中小企業で「今期は見込み以上の利益が出そうだ」というとき、節税策として挙がりやすいのが「社用車の購入」です。車は耐用年数が短いため、1年当たりの減価償却費を多く計上することができ、利益を圧縮しやすいというメリットがあります。では、高級外車も社用車として認められるのでしょうか。本稿では社用車のボーダーラインを考えます。

フェラーリが社用車として認められたケースもある

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(写真=g-stockstudio/Shutterstock.com)

「国産メーカーの高級車は、社用車として認められる(車種例:レクサスなど)」

「高級外車は、社用車として否認される(車種例:ベンツやBMWなど)」

このように税務調査において「国産車は有利」「高級外車は不利」と考える税理士や経営者もいますが、実際には、数多くの経営者がベンツやBMWを社用車にしています。それどころか、国税不服審判所(裁判で争う前段階の審判機関)で争われたケースの中には、フェラーリが社用車として認められたケース(非公開裁決平成7年10月12日)さえあります。

そのため、「高級外車(スポーツカーも含む)は否認される」は必ずしも鵜呑みにする必要はないということになります。しかし、「高級外車も会社の経費にできる」と短絡的に考えるのは危険です。その経費が「税務署に認められるか、否認されるか」に絶対の法則はないからです。判例は、ある程度の目安になりますが、似たようなケースでも「この会社の抗弁には、合理性がない」と判断されれば否認される(=経費にできない)こともあります。

〈否認されないためのポイント〉走行記録をしっかり残す

では、どのようなことに注意すれば、否認リスクを抑えられるのでしょうか。ポイントは、大きく分けて2つあります。1つ目は、その車が実際に業務で使われていた証拠となる「運転日報」をしっかり残すことです。運転日報には、さまざまなフォーマットがありますが一例は次の通りです。

  • 使用した日時・目的
  • 訪問した場所
  • 走行区間・走行前後のメーター距離数
  • 燃料購入状況
  • 社用車を利用した担当者

こういった証拠をしっかり残しておけば、税務調査が入ったときに「この車は社用車として使われていた」と主張することも可能になります。逆にいえば、社用車として使っている確かな証拠がないと、国産の大衆車でも否認される可能性があるということです。走行記録の管理がしっかり行われていない会社は、改善を検討する必要があるかもしれません。

〈否認されないためのポイント〉プライベートカーと明確に区別する

2つ目のポイントは、経営者自身が社用車を頻繁に使用するのであれば、プライベート用の車と社用車をしっかり区分けすることです。たとえば、プライベート用の車を持っていないのに、高級外車の社用車を頻繁に使用していれば、「この車は社用車と言いつつ、実際は社長のプライベートカーではないか」と税務調査時に疑われても仕方ありません。

上述したように業務で使った証拠をしっかり残し、あわせてプライベート用の車との区分けをはっきりさせておけば、社長が高級外車の社用車を頻繁に使用しても、否認される可能性は低くなります。しかし、冒頭で述べたように税務調査に絶対の法則はありません。担当者が変われば、まったく別の視点で否認の理由を探してくるかもしれませんし、最終的には、税務調査時に顧問税理士が抗弁できる自信があるかが鍵となってきます。そのため、顧問税理士に必ず相談したうえで、購入する社用車の車種やタイプを決定しましょう。

社用車は、新車と中古車どちらにすべきか

社用車を購入する際、「新車」と「中古車」どちらにすべきかで迷う経営者も多い傾向です。節税という観点からいえば、中古車のメリットが大きいと考えられます。理由は、中古車の耐用年数の方が短く車の価格が同額なら1年当たりの減価償却費を多く計上しやすいからです。

  • 新車の耐用年数 最長6年(一般的な普通自動車の場合は6年、一般的な軽自動車の場合は4年。構造・用途などによって異なる)
  • 中古車の耐用年数 2~5年(一般的な普通自動車の場合。購入してからの年数・構造・用法などによって異なる)

※詳しくはこちらの国税庁HPをご覧ください。

加えて、ベンツやBMWなどの高級外車は、中古車の場合でも比較的、資産価値が落ちにくい傾向にあります。ランクの高い高級外車を社用車にしておくことで、会社の経営がピンチのときに現金化するという選択肢が出てくるかもしれません。(提供:Wealth Lounge


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