本日早朝に行われた英議会のEU離脱協定代替案の採決、および、議員修正案の採決では、ブレィディ議員の修正案である北アイルランド国境に係るバックストップの代替を求める案が317対301で可決、スペルマン議員の修正案である「合意なき離脱の拒否」を盛り込む案が318対310で可決されました。ただ、事前報道ではほぼ可決されるだろうと考えられていた離脱予定日延期を推進するクーパー議員の修正案は298対321で否決されました。ポンドがここまで反発した理由の一つとして、離脱時期が先延ばしされるだろうとの思惑があっただけに、クーパー議員の修正案否決はポンド売りを加速させました。

端的に説明すると、英国議会は「合意なき離脱」は望まないが、アイルランド問題の取り決めをEUと再交渉を望んでいます。ただ、EU側としては延長を検討する考えはあるものの、再交渉の可能性を以前より否定しており、英国の「わがまま」により、再度EU離脱協議は再度行き詰ったと考えられます。離脱期限延長を申請する権限をメイ英首相から議会に移す修正案も否決されましたが、メイ英首相はもともと離脱期限延期には消極的であり、答えは何も持っていない状況ではありますが、延期はしないというちぐはぐな内容だけが承認されたということになります。

上記採決を受け、トゥスクEU大統領が、再交渉することはないものの、交渉期間延長は考慮する旨の声明を出し、フランス政府とアイルランド政府も続けて声明を出しています。EUが「ほぼ100%」応じないと分かっているバックストップ案の交渉には、無駄な時間が多く注ぎこまれる可能性が高く、3/29の期限ぎりぎりまでどうなるかわからなくなる可能性があります。ただ、積極的なポンド買いは、まさかのネガティブサプライズにより、遠のいたと考えた方がよさそうです。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

本日(翌4時)からは、今度はFOMCが公表されます。金利の据え置きについては、コンセンサス通りになりそうですが、今回の注目はパウエルFRB議長の声明でしょう。金利以外にも、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が、「FRBは量的金融緩和で買い入れた米国債などの保有資産の縮小の終了を議論している」との記事を掲載したことを受け、バランスシートに注目が集まっています。当然、記者からの質問にもバランスシートに関する内容が多く含まれることが想定されますが、バランスシートの縮小を早期にゼロにする準備ができている旨の発言だとドル安、株高の動きが想定され、用意ができていない旨の内容であればドル高、株安という動きになると見ています。

米政府機関閉鎖が長期間に及んだため、主要な経済指標の内容が未だ発表されていません。現状況下では、GDP成長率をトラックするには難しく、足元の経済状況の評価の点においてはスキップされるかもしれません。どちらにしても、4時30分からのパウエルFRB議長の記者会見の内容次第でマーケットが大きく反応しそうですが、英国が離脱延期案を否決したことにより、リスク回避姿勢が強まっていることから、下落方向に動いたときはドル売り、円買いが加速する可能性が高そうです。

FOMC以外にも、本日より米中通商協議が開始されます。初日ということで明確な情報は出てこない公算ですが、比較的リスク選好イベントとして捉えられていることもあり、下落リスクの方に注意が必要になります。基本的には米中貿易戦争のような格好にはならないと考えられますが、知的財産権やテクノロジーの問題がクローズアップされるようだと、想定外のドル売りが出てくる可能性は考慮しておいた方がいいかもしれません。

ポンド円はシナリオが崩れた、再びドル円戻り売り戦略に回帰

ポンド円については、143.80円のロング、143.30円で損切りです。テクニカル通りの動きになってはいましたが、英国議会で離脱延期案が否決されるというサプライズもあり、大きくシナリオが狂ってしまったので、一旦ポンド円の戦略は中止です。逆に、今度はドル円の110円レジスタンスがクリアになってきています。現状では109.60-70円が第1のレジスタンス、110円が第2のレジスタンスになっているため、110円上抜けを損切りライン、109.60-70円をポジションメイクのラインとして考えます。

海外時間からの流れ

英国議会の採決がまさかのネガティブサプライズとなり、ポンド円が急落しました。ここからEUが承認するはずのない再交渉を行うのですが、離脱延期、且つ、合意なき離脱前提でポンドが反発していたこともあり、ポンドの上値は重くなってきたと考えられます。その中でFOMCと米中通商協議が開始されるため、上昇方向でなく下落方向へのリスクは十分考えておいた方がよさそうです。

今日の予定

本日は、独・1月消費者物価指数、米・1月ADP民間雇用者数、米・第4四半期GDP(速報値)、 米・FOMC政策金利発表、パウエル・FRB議長定例会見などの経済指標が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。