえば、マーケティングの世界でいえば、マーケティングの大家といわれる、フィリップ・コトラーなどが書いた基本書をしっかり読み重要な点をしっかり理解していれば、ネットなどに書かれたマーケティングに関する情報が自分に必要かどうかが、すぐにわかります。しかし、基礎知識がないと、すべて鵜呑みにして、ストックしていくことになりかねません。

一度寝かせることでフィルターが働くように

必要な基礎知識はアウトプットの内容によって異なりますが、ビジネスマンの場合は、「業界の知識」は必須でしょう。当たり前のようですが、それが不十分な人は意外と多いと感じます。情報収集をする前に、基本を学べる文献を読んでおきましょう。

基本知識を学ぶときは、さまざまな著者の本を何冊か読むと、多面的な知識がつき、理解が深まります。仕事の合間に読むとなると、一度に学べるテーマは一つが限界です。基礎をしっかり固める時は、他の情報収集をやめて、一つに集中しても良いぐらいです。

はじめのうちは、目の前の情報が必要か不要か、瞬時に判断がつかないかもしれません。

そんな人にお勧めなのは、「2段階でチェックすること」です。

私は、「役立ちそう」という観点で新聞や雑誌の記事を選んでいることはすでに述べましたが、実はその場ですぐに読んでいません。その記事の部分だけを破って、常に携帯しているクリアファイルに入れています。そして、移動中などの時間があるときに取り出して、改めて読んでいるのです。

この方法の長所は、すぐに読まずに、一度寝かせることで、フィルターが働きやすくなることです。「最初に記事を見た時は重要に見えたのに、あとから見ると、そうでもない」と思うことは少なくありません。

また、スキマ時間を使って記事のチェックをすることで、時間を有効活用できることも、大きなメリットです。この方法にしてから、私は1日でいくつもの新聞や雑誌を読めるようになりました。

ネットの記事に関しても、すぐに読まずに、いったん時間を置いてから読むと、冷静に必要かどうかを判断できるはずです。このような手順を踏むと、本当に必要な情報だけが残ります。 

情報はなるべく多く、でもストックは最低限に

残ったものは、ファイリングするか、スキャンして、クラウドで情報を保管できる「エバーノート」にアップしています。

ただし、時系列で溜めているだけだと、あとで必要になったときすぐに引き出せません。引き出しやすい仕組みをつくっておいたほうが良いでしょう。

複雑な仕組みにすると続かなくなるので、簡単な仕組みでかまいません。私は、紙の記事はテーマごとにファイリングしていますが、テーマを増やしすぎないようにしています。具体的には、用途別にメルマガ用、書籍執筆用、大学院での講義用に分けたり、カテゴリー別に、最新メディア、AI・IoT活用、企業情報の六つくらいのテーマで分けています。また、エバーノートの場合は、情報にタグをつけて検索しやすくしています。

ストックする情報は最低限にしたほうが良いですが、情報を収集する段階では、さまざまなメディアをチェックすることをお勧めします。そのほうが、視野が広がるからです。デジタルとアナログ、一次情報と二次情報の両方を集めましょう。

嫌いな情報にも意識して触れよう

注意したいのは、情報収集をしていると、「好きな情報」ばかり集めて、「嫌いな情報」を避けてしまいがちなことです。たとえば、「数字」が苦手な人の場合、企業の決算情報や、統計データなどの情報を無意識にシャットアウトしてしまい、仕事に関係する大事な情報を見逃してしまう、ということが起こり得ます。

そうした偏りを防ぐためには、「必要だけど嫌いな情報」に意識的に触れるようにしましょう。お勧めなのは紙の新聞に見出しだけでも目を通すことです。紙の新聞の良さは、興味のない情報の見出しも目に飛び込んでくること。すると、読むきっかけが作れることがあります。

強制的に嫌いな情報を目にする仕組みをつくることも重要です。私が活用しているのは、グーグルアラート。キーワードと、「1日1回」などと配信頻度を登録しておくと、そのキーワードが含まれるニュースの一覧をメールで教えてくれます。これをざっと見ていれば、苦手な情報にも詳しくなれますし、いつの間にか苦手意識がなくなっていることもあります。

理央周(りおう・めぐる)マーケティングアイズ〔株〕代表取締役
本名、児玉洋典。1962年生まれ。静岡大学人文学部経済学科卒業。大手自動車部品メーカー、フィリップモリスなどを経て、米国インディアナ大学にてMBA取得。アマゾン、マスターカードなどでマーケティング・マネジャーを歴任。2010年に起業し翌年法人化。13年から17年まで、関西学院大学専門職大学院経営戦略研究科で准教授として教鞭をとる。『8割捨てる!情報術』(日本経済新聞出版社)など、著書多数。(『The 21 online』2018年5月号より)

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