(本記事は、(本記事は、長谷川和廣氏の著書『利益を出すリーダーが必ずやっていること』かんき出版、2018年10月9日刊の中から一部を抜粋・編集しています)

生き抜く組織の3つの条件「売上」「利益」「再投資」の重要性を知っておく

(本記事は、長谷川和廣氏の著書『利益を出すリーダーが必ずやっていること
(画像=imtmphoto/Shutterstock.com)

組織を成長させるためには、いったい何が必要なのか。

この質問に「売上を増やして、利益を出すこと」と答えた人は、残念ながら不正解。もう1つ、重要な要素が抜け落ちています。

売上を増やすのは、利益をつくるため。利益をつくるのは、再投資するため。そして再投資するのは、売上を増やすため。

この3つのサイクルが会社を成長させます。このことは、社長はもちろん、現場のリーダーの人もしっかり認識しておいてください。

必要以上に内部留保が多く、それをいいことだと勘違いしている会社は、間違いなく、成長が止まり始めます。

内部留保は貯金のようなものですから、多ければ多いほど安心できるという気持ちはわかりますが、私の考えでは、万が一の場合に全社員の退職金が賄える額があれば十分。

それ以上は再投資(具体的には、商品開発や設備投資、人材の獲得や研修)して、来期の売上を増やすために使うべきです。

仕事は少数でやるから精鋭になる

「うちのチームにもっと優秀な人をくださいよ」
「優秀な人を少数だけ集めてやってみたい」

こんなリーダーの呟きが聞こえてくることがあります。

2割は容認できますが、8割は間違いです。

「少数精鋭」とは、少数でやるから、精鋭になるのです。

そのためには、リーダーには2つのやるべきことがあります。

1つは、リーダーは修理の達人でなくてはなりません。

頼りにならない部下がきたら、「よーし! 彼を精鋭に変えてみよう。考えることがいかに楽しいか、仕事を通じて成長できることを、真正面から熱意を持って伝えよう」という決意をすると同時に、リーダー自身もそれを楽しみながらやることです。

もう1つは、

「どこを改善したら、お客様に喜んでもらえるか?」
「どこを改善したら、効率が上がるのか?」
「どこを改善したら、利益を確保できるのか?」

ということを部署の課題として、部下たちに絶えず考える習慣をつけさせ、報告させることです。

そして、自分もそばにいて、ときにはファシリテーター(進行促進役)として議論に参加し、一緒に汗を流せば、必ず、精鋭集団に変わっていきます。

もともと入社試験で採用された人。つまり、それなりの評価をされた人たちです。

リーダー1人の力で変えさせようとしたら、かなり大変かもしれません。でも、グループの力を使うと成長が加速します。

学園祭でのイベントを成功させようとして、徹夜で議論していたら、普段ボーッとしているような人が、人が変わったみたいに活躍したことがありませんか?

人間は、変わる可能性が8割はあるのです。

ダメ組織を生き返らせる抜擢人事のすごい力

組織として目に見える問題はないが、どうも社内がピリッとしない。そんなときこそ抜擢人事の出番です。

抜擢人事のメリットは2つあります。

第一に、抜擢は若い社員に夢を与えます。

成果主義人事を採用する例が増えてきたとはいえ、成果主義は業績と直結する賞与だけで、昇進は従来通りの年功序列という会社がまだ多い。

どんなに頑張っても課長まで10年、部長まで20年かかると思うと、向上心のある社員も、心の奥底でブレーキをかけてしまうもの。

しかし、5年で課長、10年で部長に昇進した事例が身近にあれば、無意識のうちにスピードを緩めていた社員も、アクセル全開で飛ばし始めます。

一方、抜擢はキャリアの長い社員のやる気にも火をつけます。

年功序列というアドバンテージが一瞬のうちになくなるのですから、のんびりと構えていられません。

正確にいえば、やる気ではなく、お尻に火がついた状態ですが、結果的には同じこと。経験の浅い社員には負けられないと、これまで以上に頑張ってくれるでしょう。

もう1つのメリットは、この人事で古いやり方が淘汰されることです。

これは本当に不思議なことですが、組織のなかには前任者がやっていたのでそのまま引き継がれたという仕事が数多くあります。

たとえば、昔からの習慣で必要のない定例会議を毎週開いたり、現場のリーダーレベルの決裁で十分な稟議を部長に回したり。

「この仕事って、本当に必要なものなのだろうか」というようなレベルの業務が、みなさんの会社にもあるはずです。

ところが、そのような仕事について最初は疑問に思っていた社員も、昇進するころにはそのやり方にすっかり馴染んで、そのまま前任者のやり方を踏襲してしまう。

結果として、誰も根拠を説明できない仕事の進め方が延々と続いていくのです。

もし、あなたに人事権が認められているなら、思いきって、デキる若手社員を係長などに抜擢してチームの活性化を図ってみてはどうでしょうか。

経営理念は、末端の社員まで浸透させるプロセスを重視する

独立して会社の設立準備中という、40代の知り合いが10枚の色紙を持ってやってきました。

経営理念をいろいろと書いてみたが、どれも大切なことに思えて決めきれない。そこで私に、最適な1枚を選んでくれというのです。

失礼を承知で、私は色紙の中身も見ずに即答しました。

「どれも大切に思えるなら、10枚すべてを経営理念にすればいい。少なくとも人に決めてもらうものではないはずです」

経営理念は、経営者の考えそのものです。

自分の考えが多岐に渡るなら複数の経営理念を掲げてもいいし、逆に1つの単語しか思い浮かばないなら、それをそのまま経営理念にしてもいい。経営理念の形に決まりは何もありません。

さらにいえば、中身もまったくの自由です。社会貢献や人材育成を第一に掲げてもいいし、極端な話、「お金儲けバンザイ」でもいい。

経営理念は企業の旗印であり、それに共感した人が集まってくるのですから、格好をつける必要はありません。

経営理念をつくるとき、むしろ気をつけるべきことは、理念を組織に浸透させていく方法でしょう。どんなに立派な理念も、社員に浸透しなければ絵に描いた餅です。

理念は社員と共有・実践してはじめて価値を持つのです。

ところが、多くの会社は、会社案内に印刷したり、額縁に入れて社長室に飾っているだけ。こんな状態では、何のために理念を掲げているのかがわかりません。

伸びる会社は、経営理念の中身がどうであれ、それを社員に浸透させる仕組みを持っています。

パナソニックが朝礼で「綱領・信条・七精神」を社員に唱和させることは昔から有名ですし、ザ・リッツ・カールトンホテルが、理念の書かれた「クレドカード」を従業員に肌身離さず携帯させていることもよく知られています。

はたして、みなさんの会社は、経営理念のもとに社員間で同じ価値観を共有できているでしょうか。

少なくとも現場のリーダーが、その理念に精通していないというのでは話になりません。

まずはリーダー自身が経営理念を理解したうえで、部下への浸透を図る。それが組織をまとめるリーダーに課せられた役割です。

利益を出すリーダーが必ずやっていること
長谷川和廣(はせがわ・かずひろ)
中央大学経済学部を卒業後、グローバル企業である十條キンバリー、ゼネラルフーズ、ジョンソンなどで、マーケティング、プロダクトマネジメントを担当。その後、ケロッグジャパン、バイエルジャパンなどで要職を歴任。2000年、株式会社ニコン・エシロールの代表取締役に就任。現在は会社力研究所代表として、会社再建などを中心に国内外企業の経営相談やセミナーなどを精力的にこなしている。

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