日本をはじめ欧米などの先進国に比べて、新興国を投資対象とした金融商品は相対的に利回りが高い傾向にある。ただし、新興国投資をする上では経済破綻や通貨危機といったカントリーリスクには特に注意する必要があり、リターンが高い分リスクも高くなる。それが原因で新興国への投資を敬遠している方もいるだろう。

しかし歴史から新興国への投資を考えるうえでのリスクを学び、おさえるべき点をおさえることで投資の選択肢も広がるだろう。ここでは過去の通貨危機を3つ取り上げ、注意点を見ていこう。

(1) メキシコ通貨危機 (1994年~1995年)

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(写真=PIXTA)

当時のメキシコは海外からの資金流入を目的に金利が高く設定されていた。加えて米国の製造業が賃金の安い労働力を求めてメキシコに投資を行っていた背景もあり輸出が急成長、高い経済成長と好景気を実現していた。一方、次第に経常収支の赤字が膨らんでいた点や、当時メキシコペソが固定相場制をとっていたことから通貨が過大評価されているという懸念も生じていた。

そうした状況の中、国内で武力による反乱、大統領候補の暗殺などの政治不安によりカントリーリスクが表面化し、米ドルに対してメキシコペソが売られる状況となった。

政府は利上げを実施することで資金流入を図ったほか、メキシコペソ買いによる為替介入を行うが、米国の公定歩合が引き上げられたことでメキシコに投資されていた資金が米国へと流出し、外貨準備高が激減する事態となった。

その後、メキシコペソは変動相場制に移行されたが、売り圧力は止まらず外貨準備高もさらに激減。メキシコ国債のデフォルト (債務不履行) 危機が現実的となったため、IMF (国際通貨基金) ・米国等が金融支援を行ったことでデフォルトは回避された。

(2) アジア通貨危機 (1997年~1998年)

タイの通貨であるバーツの暴落をきっかけに、インドネシアのルピア・韓国のウォンなどの通貨が一斉に暴落し、アジア圏の経済全体に大きな打撃を与えたのが1997年のアジア通貨危機である。当時のタイバーツはドルに対して固定相場制をとっていたが、前述のメキシコ同様、海外からの資金流入によりいわゆる「バブル」の状態であった。

そのような状況の中、バーツがドルに対して本来より過大評価されており、タイ経済の先行きも良くないと判断をした「ヘッジファンド」が大量のバーツの空売りを行い、通貨が急激に下落、変動相場制への移行を余儀なくされた。同じくドルに対して固定相場制をとっていたアジア各国も同様の状況に追い込まれ、タイ・インドネシア・韓国はIMF (国際通貨基金) の支援を受けることとなる。

(3) アルゼンチン通貨危機 (2001年~2002年)

経済収支の赤字拡大と外貨の大量流出等による経済危機・通貨危機・債務危機が2001年にアルゼンチンで起こった。1990年代に入ってから、アルゼンチンは経常収支赤字の補てんのための外貨需要が増え、海外市場での外貨獲得を行うほか、金融市場の開放や固定相場制による為替の安定等もあり、外貨の流入を背景に国内経済は順調に拡大していった。

しかし1998年をピークに外貨の流入高は減少に転じ、2000年には経常収支赤字を補てんしきれなくなってしまった。前述のアジア通貨危機を契機に各国の通貨が切り下げられたことによって、輸出を行う際、アルゼンチンペソを対ドルに換算すると相対的に通貨高になってしまったこともあり、経済不況につながった。外貨不足に陥ったアルゼンチンは2001年12月、デフォルト (公的債務支払の一時停止) を宣言することになる。

通貨危機の共通点とは ? 新興国リスクに対する自身の許容度を把握しておこう

上記で説明してきた通貨危機に共通するキーワードとして、「経常収支の赤字拡大と多額の資金流入」「信用不安・景気低迷」「資本流出による外貨不足」「金融危機・経済危機」が挙げられる。新興国への投資を検討する際には、上記に加えて各国の経常収支のほか外貨準備高の増減についても注目ポイントとして覚えておくとよいだろう。極端な資金流入は「バブル」につながる懸念があり、極端な資金流出は外貨不足による金融危機の引き金にもなりかねないということだ。

一方、資産を分散してポートフォリオを組むことで資産防衛や新興国マーケットの急成長によるメリットを享受できる可能性があるのも事実だ。上記のような新興国投資の際に特に意識すべきリスクを理解し、自身のリスク許容度を把握したえで、資産全体における投資割合の上限と損切りラインを事前に決めておくことが大事だ。そうすることで、相場が大きく変動した際には冷静に対処できるようになるだろう。(提供:大和ネクスト銀行

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