将来の人生設計を明確に立て、流動資産の現金以外にも、株式や債券、不動産、投資信託に分散しながらポートフォリオを形成し、資産運用には積極的に取り組んでいるつもりが、気が付けば、その対象が円建て、国内の企業や不動産に偏っているということはないだろうか。投資にあたり、商品のブランドに馴染みが深く、親近感から国内企業を中心にポートフォリオを組んでしまう、身内びいきに似た現象が発生する。

この現象は、行動経済学で「ホームカントリーバイアス」と呼ばれる。いま一度、自身のポートフォリオがホームカントリーバイアスにかかっていないか確認した上で、そのリスクについて考えてみたいところだ。

ホームカントリーバイアスはなぜ起こる ?

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(写真=PIXTA)

国内市場は、バブル崩壊後の失われた20年とも揶揄された低成長率、さらには日本銀行のマイナス金利政策導入に伴い、超低金利の状態が続く。一方、安定した成長を続ける新興国は市場での存在感を増すほか、米国は経済危機から立ち直り、政策金利が引き上げられている。古典的な経済学の観点に立てば、高成長が続く新興国市場に投資したり、日本より金利の高い米ドルで資産を運用したりする方がより高いリターンが期待できそうだ。

しかし行動経済学では、人間は必ずしも合理的な判断だけに基づいて行動するのではないという視点に立つ。投資の世界においても、新興国市場への投資や、高金利通貨での運用の方が高いリターンが期待できるにも関わらず、必ずしもポートフォリオの形成にあたって、こうした投資対象に資産を優先的に振り向けられるというわけではないということだ。

さらに投資理論では、リスク軽減と安定したリターンを目指すにあたり、一つの国だけでなく、様々な地域や国にバランスよく配分することが効率的とされる。理論上は明確だ。しかし日本人の場合は、円建てによる資産運用、投資先も国内企業・不動産が主な対象となり、自分の国の資産が中心となるホームカントリーバイアスの状態に陥っている例が目立つ。1990年代後半からの金融ビッグバンにより、外貨での運用など投資のチャネルが拡大してからまだ歴史が比較的浅いことも、ホームカントリーバイアスに拍車をかけている一面があるのではないだろうか。

こうした状況は、投資に保守的とされる日本人にだけ起きる現象ではなく、米国人などもホームカントリーバイアスにかかる。

ホームカントリーバイアスから脱出してリスクヘッジを

投資先が自国のため、複雑そうな海外投資や外貨での運用と比較すると、安心感は得られる一方、資産が国内だけに偏ることで機会損失につながる可能性がある。つまり、新興国市場を中心とする経済の高成長を取り込みながら資産を増やしたり、外貨への投資で金利収入を得たりする機会を逃す可能性があるということだ。また、円安が進行した際に伴う購買力の低下を阻止する観点や、国内市場で経済危機が発生した場合に備える観点から、投資対象を海外資産や外貨に振り分けていないと、リスクヘッジが効かなくなる場合もある。

リスクをコントロールする上で、ホームカントリーバイアスの考えを認識することは重要だが、投資対象の中心を海外資産や外貨に向けなければならないということではない。一旦、円高の状態になってしまうと、海外資産や外貨での運用を円建て換算した場合に、資産が目減りしてしまうリスクも存在するし、外貨建ての運用には外国為替手数料などのコストがかかる。

投資にあたり、まずは、ホームカントリーバイアスによって円建て資産への投資に傾倒しやすい状況を認識することが重要だ。その上でリスクを管理する観点から、海外投資や外貨での運用も取り入れ、国内外への投資バランスが整ったポートフォリオの形成を検討してみてはいかがだろうか。(提供:大和ネクスト銀行


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