最近、経済や金融関連のメディア記事などで「ESG投資」というキーワードをよく見かけるようになりました。グローバルでは、投資を行う際のスタンダードな価値観になっている「ESG」ですが、日本で本格的に浸透するのはこれからといわれています。投資する側の視点でも、投資される側の視点でも大事なESGの基本とトレンドなどを解説します。

「ESG」が示す3つの要素とは?

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(写真=g-stockstudio/Shutterstock.com)

「ESG」とは、企業が持続的に成長していくうえで必要な3つの要素、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)を総称した言葉になります。企業に投資をする際、利益率などの指標に加えてこの3つの基準を重視するのがESG投資です。

1つ目の「環境問題への取り組み」は、世界的に待ったなしの流れになっています。そのため、環境対策に貢献する企業を高評価し、逆に、環境対策に消極的な企業を低評価する流れがグローバルに起こっています。一例としては、2018年6月、欧州2位の投資ファンドのLGMI(イギリス)が、環境対策を進めない世界8社の会長再任に反対票を入れたような動きです。

2つ目の「社会の一員としての企業のあり方」も、厳しく問われる時代になりました。ニュースでは企業の不祥事が後を絶たない状態が続いています。内容も社員個人による不正から、組織ぐるみの構造的なものまで多岐にわたっており、倫理観の欠如が問題になっています。いわばふだんの行いが見られる時代になったといえるでしょう。国内の大手鉄鋼メーカーの性能データを改ざん、あるいは、自動車メーカー各社の無資格検査員による安全性チェックによる信用失墜は記憶に新しいところです。

3つ目のガバナンスは「統治」の意味で、コーポレート・ガバナンス(企業統治)とう言葉がよく知られています。企業としてどれだけ方針や活動が統一されているかが重要で、同じグループ企業なのに環境問題や社会的責任の度合いに著しい差があれば、信頼が失われることになりかねません。

GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)や大手企業も取り組み始めた日本の「ESG」

グローバルでは、このESGを重視した投資は2,500兆円に及ぶといわれており、投資活動の積極性を高めています。日本はこの分野で後進国ですが、海外投資家の目が厳しくなる中、企業側の意識は急速に変わりつつあるのです。

例えば、2018年9月には丸紅が石炭火力発電所の新規開拓から撤退し、再生エネルギーに注力することを発表しました。二酸化炭素の排出量が多い石炭火力発電所は、ESG投資が広がる環境では厳しくなると判断したためといわれています。

また、日本企業でESG評価が高いといわれるダイキン工業では、2020年度を目標に推進する戦略経営計画「FUSION20」で、ESGを軸に活動を構成しています。3つの軸のうち、環境だけを見てみても「気候変動の対応」「資源の有効活用」「化学物質の管理・削減」などのメニューが並び、それぞれに具体的な施策と、数値データが公開されているのです。

こういった活動は、そのまま企業のイメージアップにもつながるため、今後も「ESG」活動を重視する企業は増える可能性は高いでしょう。さらに、日本の国民年金を運用するGPIFがESG投資に着手し、2017年から1.5兆円を振り分けているなど、ESGを軸に投資をする側の意識も変化しつつあるようです。

メガバンクと地銀が協調融資。「ESG」投資の拡大に貢献

2018年8月になって、国内の「ESG」投資に新しい動きが出て注目を集めています。3大メガバンクの一角、三井住友銀行が「ESG」活動に取り組む企業への資金供給を目的に、地方銀行にシンジケートローン(協調融資)への参加を募ることを発表しました。

第1弾として2018年9月に住友化学株式会社へ200億円の融資を実行することが決定しました。まずは、グループ関連企業に行うことで足掛かりを作りたいということのようです。参加する地方銀行は20行程度になる見込みで、三井住友銀行が「ESG」を融資の評価軸にして取り組みたい地方銀行側のニーズに応える形で実現しました。

先の2018年7月には環境省がESG金融懇談会を通じて、ESG投資への提言を発表しており、三井住友銀行の動きはその提言に沿った施策といえそうです。超低金利で利ザヤが縮小している金融業界だけに、メガバンクと地銀が協調融資という形でタッグを組むことはお互いにメリットがあり、今後も広がることが予想されます。(提供:Wealth Lounge


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