東京株式市場では10月下旬以降、2018年4~9月期の決算発表が実施されてきましたが、「保険」を除く業種では発表が実質的にすべて終了しました。このうち、3月決算企業(金融を除く全産業)について集計(日本経済新聞社による集計)すると、上半期(2018年4~9月期)は売上高が前年同期比7.4%増、経常利益が同12.2%増、純利益が19.6%増でした。通期(2019年3月期)予想は売上高が前期比3.6%増、経常利益が同6.2%増、純利益が1.2%増の見込みとなっています。

一般的に、3月決算銘柄については、2018年4~9月期の決算発表が終ると、来期(2020年3月期)の業績見通しが織り込まれてくると考えられています。米中貿易摩擦やスマホ市場の減速等が警戒され、企業業績に対する逆風は強まりつつあり、東京株式市場では選別色がかなり鮮明になってきたと考えられます。

今回の「日本株投資戦略」では、来期(2020年3月期)の市場予想増益率が高い銘柄をスクリーニングにより抽出し、ご紹介することとしました。無論、今期(2019年3月)に落ち込んだ後、来期の増益率が高くなるという順調さを欠いた銘柄ではなく、今期も好業績を維持したうえで、さらに利益の伸びが期待される銘柄をご紹介したいと思います。企業業績に対する逆風が強まり、株価が押し目を形成しやすくなっていますが、ご紹介する銘柄はそこが投資の好機になると期待しています。

「波乱相場」で押し目買いを狙いたい来期増益予想銘柄

日本株投資戦略,投資チャンス到来銘柄
(画像=PIXTA)

それではさっそく、スクリーニングにより、銘柄の抽出を試みてみたいと思います。スクリーニング条件は以下の10条件です。

(1)東証1部上場銘柄であること
(2)3月決算銘柄であること
(3)時価総額1,000億円以上の銘柄であること
(4)広義の「金融」以外の業種に属している銘柄であること
(5)2名以上のアナリストが業績予想を公表していること
(6)上期(2018年4~9月期)の営業利益が、事前の市場コンセンサスを上回っていること
(7)上期(2018年4~9月期)の営業増益率(前年同期比)が通期(2019年3月期)市場予想増益率を上回っていること
(8)通期(2019年3月期)の市場予想営業利益が9月末から11/15(木)にかけ、上方修正されていること
(9)過去4週間で市場予想EPSが上昇していること
(10)来期(2020年3月期)の市場予想営業利益が10%以上の増益予想となっていること

上記の全条件を満たした銘柄すべてについて、(10)の来期予想営業増益率が高い順からご紹介したものが表1となります。これらの銘柄は、今期も好業績を維持したうえで、来期さらに利益の高い伸びが期待される銘柄であると考えられます。現在、企業業績に対する逆風が強まり、株価が押し目を形成しやすくなっていますが、ご紹介する銘柄はそこが投資の好機になると期待しています。

日本株投資戦略,来期大幅増益予想銘柄
(画像=SBI証券)

表1:「波乱相場」で押し目買いを狙いたい来期増益予想銘柄
コード / 銘柄名 / 株価(11/16) / 2018年4~9月期営業利益前年同期比 / 2018年4~9月期営業利益市場予想比 / 2019年3月市場予想営業増益率 / 2020年3月市場予想営業増益率
<6976> / 太陽誘電 / 1,987 / 67.5% / 6.3% / 44.9% / 37.5%
<5440> / 共英製鋼 / 2,246 / 161.3% / 32.4% / 58.3% / 21.0%
<2181> / パーソルホールディングス / 1,993 / 27.7% / 1.9% / 20.6% / 17.8%
<6197> / ソラスト / 1,285 / 29.3% / 2.9% / 24.3% / 16.4%
<6055> / ジャパンマテリアル / 1,090 / 62.3% / 7.1% / 38.6% / 15.3%
<7518> / ネットワンシステムズ / 2,157 / 113.6% / 22.5% / 49.7% / 11.9%
<8056> / 日本ユニシス / 2,635 / 21.3% / 9.4% / 12.3% / 11.7%
<2371> / カカクコム / 2,017 / 11.3% / 2.1% / 9.9% / 10.5%

※Bloombergデータ、会社公表データをもとにSBI証券が作成。2018年4~9月期の営業利益で「市場予想比」は、営業利益実績が事前の市場コンセンサスを何%上回ったのかを示している。「市場予想」はBloombergが集計したアナリスト予想の市場コンセンサス。

抽出銘柄の株価推移・投資ポイント

表1でご紹介した銘柄は、今期の営業利益について、市場予想を上回る着地(通常は「ポジティブ・サプライズ」となる)が期待できるのみならず、来期についてもさらなる利益の伸びが期待されています。このため、普通に考えれば、利益成長に対する市場の期待を反映し、株価も順調に上昇することが予想されます。

しかし、それらの銘柄についても、足元の株価は下落気味となっていることが多いようです。これは、アナリストの業績予想に対し、株式市場が「疑問を呈している」状態であると理解することもできます。ここで重要なことは、株式市場の「疑問」に近づくことができるか否かだと思います。株式市場の「疑問」の正体を理解でき、それが株価の押し目を形成しているのであれば、「疑問」が織り込まれて下げた後は、株価の反発が期待できるためです。

投資家にとって、その理由を理解できる株価下落は実は深刻ではなく、逆に理由のわからない株価下落や、根拠の乏しい期待に基づく株価上昇の方が深刻な問題につながると考えられます。

太陽誘電(6976)は電子部品メーカーであり、一般的に「アップル関連株」の一角と捉えられているため、足元はスマホ市場の減速観測が響き、7/25(水)からの株価下落率は46%に達しています。ただ、主力製品である積層セラミックコンデンサ(MLCC)の市場は、車載向け市場の成長が大きく、仮にスマホ向け市場が減速してもカバーできると考えているアナリストが多いようで、同社の営業利益は来期37.5%増伸びると、市場では予想しています。

共英製鋼(5440)は電炉大手で、おもに鉄筋コンクリート向けに使われる「棒鋼」を生産しています。製品である「棒鋼」や原材料である「鉄スクラップ」の市況に大きく左右され、長期的に業績は浮き沈みを繰り返しています。中期計画では、経常利益を2018年度70億円(予想)から2020年度に140億円に拡大する方針で、海外売上高の拡大が成否のカギを握っているようです。ちなみに、海外はベトナムが多く、まだまだ量は少ないものの米国でも生産しています。同国が実施する鉄鋼の輸入制限でライバルだったトルコからの輸入と競合状態がなくなり、需要が増加し、フル稼働状態(11/1付 日経新聞)であることが伝えられ、株価は一時急騰しました。

ジャパンマテリアル(6055)は東芝メモリを主要顧客にしており、同社向けの配管工事や特殊ガスの販売が伸び、上半期は営業利益が前年同期比25.8%増となりました。しかし、9/20(木)付ですでに上方修正を発表していることもあり、今回は上方修正はありませんでした。東芝向け受注、および半導体業界自体のピークアウトを心配する向きもあり、株価は11/9(金)以降、22.5%下落しました。年初来高値からの下落率はすでに42%に達しています。

ネットワンシステムズ(7518)はネットワーク機器の大手です。企業のネットワーク投資が増えるか否かが業績の好・不調を分ける企業と考えられます。自動運転やIoTの実現に不可欠とされる次世代通信規格である「5G」の普及は追い風とみられます。SBI証券でご紹介する「テーマキラー!」では5G関連銘柄に採用されています。株価は9/28(金)に業績予想の上方修正を発表し、好材料出尽くし状態となり、10/1(月)2,710円から10月末には2,013円まで下落しました。その後2,567円までリバウンドし、現在は2番底を形成しつつあるように思われます。「自動運転」や「IoT」、「5G」など有力な投資テーマに絡み、好業績が見込まれているだけに、押し目買い候補銘柄と言えそうです。

図1:太陽誘電(6976)・日足

日本株投資戦略,来期大幅増益予想銘柄
※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成

図2:共英製鋼(5440)・日足

日本株投資戦略,来期大幅増益予想銘柄
※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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鈴木英之
SBI証券 投資調査部

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