超富裕層が家族や一族の資産を自ら運用する「ファミリーオフィス」はアジア圏でも数多く設立されています。ジェフ・ベゾス氏やジョージ・ソロス氏、アマンシオ・オルテガ氏など、世界の大富豪も運営する「ファミリーオフィス」とはどのようなものなのでしょうか。

ファミリーオフィスは究極のプライベートバンク?

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(写真=Photobac/Shutterstock.com)

ファミリーオフィスとは、家族や一族の資産を独立した組織内で管理・運用する、究極のプライベートバンクのようなものです。現在保有している資産を守ったり増やしたりするだけではなく、一族の永遠の繁栄を願い、後世に継承することを目的としています。

ファミリーオフィスの先駆者として、19世紀からファミリーオフィスを運営している米国の名門一族ロックフェラー一族の名が挙げられることが多いのですが、同じ概念は古代から存在していたそうです。

現在のファミリーオフィスは、古代の富裕層の資産運用法を時代に合わせてアレンジしたもので、一族専属の専門家(弁護士・会計士・税理士など)が事業運営、税金、継承、慈善団体への寄付、投資など、資産に関するあらゆる業務に対応しています。また、子どもの教育や旅行の手配、家庭内のトラブルといった、資産とは直接関係のないライフスタイルの管理も請け負っています。

そのため、従来のプライベートバンキングよりも、広範囲にわたり一族の富や繁栄を総合的に管理できるというメリットがあります。

設立にはどれくらいの資本が必要?

ファミリーオフィスを設立している富裕層というと、ジョージ・ソロス氏やジェフ・ベゾス氏、アマンシオ・オルテガ氏などが有名ですが、実際にどれぐらい資産があれば利用できるのでしょう。

ファミリーオフィスの設立に関して厳密な基準はありませんが、設立費用や維持費などをカバーするために、5,000万ドル以上の資本が必要とされています。つまり、かなりの資本家でない限り設立は難しいということになります。

以前はファミリーオフィスは単体の家族の資産を管理する「シングル・ファミリーオフィス(SFO)」が主流でしたが、富裕層の増加にともない、複数の家族の資産を管理する「マルチ・ファミリーオフィス(MFO)」も増えています。

ロックフェラー一族も現在はMFOに変化し、様々な家族や個人、国際機関を顧客として総額430億ドルの資産を運用しています。

正確な数字は公表されていませんが、EYは「ファミリーオフィスガイド2016年改訂版」の中で、SFOだけでも世界中に1万件以上存在し、そのうち少なくとも半分が過去15年間に設立されたと推測しています。

アジア圏の富裕層間で拡大するファミリーオフィス

これまで欧米の富裕層による設立が主流だったファミリーオフィスですが、富裕層の拡大を受け、アジア圏でもファミリーオフィスを設立する富裕層が増えています。

国際ファミリーオフィス部門をもつUSBいわく、アジア圏で設立されるファミリーオフィスの数は他の地域をはるかに上回っているおり、今後も増え続けると予想されています。500人の大富豪をランク付けした「ブルームバーグ・ビリオネア指数」では、2018年6月時点で、アジア圏のビリオネア数がランキング全体の27%を占めています。特に中国のビリオネアの成長は著しく、2017年は総資産が67%(1,770億ドル相当)も増えました。「莫大な資産を後の世代に継承したい」と望む富裕層が増えるのも、不思議ではありません。

近年はインドでも民間の銀行に代わり、自らファミリーオフィスを設立して資産管理・運用を行う富裕層が増加傾向にあるそうです。

USBやゴールドマン・サックス、クレディスイス・グループなどはアジア圏の富裕層顧客獲得に向け、アジア市場におけるファミリーオフィス関連サービスの強化を計画しています。日本でも、ファミリーオフィスが世代を超えた新しい形の資産運用法として受け入れられる日が訪れるかもしれません。

文・アレン琴子(英国在住のフリーライター)

(提供:JPRIME


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