「背中を見て学べ」は通用しない時代

リーダーマネジメント,糠谷和弘
(画像=THE21オンライン)

深刻な人材不足、度重なる制度改正、オーナーと現場の板挟み……。介護施設の責任者である「介護施設長」の置かれた現状は過酷だ。実際、「施設長にさせられたら辞めよう」と考えている介護士も少なくないとう。

こうした状況をなんとか変えたい──。そんな思いから、人気介護経営コンサルタントの糠谷和弘氏は、数多くの施設長・リーダーにマネジメントの方法論を指導してきた。その経験をもとにまとめたのが、近著『介護施設長&リーダーの教科書』だ。

その糠谷氏に「よくある間違った施設長像」についてうかがった。他業界のビジネスパーソンも、「施設長」のところを「マネージャー」に置き換えて読んでみてほしい。大きな気づきがあるはずだ。

施設長は“現場”にいてはならない

「マネージャーは、現場主義でなくてはならない」「答えは現場にあるのだから」と言う人がいます。

中間管理職の仕事の仕方を語るビジネス書でも、「現場第一」を重要視しているものがたくさんあります。

確かに、「現場にいないと、大切なことを見落とすかもしれない」「現場を見て判断するほうが正しいに違いない」と、現場を重要視する理由は理解できます。

しかし、この「現場第一」の考えが、多くの施設長から「やるべきこと」を奪っていると、私は考えています。

施設長の多くは、現場出身です。きっと、現場での介護職、医療職としての仕事ぶりが認められて、今のポジションにいるのでしょう。

言い換えれば「誰よりも現場がわかっている人」ということになります。ほとんどの施設長が、もとは「職人集団の親分」なのです。

そんなあなたが現場に出てしまうと、どんなことになるでしょう。スタッフからは頼られ、お客様からは「施設長が顔を出してくれるなんて嬉しい」と喜ばれるに違いありません。

実は、ここには大きなリスクが潜んでいます。

苦手な管理業務をやるよりも現場で力を発揮したほうが、あなたにとってよほど気持ちが楽なはずです。他のスタッフよりも(当たり前ですが)活躍できますから、まわりから褒められます。

すると、あなたの中に「私は、現場から離れられない」「現場が、私を必要としている」という考えがわき起こり、少しずつ現場にいる時間が長くなります。自ずと体も疲れますから、「仕事をした」という充実感もあるかもしれません。

しかし、それは大きな誤解です。そんなことで、満足していてはいけません。

よく考えてみてください。あなたの役割は、現場で誰よりも活躍することでしょうか?

違います。現場のことは、あなたの部下である現場スタッフがやるべきです。それを取り上げてはいけません。