前日の海外市場では、欧州時間に発表されたユーロ圏・第4四半期GDP(季調済)(速報値)の結果が市場の予想通り、前期比+0.2%/前年比+1.2%となったことで、イタリアが2四半期連続のマイナス成長となり、景気後退(リセッション)に陥ったことが判明しました。イタリアは2018年末まで2019年度予算案の財政赤字対GDP比の数字について、EUと折り合いがついていませんでしたが、最終的に2.4%から2.04%へ修正したこともあり、EUはイタリアに特別措置を取らなかった経緯があります。国際通貨基金(IMF)がイタリアのGDPの下方修正を指摘しておりましたが、ダボス会議に出席したコンテ・伊首相が1.5%程度までGDPが伸びる可能性があると発言したこともあり、楽観視されたことで、よりユーロ売りが加速したものと考えられます。
また、欧州経済を支えているドイツのバイトマン連銀総裁が「独経済に下振れリスクが広がっている」「独景気減速は予想よりも長く深刻になる恐れがある」と述べたこともあり、ユーロは軟調推移となっています。また、事前には月末ロンドンフィックスにて、ユーロ買いポンド売りが出るのではないかとの噂がありましたが、蓋を開けて見るとユーロ売りポンド買いとなり、ユーロポンドは0.8710ポンド付近まで急落しました。2018年末はイタリア予算案問題が話題の中心でしたが、ここにきて再度イタリア情勢がユーロ売りを活発化させる可能性がありそうです。
また、注目の米中通商協議については、トランプ米大統領がワシントンで行われた閣僚級の貿易協議について「米中が合意したという意味ではない」としながらも、「大きな進展があった」などと述べ、「中国と最終合意するとすれば、習近平国家主席との合意になる」などと語ったことがリスク回避の巻き戻しの動きを強めたものと考えられます。ドル円は108.50円付近から108.90円付近まで値を戻しており、雇用統計次第では109円台の回復も十分視野に入ったと考えられます。
今後の見通し
本日発表された中国・1月Caixin製造業PMIについては、予想49.6に対して48.3となり、2年11カ月ぶりの水準まで悪化すると、日経平均がマイナス圏に沈むとともに一時108.73円付近まで下押ししましたが、その後は日経平均株価もプラス圏に回復するなど、本日予定されている米雇用統計待ちの姿勢が強まっています。
中国代表団から「米中通商協議は、率直かつ具体的で有意義であり、重要な進展があった」との発言があったように、市場の期待から大きく乖離するような内容にはなっていないものと考えられます。米雇用統計までは様子見姿勢が強まりそうですが、動きがあるとすれば米中通商協議関連のヘッドラインによるリスク選好の動きでしょうか。
本日の雇用統計については、政府機関閉鎖問題や最低賃金の引き上げ等を背景に前月の31.2万人増から大幅に減少すると考えられています。逆に考えると、市場予想よりも悪化した数字であっても政府機関閉鎖問題が背景にあるため、問題が来月に先送りになることが想定されるため、雇用統計イベントについては、ドル円は上昇する方向に向かう可能性が高いと考えています。
ユーロドル、テクニカル的に1.15ドルショートは機能すると思料
前日の戦略通り、ユーロドルは1.15ドルでのショート戦略です。1.15ドルから急落していることもあり、ファンダメンタルズ要素はもちろんありますが、テクニカル的にも機能していると考えられます。利食いは1.1410ドルとし、逆指値を持ち値と同じ1.15ドルに引き下げて雇用統計を待ちたいと思います。
海外時間からの流れ
FRBが今後の利上げサイクルの鈍化を示したことから、ドル売り基調が強まっています。ただ、雇用統計前の買い戻しもあり、明確なドル売りトレンドというものは見えてきていません。ただ、大きくドルを買い戻す動きになるとも考えづらいことから、本日以降、来週のトレンドとしては下降トレンドになるかもしれません。
今日の予定
本日は、英・1月製造業PMI、ユーロ圏・1月消費者物価指数、米・雇用統計、米・12月ミシガン大学消費者信頼感指数、米・1月ISM製造業景況指数 などの経済指標が予定されています。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。