人生100年時代を迎え、定年後も新たな活躍の場や生きがいを求めて、シニアのキャリアについての関心も高まりつつある。
これまでの豊富な経験を活かして「シニア起業」するという選択肢も広がりつつある。実際にビジネスを始めるにあたってどのようなポイントに注意しなければならないのだろうか。起業を後押しする公的機関のサポートについて解説していこう。
起業時の注意ポイントは事業規模、在庫リスク、準備期間
生きがいや経済的な安定をもたらす可能性を秘めるシニア起業だが、これまでの豊富なビジネス経験があっても当然ながらリスクは存在する。注意しておきたい主なポイントは3つ。
1点目は、レバレッジを効かせないで、事業規模を見極めることである。日本政策金融公庫総合研究所の「シニア起業家の開業」調査によると、シニア起業家の開業は、これまでの仕事や経験、知識、資格を活かし、社会の役に立つ仕事をしたいという動機付けが多い。したがって、収入に対する考え方は、家計を維持できる水準で十分と考える割合は約65%で、できるだけ多くの収入を得たいというのは26.6%にとどまる。起業の目的が、お金儲けよりも生きがいや社会貢献の面を重視するのであれば、レバレッジを効かせて身の丈以上に事業規模を大きくさせるよりは、手の届く範囲で管理できる規模を維持するのが賢明といえるだろう。
2点目は、シニア特有の問題として、健康面のリスクがある。病にかかって事業から身を引かざるを得なくなった場合に備え、在庫を抱えない事業での起業を検討する。そうすれば、撤退する際の手続きも簡素で、在庫処理による損失も避けられる。
3点目は、準備期間である。上記の調査によると、シニア起業家の約3割は、30年以上同じ分野での仕事を経験した上で事業を始める一方、約2割は新しい分野で起業している。特に新しい分野で挑戦をスタートさせる場合には、顧客や販路の確保など、しっかりとした準備が求められるため、相応の期間が必要となる。
ビジネスのノウハウから資金サポートまで活用したい公的サービス
ビジネス経験は豊かでも、起業が初めてのケースでは不安は付き物である。そこで活用したいのが、起業をサポートする公的サービスだ。
東京都中小企業振興公社が提供する「TOKYO創業ステーション」では、創業相談員がマーケティングやビジネスプラン作成のアドバイスを実施してくれる。また、起業塾を開催しており、経営のノウハウを学ぶ機会も提供している。
すでにスキルや経営ノウハウがあり、残る課題は事業資金の確保のみというシニア起業家が活用したいサービスは、日本政策金融公庫のシニア起業家支援資金だ。55歳以上で新たに事業をスタートさせるか、事業開始から7年以内であれば、事業資金として最大7,200万円 (うち運転資金4,800万円) の融資が受けられる。返済期間は、設備資金が20年以内、運転資金が7年以内となっている。
シニアの起業チャンスは大都市だけにとどまらない。人口減少や産業衰退に頭を悩ませる地方の自治体にとっては、シニア起業家を地域活性化の一助として取り込むため、さまざまな助成を充実させている。
兵庫県では、県内で起業するシニア (55歳以上) に対し、事業立ち上げの経費のうち半分 (上限100万円) を補助。また、空き家を活用して事業拠点とする場合には別途上限100万円が加算される支援事業に乗り出している。さらには、起業に対し無利子で最大500万円の貸付も実施している。2017年度には飲食や不動産、教育分野などで36件の助成が認められ、シニア起業家が活躍している。
起業ノウハウや資金助成までシニア起業家を後押しするサポート体制は充実しつつある。これまでの経験や人脈をいかしながら、人生100年時代の新たな活躍の場がますますシニアの間で広まっていきそうだ。(提供:大和ネクスト銀行)
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