前週末については、注目されていた雇用統計の内容が、米・12月非農業部門雇用者数が18.4万人増予想に対して31.2万人増、また、平均賃金も前月比で0.4%増となり、11月の0.2%増から上昇幅が拡大しました。ドル円は、108.00円付近からスタートし、108.60円付近まで上昇する動きとなりました。ただ、米国経済学会年次会合にて予定されていたパウエルFRB議長とイエレン前FRB議長、バーナンキ元FRB議長とのパネルディスカッションにて、米国経済は底堅く推移しているとしながらも、「必要に応じて迅速かつ柔軟に政策を調整する用意がある」「(利上げについて)我々は辛抱強くなれる」との発言をしており、2019年度の利上げ回数に不透明感が残ったことで、その後は108.10円付近までドル売りが強まりました。
ただ、パウエルFRB議長のハト派寄りの発言は株式市場にはプラスに作用し、NYダウは一時830ドル超上昇し、本日から明日にかけて北京で開催される米中次官級通商協議への期待感も高まってきたことから、調整の意味合いも含め、株式市場の回復によるリスクオンの動きにより、ドル円は再び108円台半ばまで上昇しました。ただ、FOMCにて2019年の利上げ回数は2回と示唆されていたものの、パウエルFRB議長が、利上げが1回に留まった2016年に言及することで、データ次第では利上げゼロの可能性を示唆したことがドル反発の重荷になりそうです。
2日前までは米国のリセッションが意識されていましたが、雇用統計の内容を鑑み、リセッションへの懸念は一気に払拭できていると考えられます。こうなってくると、パウエルFRB議長の舵取りが何よりも重要になってきます。市場の政策金利織り込み度は、利上げではなく利下げへと傾いており、6月までは据え置き、12月までには0.3回、2020年6月までには1.0回、12月までには1.26回の利下げを織り込んでいます。ただ、今後のデータ重視との発言もあるため、状況によっては再度大きく方向性が変わる可能性がありそうです。
今後の見通し
本日については、まずは米中次官級通商協議の進展を見極めることになりそうです。トランプ大統領が、米中貿易摩擦について比較的楽観視していることにより、本イベントについてはどちらかというとリスクイベントとして意識されていませんが、内容次第では一気にリスク回避の動きに繋がる可能性もあるため、この点には注目しないといけないでしょう。また、トランプ大統領はメキシコ国境の壁建造を巡る暫定予算案に関して、非常権限の行使を示唆しており、内容によってはリスク回避の動きに繋がる可能性がありそうです。
ただ、ハセット・CEA(米大統領経済諮問委員会)委員長は、米国債の逆イールドについて景気後退を示す指標として信頼できないとの認識を示しました。同氏は米メディアのCNBCに対して「長期債の利回りが短期債の利回りを下回れば、一般的に景気後退の兆候とされている。しかし、長期債利回りが量的緩和の影響をなお受けているため、イールドスプレッドの解釈は現時点では難しい」と発言しています。米国債の逆イールドがテクニカル的にドル売りに繋がっていたこともあり、こちらはドルの反発要因になりそうです。
本日は、NYダウの大幅高を受けて、日経平均株価が大きく上昇し20,000円台を回復しています。株価主導でリスク回避の動きにならないという点においては、直近のマーケットを考えると、市場心理にプラスに働きそうです。ユーロに関しては、年末から続いているマクロン政権に抗議するデモ「黄色いベスト運動」が引き続き行われており、4日に発表された独・仏・ユーロ圏の12月サービス業PMIについては下方修正されています。ただ、これだけのマイナス要因があっても下値が底堅いことを考えると、ユーロドルについてもどちらかというと上方向に目線が向いていると考えられます。
ユーロドルは下値の底堅さを確認したと考えられる
雇用統計時に一時1.1350ドル付近まで下落したものの、影響は一時的なものになりました。1.14ドル台で底堅く推移していることを考えると、1.14ドル後半までの上昇は十分考えられそうです。1.15ドル手前から下落トレンドを構築してきたユーロドルですが、下値の確認もできたと考えられるため、このままロングで様子見です。
海外時間からの流れ
前週末の特徴としては、強い雇用統計の内容であったものの、パウエルFRB議長がハト派寄りの発言を行ったことから、どちらかに方向性を持たせる動きには至りませんでした。ただ、これまでリスク回避の動きを牽引してきた株価がようやく落ち着きを取り戻してきたことを考えると、ドル円はフラッシュクラッシュ前の水準には自ずと戻ると考えられます。海外の株式の動き次第では、109円台半ば付近まで回復する可能性もありそうです。
今日の予定
本日は独・11月小売売上高指数、独・11月製造業受注、ユーロ圏・11月小売売上高、加・12月Ivey購買部協会指数、米・12月ISM非製造業景況指数、米・11月耐久財受注などの経済指標が予定されています。要人発言としては、デギンドス・ECB副総裁、ボスティック・アトランタ連銀総裁の講演が予定されています。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。