前日については、英議会のEU離脱協定代替案の採決、FOMCに米中通商協議、そして週末の雇用統計などイベントが目白押しになっていることから、動意に欠ける展開になりましたが、週末にウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が、「FRBは量的金融緩和で買い入れた米国債などの保有資産の縮小の終了を議論している」との記事を掲載したことを受け、積極的にドルを買い進める地合いではなくなっています。ドル買い基調が強まるケースがあるとすれば、上記ビックイベント消化後という流れになりそうです。
ドラギECB総裁は、「ここ数カ月、入手したデータは予想より弱い」「地政学的な要因と保護主義の脅威に関する不確実性の持続が心理的な重し」と、ECB理事会後の記者会見とほぼ同じ内容の議会証言を行いました。ECBは必要に応じて国債買い入れを再開する可能性もあると述べたものの、資産買い入れの再開が年内になる公算は小さいとの判断を示しており、材料視はされませんでした。マイナス金利の変更については、やはり夏以降という見解が強くなっていることもあり、ユーロの金利関連については、直近ではマーケットを動かす材料にはならない公算です。
本日の東京時間に発表された12月豪NAB企業景況感指数が14年9月以来の低水準を記録したことを背景に、豪ドル売りが再び活発化しています。豪州の雇用状況は堅調であるものの、ナショナル・オーストラリア銀行(NAB)が資金調達コストの上昇を理由に住宅ローン金利の引き上げを発表したことが、引き続き意識されている模様です。豪中銀は政策金利の動きは上向きとなる可能性の方が高いとの見解を示しているものの、住宅市場の弱さは年内利下げの可能性を織り込む理由との見解を持っており、住宅市場の混乱が今後の豪ドルの命運を握っていると考えていいのではないでしょうか。
今後の見通し
30-31日にワシントンで開催される米中閣僚級協議を前に、米司法省は、イランとの違法な金融取引に関わった罪で中国の華為技術(ファーウェイ)と同社の孟晩舟・副会長を起訴したと発表しました。同協議では貿易問題だけでなく人民元相場や中国経済の構造改革が議題に挙がる見込みであり、米中対立が激化する要因になるかもしれません。もともと、本イベントは楽観論が先立っており、どちらかというとリスク選好をサポートするのではないかとの見方があったため、協議前のこの報道は市場心理にネガティブな印象を与えたかもしれません。
今週は、イベント目白押しですが、先頭を切って英議会のEU離脱協定代替案の採決が行われます。現時点では、日本時間30日の午前4時より開始、採決にはそれほど時間がかからない(15-30分程度)とのことです。注目は、リスポン条約第50条の延長をEUに提案し離脱延期を義務付けるかどうか、そして期限設定や撤回などの具体的な内容を付加したバックストップ案の検討がポイントになりそうです。今回の修正案は15-20ほど提出される見込みであり、二度目の国民投票、ブレグジット交渉権を議会へ移すなどの内容も盛り込まれているとのことですが、現実的には延期の義務付け、そしてバックストップ案改修のどちらかが焦点になるでしょう。ただ、どちらにしても「合意なき離脱」に現実味が帯びるかどうかでポンドの動きは変わってくると思われます。前日の寄稿通り、「合意なき離脱」回避となれば、ポンド円は147円を目指すと考えています。
ポンド円はテクニカル分析通りの動きになっている
前日寄稿させて頂いた水準143.80円でのポンド円のロング、損切りは143.30円下抜け、利食いは144.80円付近、この戦略に変更はありません。143.30円下抜けは、一目均衡表4時間足の転換線下抜けの水準でもあり、重要視されるポイントになりそうです。また、指数平滑移動平均線(EMA)の25本のラインも同水準に位置していることから、143.30円のライン下抜けは、短期的には基調が変わったと考えることができそうです。
海外時間からの流れ
基本的には様子見姿勢が強まりましたが、株価軟調の動きもあり、クロス円などは下落しています。ただ、イベント前のポジション調整とも考えられるので、昨日、本日の動きがマーケットの方向性に影響を与える可能性はないと考えています。翌朝の英議会のEU離脱協定代替案の採決待ちにはなりますが、このまま株価軟調地合いが継続すると、豪ドルについては、77.50円付近まで下値を模索するようだとストップを巻き込む動きとなり、想定以上に下落するかもしれません。
今日の予定
本日は、米・1月CB消費者信頼感指数などの経済指標が予定されています。また、翌午前4時付近に、英議会のEU離脱協定代替案の採決が行われます。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。