前日については、注目されていたパウエルFRB議長の講演で、「FRBのバランスシートについては緩やかながらも縮小していくことが望ましい」との発言を行い、FRBが利上げを継続することを示唆したとマーケットが判断し、ドル買いに繋がりました。ハト派一辺倒の話になるのではないかと考えられていたため、バランスシートに関する発言は、ポジティブサプライズとして捉えられた模様です。また、米・新規失業保険申請件数が21.6万件と市場予想22.6万件から改善したことを受け、雇用統計同様に堅調な労働市場がドル買いをサポートしたものと考えられます。
ユーロについては、ドラギECB総裁が記者会見で成長リスクの増大や経済指標の軟化などに触れ、リスクのバランスは下方に移行しつつあると発言しました。一時、下向きに傾いているという表現が適切との意見も出ましたが、最終的には「下方に移行」との表現に落ち着き、ユーロ圏の2019年実質GDP成長率が下方修正されるだろうとの思惑と、ECBの利上げ開始時期について、9月から12月に先延ばしされるとの見方がユーロ売りを誘発しました。ユーロドルについては、1.1560ドル台から一時1.1500ドルを割り込む水準まで下落しています。
米中次官級通商協議については、依然として詳細が明らかになっていないものの、トランプ大統領は大きな成果があったと述べています。中国商務省から「米国との貿易協議は広範囲で深く、綿密」との声明は出てきましたが、このまま詳細は出てこない可能性があります。既に、今月の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)でトランプ大統領と王岐山中国国家副主席の会談予定が発表されていることもあり、このまま声明が出てこない方が市場の期待感が膨らみ、リスク選好の動きを後押しするかもしれません。
今後の見通し
本日は、NY時間に米・12月消費者物価指数が予定されています。もともと重要指標ではありましたが、本日については一層重要度が高くなっています。理由としては、利上げとバランスシート縮小の停止は、経済指標次第(data dependent)と公表されているため、同指標が非常に重要になってきます。11月は±0.0%であった同指標は12月は-0.1%予想になっており、インフレ率の低下が示されれば利上げ期待剥落からドル売りなる可能性が高いと考えられます。ただ、逆に市場予想よりも改善した数字が出てきた時は、素直にドル買いの動きになると思われます。
上記指標が本日の最大のイベントになりそうですが、それまでは比較的堅調に推移するものと思われます。背景としては、前日のNYダウが117ドル高で引けており、本日の日経平均株価についても寄り付きから堅調に推移していることでリスク選好地合いになりやすいという点があります。また、テクニカル的に108円の大台を割り込みはしましたが、一時108.50円付近まで反発しているように、108円台でNYクローズを迎えたことは、市場心理としても買い安心感が少なからず出ているものと思われます。
ドル円108-109円のコアレンジに回帰か
一時ドル円は108円割れの水準まで下落しましたが、再度108円台を回復していることを考えると、下値の底堅さは確認できたと考えられます。また、108-109円の水準は従来のコアレンジであるため、上昇基調が強まれば再度109円付近までの反発は考えられそうです。前日の107.90円のロング、108.90円での利食い、損切りは107.40円割れの戦略自体は変更なしです。
海外時間からの流れ
ドル売りイベントとして考えられていたパウエルFRB議長の講演が、バランスシート縮小の方向で考えている旨の内容となり、ドル買いが強まりました。今後は米国の経済指標が一層注目されることになるため、その試金石として本日の米・12月消費者物価指数は注目すべき指標になりそうです。そして、ドル円前日安値107.773円、このラインは目先サポートになりそうなため、例え下落しても、週末要因もありこのラインで下げ止まるようであれば押し目買い戦略が機能するのではないでしょうか。
今日の予定
本日は、トルコ・11月経常収支、英・11月鉱工業生産、米・12月消費者物価指数などの経済指標が予定されています。また、要人発言としては、メルシュ・ECB専務理事の講演がが予定されています。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。