2010年生まれの小学1年生の母親では「有職」の割合が67.2%へ

小学1年生の母親の就業率

 働く母親が増えている。厚生労働省が5月末に公表した「第7回21世紀出生児縦断調査(平成22年出生児)の概況」によると、2010年生まれの小学1年生の母親が有職の割合は67.2%となり、出産1年前(62.1%)を上回る水準に達した(図表1)。直近の就業状況をみると、もっとも多いのは「勤め(パート・アルバイト)」の34.1%でこれに「無職」(32.5%)が続き、「勤め(常勤)」(26.0%)、「自営業・家業、内職、その他」(7.1%)の順となっている。

上昇する母親の就業率
(画像=第一生命経済研究所)

 この調査には特徴が2つある。1つはこの調査が2010年5月に生まれた子どもを長年にわたって追跡する継続調査として行われているため、回答者の実態とともに、経年変化の状況を継続的に観察できることである。先にみた就業状況の変化はこれにあたる。

 もう1つの特徴は、およそ10年前の2001年に生まれた子どもに関して行われている同様の調査との比較を通じて、同年齢の子どもやその母親にどのような変化が生じたのかを観察できることである。こうした視点でみた場合にも、今回公表された2010年生まれの子どもの母親が有職の割合(67.2%)は、2001年生まれの子どもが小学1年生になった際の母親(55.8%)に比べ11.4ポイント上昇したことになる。つまり、より若い世代ほど、母親が有職である割合は上昇しているといえる。

出産1年前に「常勤」だった母親が継続して「常勤」の割合は40.7%へ

 では、これらの変化には、母親の働き方によってどのような違いがみられるのか。まず、出産1年前に「勤め(常勤)」だった母親に関してみると、子どもの年齢がどの時点でも、2001年生まれの子どもの母親より「勤め(常勤)」の割合が高い水準で推移している(図表2)。加えて第1回から第7回まで継続して常勤である母親の割合は40.7%と、2001年生まれの子どもの母親(28.9%)を11.8ポイント上回り、10年前に比べ大きく上昇しているといえる。

上昇する母親の就業率
(画像=第一生命経済研究所)

出産1年前に「パート・アルバイト」だった母親が有職の割合は68.9%へ

 一方、出産1年前に「パート・アルバイト」だった母親が有職の割合は、今回調査で68.9%に達した(図表3)。子どもの年齢がどの時点でも、2001年生まれの子どもの母親より高い割合で推移している。注目されるのは、第7回調査では12.8%が「勤め(常勤)」となっていることである。こうしたキャリアパスはまだ少ないが、より若い世代に比べ増えている。都市部における保育施設の不足など、仕事と子育ての両立を支えるための環境整備にはなお改善の余地があるが、妊娠や出産、子育てによって女性がキャリアを変更したとしても、就労を続けたり、離職期間を経て就労を再開するといった多様なキャリアデザインを描きやすい時代へと向かっている。

上昇する母親の就業率
(画像=第一生命経済研究所)

 なお、昨年8月に公表された資料(「第15回21世紀出生児縦断調査(平成13年出生児)」によると、2001年生まれの子ども(中学3年生時点)の母親では有職の割合が80.8%に達し、1年前の中学2年生時点で「無職」であった母親の23.7%が「有職」へと転じていた(図表省略)。今回公表された2010年生まれの子どもが同じ年齢になる頃には、有職の母親の割合はさらに高まるだろう。そして、こうした変化は女性が人生設計において妊娠や出産、子育てで就労を中断する場合に、再び働くことを想定した準備を行っていくことの重要性を示唆する。さまざまな理由でこうした決断が必要になる場合もあると思われるが、女性の人生設計という観点からみれば、妊娠・出産して以降も働き続けたり、再び働くために、自身の能力を磨く不断の努力が必要な時代だといえよう。(提供:第一生命経済研究所

上席主任研究員 北村 安樹子
(ライフデザイン研究部 きたむら あきこ)