前日については、アジア時間早朝の商いの薄い時間に、ドル円は104円を割り込む動きとなりました。背景としては、2日に発表された12月Caixin中国製造業PMIが49.7となり、2017年5月来で最低となったこと、さらには、景気判断の節目とされる50.0をも割り込み、米中貿易戦争の悪影響が数字として現れていることが嫌気されました。また、アップルの売上見通し下方修正をきっかけにダウ先物が急落し、世界的な景気減速懸念が意識されたことも暴落のきっかけになったと考えられます。
海外時間では、12月ADP全米雇用数で政府部門を除く非農業部門雇用者数が前月比27.1万人増と予想の17.8万人増を大幅に上回ったことが分かると、ドル円は一時108円付近まで反発しましたが、12月米ISM製造業景気指数が54.1と予想の57.9を下回ったことが分かると、ドル円は107.10円まで下落するなど、アジア時間から継続しているボラタイルな動きとなりました。ただ、その後はアジア時間の暴落の調整の動きもあり、107円半ばで揉みあう動きとなりました。
NYダウが一時700ドル超下落するなど、引き続き株式市場が不安定な状況であり、本日の長期休場明けの日経平均株価が不安視されていましたが、寄り付きで約359円安、現在では700円安程度の下落になっており、想定よりも下げ幅が限定的になっているとの声もあり、ドル円は107円台後半まで上昇しています。なお、「日銀は22?23日に開く金融政策決定会合で、2019年度以降の物価見通しを引き下げる検討に入った」「日銀は現時点で今の金融緩和を粘り強く続ける構えだが、世界経済や金融市場の不透明感も踏まえ、政策運営を議論する」との報道が伝わったものの、目立った反応は見られませんでした。
今後の見通し
東京市場がオープンし、ようやく市場参加者が戻ってくる営業日ではありますが、本日の東京時間では依然として流動性が低く値が飛びやすい状況に変わりありません。海外時間までは、急激な値飛びへの警戒は必要になりそうです。本日の海外市場では、米・雇用統計が控えています。このところあまりマーケットインパクトを残さない同指標ですが、今回は急激な株価下落に加え、ISM製造業景気指数の低下によりリセッションを招く可能性が指摘されており、市場予想より悪化した数字だと想定以上にリスク回避の動きが強まる可能性がありそうです。
また、本日はパウエルFRB議長がAEA年次総会に出席します。そこで、パウエルFRB議長、イエレン前FRB議長、バーナンキ前FRB議長の対談が予定されており、悪い雇用統計の数字が意識されれば、前回のFOMCにて今年の利上げ見通しを2回としているものの、年1回の利上げ、さらには利上げなしの議論が交わされる可能性があるため、この点には注意が必要でしょうか。逆に強い数字であれば、ドル円暴落前の水準である108円台後半を目指す動きになりそうです。
年明けの課題としては、今回の株価暴落の戻しがどの時点で調整が入るのかという点、米連邦政府機関の閉鎖がどの時点で正常化に戻るのかという点、米中通商協議と日米通商協議への警戒感、米国の景気減速に伴うリセッションへの警戒感、そしてねじれ議会での対立がポイントになりそうです。前日のドル円の動きは明らかにオーバーシュートですが、下値を攻めやすい状況になったことは事実です。本日は、基本的には流動性が回復していないことを考えると、レンジ内での動きが中心になりそうですが、流動性が戻る来週をターゲットに、上下どちらかに動く切っ掛けを与えるという意味では、本日のイベントが重要になりそうです。
クロス円は見極めが難しい、まずはドルストレートから戦略を練る
1.15ドル手前で上値が抑えられたユーロドルですが、1.13ドルから大きく反発しており、1.13-1.15ドルがコアレンジになっています。ドルよりはユーロの方が不安材料が少ないことを考えると、まずは1.15ドルを目指す動きになりそうです。1.1490ドル付近での利食いを目安に、1.1400ドル付近での買い戦略。損切りは1.1350ドル付近下抜けを想定し、利食いの水準までくれば途転売りとします。
海外時間からの流れ
フラッシュクラッシュ翌日のマーケットですが、想定通り日経平均株価が軟調に推移しているものの、あまり為替に影響は与えていません。ただ、日経平均株価が下落していることもあり、本日13時から日銀と財務省、そして金融庁が緊急会合を開くと報道されています。声明などが出てくるようであれば、円安に向かう可能性は十分ありそうです。
今日の予定
本日は独・雇用統計、英・12月サービス業PMI、米・雇用統計などの経済指標が予定されています。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。