米国の富裕層の7割が、「子どもは自分の大学の費用を少しでも負担すべき」と考えていることが調査で明らかになりました。大学進学という子どもにとって重要なステップを活用し、子どもの金融リテラシーを向上させることが主な目的です。
「大学進学を真剣に受けとめさせたい」
調査は2012年、米国の老舗資産運用企業レッグ・メイソンが1,000人以上の富裕層(投資可能資産額25万ドル以上を保有)を対象に実施したものです。子どもが自分の大学費用を負担する割合について、72%の親が「少額」、3分の1が「最大で半額」、7%が「ほぼ全額」、2%が「全額」と回答しました。
子どもに一部でも負担させることで「大学進学をより真剣に受けとめ、価値を認識させる(63%)」、あるいは「責任感を育む(34%)」ことが目的です。
一方、「親が全額負担すべき」と答えた親は28%。「親としての責任(41%)」「勉強に専念させるため(33%)」「ローンを借りさせないため(21%)」「大学生活を満喫させるため(5%)」などを理由に挙げています。
健全な金融リテラシーを身に付けさせる機会
子どもに学費を負担させるかどうかに関わらず、富裕層の約4分の3が大学進学を「子どもに健全な金融リテラシーを学ばせる機会」ととらえています。米国だけでなく日本でも大学費用が年々増加傾向にありますが、多くの親が「大学費用が卒業後の人生に及ぼす影響についても子どもに認識させたい」と考えており、子どもとお金について話し合う機会を持っています。
親子間のお金の会話は、お金の稼ぎ方(94%)、大学費用の支払い(87%)、予算の組み方(85%)に始まり、貯蓄プラン(78%)や投資の仕方(53%)まで、すべてが子どもの将来に役立つ内容です。
大学費用に関しては「いくら必要なのか(92%)」を子どもに理解させ、「奨学金制度(82%)」「少しでも費用の支払いに貢献する必要性(73%)」「学資ローンが将来に及ぼす影響(63%)」などについて話し合っています。
2人に1人が「30歳以上の子どもを経済的に援助」
お金の価値を子どもに理解させることは、子どもの将来だけではなく、親の将来にも大きく影響します。
HSBCが2016~2017年にかけて世界13カ国で1万3,000人以上の親を対象に実施した調査では、70%が「自分の老後の貯蓄より、子どもの学費を優先する」と回答しました。一方で2人に1人が30歳を過ぎた子どもを経済的に支援しており、4人に1人が子どもの休暇の費用まで負担しているといいます。
またメリルリンチが2018年に発表した調査からも、79%の親が成人した子どもに何らかの経済的援助を行っていることが分かっています。
各国の文化的背景も考慮すべきですが、この結果は子どもと親の金融リテラシーの欠如の可能性を表しています。
学費を負担することだけが支援ではない
こうした例をみると、「経済的な支援だけが、子どもの教育や社会的成功を奨励する方法ではない」という親の見解にも納得できます。「子どもにとって最適な大学や奨学金制度、下宿先の選択をサポートする」、あるいは「子どもが一流大学に奨学金で入学できるように、高校卒業までの教育に投資する」という意見もあります。
「学資ローンで子どもの将来を縛りたくない」「親として可能な限り援助したい」という親心は理解できますが、子どもがお金の価値を理解していないとお互いの将来にマイナスに作用するかもしれません。
「実践で学ばせる」という考え方は、子どもの金融リテラシーを向上させる上で非常に有効な手段ではないでしょうか。(アレン・琴子、英国在住のフリーライター / d.folio)