注目のFOMCでは、声明文とバランスシート正常化に関する声明がいずれも市場予想よりも弱い内容になったことから、ドル売りが加速し、ドル円は109円のラインを下抜ける動きとなりました。まず、声明文については、「労働市場が引き締まり続け、経済活動は堅調なペースで拡大している」との内容が、前回の「力強い」から「堅調」に下方修正されました。また、最もインパクトのあった内容として、「幾らかのさらなる緩やかな利上げが適切」との文言が削除され、「世界経済および金融動向、インフレ圧力の低下を考慮すると、委員会は適切な政策金利の決定にあたり辛抱強くなれる」との文言が追加されました。これまでの見解とは違い、経済市場の勢いが弱まっているということを指摘したことになります。

また、バランスシートについても、これといった具体案を提示しなかったことを踏まえると、早急に行動に移すものではありませんが、近いうちに行動に移すという流れになりそうです。ただ、記者会見等を通じても具体的な正常化の着地点(バランスシートサイズ)に関する言及を避けており、今後FED高官の発言にはこの点に注目が集中するでしょう。パウエルFRB議長の記者会見では、「利上げの論拠はやや弱まった」とホワイトハウスから見ると満点回答の発言に終始しました。2019年の利上げペースについては、明確に鈍化するとの見方からドルの上値が重くなっています。

FRBの見解を受け、マーケットは利上げ期待後退から、資金がリスク資産に移動するとの見方を強め、NYダウは急騰しました。434ドル高で引けたものの、一時520ドル高を示現するなど株高基調が強まっており、本日の日経平均株価においても、200円超でスタートするなど、世界的に株高の連鎖が起きそうです。こうなると、ドル円は下落するものの、他のクロス円は堅調に推移するという、ドル独歩安の動きになるかどうかを見極める必要がありそうです。その試金石として、明日の米雇用統計は絶好の材料になるでしょう。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

FOMCが予想外に弱い内容になったことのインパクトが大きかったですが、引き続き米中通商協議への関心も高いものになります。中国側が劉鶴中国副首相、米国側がライトハイザー米通商代表部(USTR)代表、クドロー国家経済会議(NEC)委員長、ロス米商務長官、ムニューシン米財務長官で交渉が行われ、その後に、劉鶴中国副首相とトランプ米大統領の会談が予定されています。物別れになってしまうのか、それとも交渉が前進するのか、基本的には正式な記者会見待ちにはなりますが、記者会見より前にトランプ大統領がTweetする可能性が高く、まずは結果待ちということになりそうです。

本日は、ユーロ圏・第4四半期GDPの内容が注目されています。前期よりも悪化する予想であることには違いないのですが、2019年予算案で財政支出の削減を余儀なくされたイタリアについては、前期比-0.1%と予想であり2四半期連続でマイナスとなりリセッションに陥る可能性が警戒されています。イタリアの状況悪化は既知の通りなため、リセッション入りしてもそれほど大きなインパクトはないように思いますが、市場がリセッションという言葉に敏感に反応するようであれば、ユーロはFOMC時に大きく上昇した分を全て吐き出す可可能性がありそうです。

やはりドル円109.60-70円は戻り売りポイントだった

前日寄稿させて頂きました通り、ドル円は109.70円でのショート、利食いについては、さきほど108.90円にて手仕舞です。109.60-70円が戻り売りポイントであると示唆されたのも、あまりにも強固な110円レジスタンスがあったからです。これから、利上げ期待後退のドル売り、逆に利上げ期待後退による株高という動きになるため、ドル円については上値は重いものの、値幅は引き続き小さなものになりそうです。そうなると、短期的にはユーロ、特にユーロドルのショートに妙味がありそうです。ドル売り一辺倒の動きの中でも1.15ドルで上値が抑えられており、テクニカルが機能していると考えられます。1.1540ドル上抜けで損切りとし、1.1500ドル付近でのショート、利食いは1.1410ドルを本日の戦略とします。

海外時間からの流れ

FRBが今後の利上げサイクルの鈍化を示したことから、ドル売り基調が強まっています。ただ、現状は株高に支えられていることにより、ドル円の下値も限定的になっていますが、米中通商協議が物別れになるなど、ネガティブサプライズがあった時は、ドル安、株安という動きになり、ドル円は下げ足を速めるでしょう。その場合は、ドル円は108円台前半が目安となりそうです。ただ、米中通商協議が順調にいくようであれば、ドル売り以上に株高が強まり、ドル円は小幅高109円半ばに回復する動きになりそうです。

今日の予定

本日は、独・雇用統計、ユーロ圏・第4四半期GDP、米・新規失業保険申請件数、米・1月シカゴ購買部協会景気指数などの経済指標が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。