人生100年時代、長寿は喜ばしいことではあるが、お金のコントロールをしっかりと実践しなければ、将来に渡ってリスクを抱えながら生活を送ることになってしまう。
現在の金融資産や貯蓄額が、40代~60代の日本人平均と比較してどの程度の水準なのかを認識することで、お金をコントロールするために役立てたい7つの数字を紹介しよう。
(1) 金融資産保有額、 (2) 保有資産額の内訳……なかなか聞けない他人の懐事情は ?
興味はあるが、なかなか聞けない他人のお金の懐事情。金融広報中央員会が実施した『家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査] (平成29年) 』から、その実態が浮かび上がる。
金融資産を保有する世帯のうち、その保有額の平均値は「1,729万円」となった。金融資産保有額を中央値でみると、1,000万円となり、平均値と729万円ほど開きがあるのが確認できる。年齢別にみると、40代の平均値が「1,014万円」、中央値が「650万円」、50代の平均値が「1,689万円」、中央値が「1,100万円」、60代の平均値が「2,062万円」、中央値が「1,400万円」となっている。
これらの数値はあくまで目安だが、同調査内の「金融資産を何のために保有しているのか ? 」という質問に対する回答を見ても、「老後の生活資金」が59.9%、「病気や不時の災害への備え」が57.4%と6割近くが老後を意識して備えていることがわかる。
同調査の「金融資産保有世帯の保有資産額」の内訳を見ると、預貯金、債券、株式、投資信託、財形貯蓄、金銭信託・貸付信託、生命保険、損害保険の項目がある中で、各年代ともに、預貯金 (定期性預貯金含む) に次いで、生命保険、個人年金保険、株式の順番で保有しているようだ。
【40代~60代の保有資産額】
・ 預貯金 ……40代:525万円、50代:780万円、60代:1,124万円
・ 生命保険 ……40代:227万円、50代:357万円、60代:349万円
・ 個人年金保険……40代:67万円、50代:171万円、60代:144万円
・ 株式 ……40代:64万円、50代:159万円、60代:143万円
なお全国平均をみると、預貯金が937万円、生命保険が289万円、個人年金保険が102万円、株式154万円となっている。
また個人型確定拠出年金 (iDeCo) の保有金額にも特徴的な傾向が見てとれる。30代の平均保有金額が28万円なのに対し、40代が185万円、50代が310万円、60代が343万円となっている。40代を境に、老後への備えをより具体的に意識しはじめ、行動に移している人が多いのではないだろうか。
(3) 借入金額、 (4) マイホーム取得資金……必要な資金総額と自己資金はいくら ?
金融資産と対照的に、「借入金がある」と回答したのは全体平均で39.7%、40代で62.9%、50代で53.1%、60代で27.0%となっている。借入金残高 (借入金がある世帯) は全体平均額が1,340万円、40歳代が1,651万円、50歳代が1,129万円、60歳代が1,017万円となっており、このうち住宅ローンの割合が順に1,287万円、1,584万円、1,057万円、714万円と半分以上で占められていることがわかる。
関連してマイホーム取得資金の事情について確認しよう。住宅取得資金に必要な資金総額を見ると、全体平均で3,167万円、40歳代で3,154万円、50歳代で3,078万円、60歳代で2,950万円となっている。うち自己資金がそれぞれ1,133万円、916万円、1,263万円、1,808万円となっている。こうした家計事情をみると、余剰資金で住宅ローンの一部繰り上げ返済をおこない、月々のローン返済負担を減らすことも有効な手と言えるだろう。
(5) 収入額、 (6) 可処分所得、 (7) 消費額……いくら稼ぎ、何にいくら使っているのか ?
続いて金融資産の形成に欠かせない収入について。総務省がまとめた家計調査 (2017年) 「1世帯当たり1か月間の収入と支出」の世帯人員・世帯主の年齢階級別 (総世帯のうち勤労世帯) によれば、実収入の全体平均額 (月) は46万9,722円、40~49歳で54万5,379円、50~59歳で54万2,666円、60~69歳で37万5,490円となっている。黒字額 (同上) は、それぞれ、11万1,299円、14万6,751円、11万2,917円、3万1,784円となっている。
日本の年功序列の賃金システムや60代で年金生活に入る世帯もあり、世代別の可処分所得も参考にしたいところ。40~49歳の可処分所得の平均は43万9,370円、50~59歳は43万1,501円、60歳~69歳は31万410円となっている。
いずれの年代も外食を含む食費支出 (食料) の割外が高く、全体平均が6万5,136円、40~49歳で6万9,744円、50~59歳で7万2,096円、60~69歳で7万173円となっている。家計の見直しを考えている世帯は、この食費割合が1つの参考となるだろう。
明確な基準を持つことでお金をコントロールする意識も芽生える
50代では子供の大学進学などで教育費の負担が最も大きくなりがちな時期のため、40代のうちに支出をいかにコントロールして、蓄えることができるかがポイントとなる。また、60歳以上で年金生活に入ると、収入は落ち込む一方、消費支出はそれほど下がらないため、老後の安心のためにも、家計のコントロールをできるだけ早い時期から始めたいところだ。
漠然とした不安から家計のコントロールを迫られるのではなく、各種統計による世帯平均や中央値などを参考すれば、目標設定にもつながり、明確な基準をもってお金のコントロールの意識付けが高まるのではないだろうか。(提供:大和ネクスト銀行)
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