値下げをせずに相手を満足させる秘訣とは?

市場,船ヶ山哲
(画像=The 21 online)

「ご予算はおいくらほどですか?」……営業マンの定番ともいえる質問だが、船ヶ山氏は「それこそが大きな誤解」という。そんなことをせずとも、正確な予算を聞き出し、かつ、真の見込み客を見つける方法があるという。その「質問」とは?

売れない営業マンは真っ先に「予算」を聞く

あなたも経験あると思いますが、商談の中で真っ先に予算を聞いてくる営業マンがいます。これがいかにマヌケなことか、逆の立場で考えればわかると思います。

予算を聞かれた人が、営業マンに本当の予算を言うことなどありません。大概の場合、8掛けないしは半値を提示して反応を見るものです。にもかかわらず、営業に慣れていない初心者は、お客の「嘘」を見抜けず、値下げ交渉に応じてしまうわけです。

が、それはビジネスを行なううえで一番やってはいけないことです。お客に言われていちいち価格を下げていたら、信頼などあったものではないからです。さらに、言えば下がるとわかれば、「もっと価格を叩いてやるか」と悪循環を生み出すだけです。

「過去に出してきた金額」を聞けば、時間と労力のムダを防げる

では、どうしたら予算を聞くことなく、相手の「出し値」を知ることができるのかというと、過去に出してきた金額を聞けば、自ずと答えを丸裸にすることができます。

車を販売しているなら、過去、どのクラスの車に乗ってきたのかを聞けば、予算など聞かずとも出し値を知ることができます。エステを販売しているなら、これまでエステにいくらお金をかけてきたのかを聞けばいい。

過去、ライバルに支払ってきた金額を聞き、それが自社の商品と同じような価格であれば、簡単に受注することができます。なぜなら、その金額を一度でも払った経験がある人は、同じあるいはそれ以上の価格を支払うことをなんとも思わないからです。

しかし、これまで同じ商品にお金を払ったことがない人は違います。非常にシビアな値下げ交渉をしたのに、「結局、最後は買わない」というのはよく聞く話です。つまり、その価格帯に対し「支払う文化」があるかどうかが成否を分けるということです。

買うかどうかもわからない人に時間と労力を使う暇があれば、過去、ライバルの商品を買った人だけに焦点をあてるようにしてください。それだけで、冷やかし客に振り回される生活からおさらばです。

値下げをせずにお客を満足させるには?

「日本の習慣上、値下げは通例でしょ」と思い込んでいる人も多いわけですが、お客にとって値下げは本来の目的ではありません。これは考えれば、すぐにわかることです。

とくに、サラリーマンの場合、多少、値下げしてもらったところで、そのぶん給料が増えることもありません。にもかかわらず、なぜ値下げ交渉は行なわれるのかというと「自分の意見を尊重してほしい」という心理が働くからです。つまり、値下げをしなくても「特典」をつけるなどして、その人の意見を尊重してあげればいいのです。

このように言うと、「値下げも特典も同じでしょ」という人がいますが、まったく違います。値下げは、利益をダイレクトに圧迫します。が、特典の場合、極論すれば原価がゼロでも「○○万円相当」といった価値を付加できるのです。

さらに、この特典を活用するメリットは、その客が上司に報告する際に「値下げは規定上できないということでしたが、そのぶん、○○万円相当分の特典をつけてもらえました」と、担当者の「お手柄」にすることで、より強固な信頼を積み上げることもできるのです。

ですので、今後、あなたの口から「今回の予算は……」という言葉が出そうになったら、お口にチャックをすることです。

ただ、一つだけ注意があります。それは、特典であれ一度、口にしたものは「絶対に守る」ことです。約束は信頼に大きな影響を与えるからです。

「どうせ特典だから、まあいいか」などと甘く見ていたら、あなたの信用は一気になくなります。それだけは、注意してください。

船ヶ山 哲(ふながやま・てつ)レムズリラ代表
1976年、神奈川県生まれ。心理を活用したマーケティングを得意とし、人脈なし、コネなし、実績なしの状態から、起業後わずか5年で1,000社以上のクライアントを獲得。その卓越したマーケティング手法は、数々の雑誌やメディアに取り上げられ、現在ではテレビ番組(テレビ神奈川)のメインキャストを務めるほか、ラジオ番組(FM横浜)でもメインパーソナリティーとして活躍中の起業家。また、プライベートでは子供の教育を最優先に考え、マレーシアのジョホールバルに在住。(『The 21 online』2018年05月27日 公開)

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