前日については、ボスティック・アトランタ連銀総裁が「世界経済の減速に加えて景気への不安も強まっており、今年の利上げ回数は1回にとどまる可能性がある」との見方を示しました。前週末にパウエルFRB議長が米国経済学会年次会合にて、2019年度の利上げについてハト派寄りの発言を行っており、その内容をサポートするような発言内容になったことから、ドル円は再び108円台半ばから後半にかけて上値の重い展開になりました。ただ、本日の日経平均株価も堅調に推移していることから、109円付近までの戻りは十分考えられそうです。
一時前日比とほぼ変わらない水準まで売られたものの、NYダウは99.88ドル高で取引を終了しました。これまで株価不安がマーケットの下押し要因となっていましたが、NYダウが連日プラスで引けたことは、市場心理の安定に繋がるものと考えらえます。なかなか109円台に回復できないドル円ではありますが、108円付近ではそれなりに底堅い推移を見せており、徐々にマーケットは健全性を取り戻したと考えられそうです。
年が明け、そろそろ英国のEU離脱への話題が出てきそうですが、一部ではメイ英首相がデッドラインと決めている3月29日離脱は確定ではなく、英国とEU高官が離脱時期の延期を模索中と報じられています。現状はドルの動きがマーケットを牽引していますが、そろそろポンドの動きにも注視する必要がありそうです。
今後の見通し
本日以降の見通しについては、昨日から本日まで北京で開催されている米中次官級通商協議の内容がマーケットの方向性を決めていきそうです。既に、今月の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)でトランプ大統領と王岐山中国国家副主席の会談予定が発表されたことで、米中通商協議が進展しているのではないかとの思惑が強まっており、比較的プラスの材料になると見られています。背景としては、ロス米商務長官が「中国・米国の双方に受け入れられる合理的な解決策が得られる可能性がある。中国による米国産大豆や液化天然ガスの輸入増、知的財産権や市場へのアクセスといった問題に対する構造改革での合意が解決策に盛り込まれる可能性がある」と発言していることも影響しています。
現状では、米中次官級通商協議についてはプラスの材料となっていますが、逆にマイナスの材料としては政府機関閉鎖が長引いていることが意識されそうです。ハセット米大統領経済諮問委員会(CEA)委員長も、「政府機関閉鎖で経済への悪影響がでる」と指摘しており、ドル買い、リスク選好になった場合でもどこかでストップをかける材料が今の米国にはあります。地合いとしては改善してきているものの、リスク選好一辺倒、ドル独歩高のような動きにはならない公算です。
ここにきて気になるのが、トルコリラの動向です。前日は株高の影響によりリスク資産通貨は上昇しやすい状況でしたが、トルコリラ円については上値の重い地合いとなりました。年末に、トランプ大統領が表明した米軍のシリア撤退が難航しそうなこと、さらにはボルトン米大統領補佐官が「シリアのクルド人勢力をトルコが攻撃しないことが撤退の条件」と発言しており、この点もマーケットの懸念材料となっています。本日にボルトン米大統領補佐官とエルドアントルコ大統領が会談する予定と報道されており、ヘッドライン次第ではトルコリラの方向性が決まってきそうです。
1.14ドル後半での利食いは成功、そして途転売り
1.1400ドルでのユーロドルロング、1.1480ドル台で無事利食いです。また、以前より寄稿させていただきました通り途転売りしており、現在は1.1480ドル台でのショートです。底堅い動きですが、1.1500ドルでは上値の重さが意識されている状況なので、利食いは1.1420ドル台、今後は途転買いを検討しています。途転買いの場合の損切りは、1.1380ドル下抜けです。
海外時間からの流れ
米中次官級通商協議の結果待ちという状況になっており、動き自体はボラタイルではありますが、ドル円は108-109円での動きが中心になっています。このレンジを抜ける材料としては、米中次官級通商協議後の声明でしょうが、小出しではありますが楽観論が広がっていることもあり、プラスの内容であっても109円付近ではドル円の上値が抑えらえるかもしれません。ただ、ネガティブサプライズの場合は107円付近までの下落も十分考えられそうです。
今日の予定
本日は独・11月鉱工業生産、米・11月JOLT労働調査などの経済指標が予定されています。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。