年間120万円までの投資から生まれる売却益と配当金などが非課税となるNISA。口座を開設できるのは1人につき1つだけなので、後悔しないように選びたい。投資初心者にとってなじみ深い金融機関といえば銀行だが、銀行でNISA口座を開設する時には注意しておくべき点がある。
口座開設を希望する銀行の取扱商品に注目
まず確認するべきことは、NISA口座の開設を検討している金融機関で、買いたい商品を取り扱っているかどうかだ。
NISAで非課税となる商品は、上場株式や株式投資信託、公社債投資信託、ETFなど多岐にわたる。しかし、NISA口座を開設した金融機関で取り扱っていないものには投資できない。NISA口座は複数の金融機関で持つことができないため、せっかく口座を開設しても投資したい商品がその銀行になければ口座を開設した意味がなくなってしまう。
NISA扱いで買える金融商品は、多くの銀行において株式投資信託のみとなる。株式の個別銘柄は基本的に売買できないのだ。銀行窓口で株式売買の取次ぎを行うことは法令で認められているが、あくまでも「仲介」であり、当該銀行の口座で保有するわけではない。
例えばみずほ・三菱UFJ・三井住友の3大メガバンクは、いずれも株式投資信託のみ取り扱っている。
銀行はNISAの対象範囲が狭い
NISA口座で株式を売買できないというのは、リスクを取っても利益を得たいと考える人にとってはデメリットだ。値動きの激しい株式はときに莫大な売却益を生む。その際、高い節税メリットを発揮できるのがNISAの利点のひとつだからだ。
例えば、株式が5年間で10倍になることは十分あり得るが、投資信託で同等のパフォーマンスを得られる可能性は低い。税率を20%としたとき、NISA口座で100万円投資した株式がもし1,100万円になったら、200万円の節税効果がある。NISAは株式のように価格変動性の高い商品に投資することでより活きてくる。
銀行における投資信託の取り扱い本数自体も、証券会社に比べて少ない。公社債投信も含めた全銘柄数は、みずほ銀行が約250銘柄、三菱UFJ銀行が約500銘柄、三井住友銀行が約200銘柄。このうち株式投資信託だけがNISAの対象となるので、選択肢の幅はさらに狭まる。
一方、証券会社では取り扱う銘柄数が多い。対面販売を多く行う野村證券は800銘柄、大和証券が500銘柄だ。これらとは驚くほどの差はないが、ネット証券との違いは大きい。楽天証券は約2600銘柄、SBI 証券は約2700銘柄。みずほ銀行や三井住友銀行の10倍以上だ。
証券会社では上場株式と投資信託、場合によっては外国株式もNISA扱いで売買できる。それに対して銀行は株式投資信託に絞っているところがほとんどで、投資信託の取り扱い銘柄自体も少ない。銀行に開設したい特別な理由がなければ、わざわざ選ぶ必要はないだろう。
銀行で投資信託を購入すると販売手数料が高くつきやすい
銀行で投資信託を買うと手数料が高くなりがちだ。銀行の投資信託販売手数料は平均で2.04%。しかしネット証券では手数料のかからない「ノーロード」の商品も数多く取り扱っている(金融庁の「家計の安定的な資産形成に関する有識者会議(第2回)」で発表された資料による)。全般的に、インターネット専業の証券会社は費用が安い。店舗の維持費がかからず、総人件費なども銀行に比べて低く済むからだ。
都市銀行における販売手数料の例を次に挙げる。人気の高いこれらの商品は、ネット専業のSBI証券では全てノーロードファンドとして取り扱われている。
<MHAM株式インデックスファンド225>
A銀行の販売手数料
1億円未満:1.08%(税込)
1億円以上:0.54%(税込)
<One-MHAM日本成長株オープン>
A銀行の販売手数料
1千万円未満:2.70%(税込)
1千万円以上1億円未満:1.62%(税込)
1億円以上:1.08%(税込)
<フィデリティ-フィデリティ・日本成長株・ファンド>
B銀行の販売手数料
1億円未満 3.240%(税込)
<日興-財産3分法ファンド(不動産・債券・株式)毎月分配型>
C銀行対面窓口の販売手数料
2.16%(税込)
繰り返すが、上記の全ては、ある証券会社から買うと販売手数料が無料になる。販売元が違うだけで、場合によっては3%もの差が生まれるのだ。投資金額が100万円なら3万円、窓口を変えるだけで得する。言うまでもなくパフォーマンスに与える影響は大きいだろう。払わなくて済むお金は払わないほうがいいのは当然といえる。
窓口を構え顧客と対面する販売方法は、一部の人にとっては安心感を与えるだろう。そのぶんコストがかかるのはやむを得ない。銀行の手数料が暴利だと批判しているわけではない。ただ、求めるものが販売員との会話ではなく、投資信託を買いたいというだけなのであれば、余計な販売手数料を払う必要はない。
松井証券のように、販売手数料が発生する商品でもポイントを還元することによって実質的に無料となるネット証券もある。
販売手数料の全平均は証券会社の方が高いという調査もある。原因として、銀行における業績評価の方法が変わり、長期投資向けの商品が販売されることが多くなったことが考えられる。ただ、非課税期間が長いつみたてNISAはともかく、本稿で取り上げている一般NISAは、どちらかというと短中期の売買に向いている制度だ。 自分が投資したいタイプの商品が、銀行ならどれくらいの販売手数料がかかるのか、ざっと見てみるのもよいだろう。
口座は一つしか作れないが、変更はできる
NISA口座をどこの金融機関に開設するかという点は重要だ。開設するとその年は使い続けなければならないからだ。しかし、年単位であれば変更は可能だ。上記のように銀行と証券会社に大別するだけでも特徴が見えてくるのではないだろうか。よく比較して決める必要がある。
文・山田悠記(マネー系ブックライター)/MONEY TIMES
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