(本記事は、秋田谷紘平氏の著書『月10万円副業!』ぱる出版、2019年1月7日刊の中から一部を抜粋・編集しています)
軌道に乗ってきて…新たな悩み
副業の規模が大きくなればなるほど、事業の税金は大きくなってきます。
例えば年商が1000万円を超えると、その2年後には消費税を納税しなくてはいけなくなるケースがあります。
状況にもよりますが、副業が認められている会社等で本人が副業している場合などには、本業の稼ぎと副業の稼ぎが合算され、超過累進税率によって税率がさらに高くなることも多く、さらに税負担が重くのしかかってきます。
もう一つは、会社に居続けるかどうか、という問題です。
副業が軌道に乗ってきた状況で、会社での給料が増えるペースと、副業が加速するペースを比較してみると、どうでしょうか。
どちらがより稼げるか、かつ時間を自由に使えるか…副業の方が効率が良い状況になっていることもあるかも知れません。
そのようなときに、副業を本業にする、という選択肢が生まれます。
お勤めの会社の業界の展望は明るいか、会社そのものの業績は順調か、はたまた会社での人間関係はどうか。
会社に勤め続けることに不安がある方だとなおさらです。
このような二つの悩みが生じてきたら、次のステップを考える段階と言えるでしょう。
その時に、鍵となるのが「法人」です。
「法人」を活用する
ステップアップをしていく中で、法人は切り離せない存在と言えるでしょう。
それだけ活用の幅があるのです。
法人、という言葉の意味は「法によって認められた人格」です。
具体例としてもっともわかりやすいものは、会社法によって認められた人格である「株式会社」「合同会社」でしょう。
その他の例を挙げると「○○法人」と名の付くものがそうです。
例えば、私が勤めている「税理士法人」は、税理士法に基づいて設立された法人です。
一般的には、法人設立と言えば「株式会社」か「合同会社」が大半だと思いますので、ここではそれらを指すと思って読み進めていただければOKです。
ちなみに株式会社と合同会社の違いは、大雑把に説明すると次のようになります。
【株式会社】
→名前に馴染みがあって、社長の肩書「代表取締役」の響きがカッコいい
→設立費用が高い(約25万円)
【合同会社】
→名前があまり知られていなくて、社長の肩書が「代表社員」となり、ちょっと…
→設立費用が安い(最低6万円)
ほぼ、これだけの差です。
税金なども違いはなく、どちらの形態も法人となりますので、「法人税」が同じように課されます。
副業の場合には、ほとんどの場合で、社名等を出して営業活動をするわけではないと思われますので、その場合には合同会社で足りるでしょう。
ただし、後ほど説明しますが、株式会社の場合には出資者と役員の関係を切り離せるため、場合によっては必須になることもあり得ます。
まず、法人を設立するメリットとしては、大きくは次の二つが挙げられます。
・節税の選択肢が増える
・名義を切り離せる
それぞれ簡単に説明していきましょう。
(1)節税の選択肢が増える
法人を設立すると、節税の選択肢が増えます。
例えば、別の人格が生まれたことで、より所得の分散がしやすくなる点です。
これは、青色事業専従者給与と近い効果がありますが、法人にも所得を残すという選択肢が出てくるため、状況によってはさらに効果が高くなります。
ちなみに法人に所得(=利益)が生じた場合には、所得税ではなく法人税の課税対象となります。
また、消費税についても、先ほど年商1000万円を超えたら2年後には納税しなくてはいけなくなることがある、と説明しましたが、法人化するタイミング次第では、もう2年先延ばしにできるケースがあります。
消費税の納税額は1年で数十万になるケースが多いので、これが2年先延ばしになるということがいかにメリットになるかということはおわかりかと思います。
(2)名義を切り離せる
これも副業をする上では大きなポイントです。
自分が法人の役員になってしまうと、基本的には副業として認定されてしまうことになります。
ですが、そこを家族の名前にすることで、自分は設立した法人との関係を切り離すことができ、勤め先の会社が副業禁止の場合でも実質副業をすることができる可能性もあります。
奥さんの名義にする例もありますが、これには一つ欠点があります。
それは、奥さんの名義にする=収入が奥さんのものになるということです。
当たり前だろ、と言われそうですが、例えばその後、万が一離婚するようなことがあると、どうなってしまうのでしょうか?
副業で貯めたお金は、ベースとしては奥さんのものと認定されてしまう可能性があるということになるのです。
このことを踏まえ、いや、うちは大丈夫だと思うけど念のため…と思う方は、株式会社を作ることでその対策をすることができます。
具体的には、株主(=権利者)は自分、代表取締役(=運営者)を奥さんにする、とすれば良いのです。
この場合では、奥さんに給料を払った分は基本的には奥さんのものですが、法人に残った利益については、基本的には株主の利益ということになります。
ただし、法人に利益を残した場合、法人税の課税が重くなる可能性もありますので、そのあたりはよく検討する必要があります。
いずれもメリットとなる可能性がある点ですが、法人設立の一番の目的として、将来の独立の基盤とする、という部分も欠かせないでしょう。
会社を退職してそれまで副業だったものを本業として、それ一本でやっていく…
そのような場合には、法人を設立することで覚悟も決まり、次のステージとしてふさわしい場が用意されると言っても良いと思います。
法人の設立は、思いのほか簡単にできます。
必要と感じたら、早い段階で検討しても良いでしょう。