仕事の「ごく一部」が消えるだけでも大混乱に
しかし、それはあなたの仕事が楽になるだけでなく、会社の中で誰かの仕事がいらなくなることも意味している。実際にメガバンクでは、ロボティック・プロセス・オートメーションで数千人単位の社員をリストラすることを発表している。
仮に「人工知能は怖くない論者」が主張するように、人工知能がそれほど発展できずに世の中で使われるようになる未来がどのようなものになるか。それは世の中から数十%程度の仕事が消える未来になる。これはマクロ経済で見れば恐ろしい未来であることに変わりはない。失業率が5%増えただけで世界は大不況になるのだ。
つまり二つめの落とし穴は、たとえ人工知能が人間と同じ能力を未来永劫獲得できなかったとしても、AI失業による大不況がやってくることには変わりがないということなのだ。
鈴木貴博(すずき・たかひろ)経営戦略コンサルタント
東京大学工学部卒。ボストンコンサルティンググループ等を経て2003年に独立。過去20年にわたり大手人材企業のコンサルティングプロジェクトに従事。人工知能がもたらす「仕事消滅」の問題と関わるようになる。著書に『仕事消滅』(講談社)、『戦略思考トレーニング』シリーズ(日本経済新聞出版社)他があり、後者は累計20万部超のベストセラー。経済評論家としてメディアなど多方面で活動している。(『THE21オンライン』2018年6月号より)
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