コミュニケーションの活発化によるイノベーションに期待

社内イベント,松宮洋昌
(画像=THE21オンライン)

社内イベントというと、「昭和の日本企業」を思い浮かべる人もいれば、「最先端のIT企業」を思い浮かべる人もいるだろう。クライアント企業の社内イベントの企画を手がける〔株〕イベント・レンジャーズ代表取締役の松宮洋昌氏によれば、平成不況の中でコストカットの対象とされたケースも多い社内イベントだが、近年、開催する企業が増えてきているという。なんのために、どんなイベントが開催されているのか、話を聞いた。

パーティ・懇親会よりも「運動会」がトレンド

少し前は、社内イベントというと、期初のキックオフイベントや表彰イベント、あるいは、そこから発展して、トップセールスのノウハウなどの事例共有会が行なわれたりするケースが多かったのですが、ここ数年は、社員同士のつながりを強化し、コミュニケーションを活発化させることを目的とした社内イベントが増えています。

その背景の一つは、若手の採用難と離職率の高さです。社内イベントによって若手の離職を防ごうと考える企業が増えているのです。中には、入社前の内定者も参加する社内イベントを開催している企業もあります。

もう一つは、イノベーションが求められるようになっていることです。世の中ではオープンイノベーションが盛んになっていますが、会社の中でも、部署の壁を超えたコミュニケーションが活発になることで、それぞれが持っている知見が組み合わされ、イノベーションが起こることを期待している経営者が多くいます。

具体的な形としては、以前多かったパーティや懇親会よりも、スポーツ系のイベントが多くなっているように感じています。フットサル大会やバスケットボール大会などの他、大縄跳びや大玉転がし、玉入れ、障害物競走、リレー、ドッヂビー(布製のフリスビーを使ったドッジボールのような競技)など、様々な種目の競技を行なう運動会も盛んです。

スポーツ系のイベントの良いところは、まず、チーム対抗戦にできること。部署対抗であったり、部署をまたいでチームを作ったりと、やり方は色々ありますが、チームの中で職場とは違った人間関係が生まれます。例えば、職場では職位の低い若い社員が大活躍して、称賛を集めたりするわけです。

運動会であれば、誰がどの種目に出場するのかを決める話し合いも行なわれます。当社が企画するフットサル大会では、男女が一緒にプレーできるように、「女性がゴールすると3点」というルールにしているのですが、そうすると「ゴール前に女性を配置しよう」などと作戦の話し合いも活発になります。大縄跳びなどでは事前に練習をするケースも多く、そこでも普段の職場とは違うコミュニケーションが生まれます。

また、社員の家族が参加できるのも、スポーツ系のイベントの大きなメリットです。競技に参加しなくても、周りで応援することができますし、お弁当を一緒に食べたりもできます。

ちなみに、社員の家族に会社のファンになってもらうために、家族参加型の社内イベントを開催する企業は増えていて、スポーツの他、社員の家族を招いての夏祭りや、職業体験もできる職場見学会を行なっているところもあります。

最近は、IT企業のSEなどで、外国人社員も増えてきています。スポーツ系のイベントは、外国人社員と共通の話題を作るうえでも役立っています。

もちろん、スポーツ以外にも、様々な社内イベントが行なわれています。一風変わったものでは、当社が企画したものですが、研修旅行の中で、チーム対抗の創作カレーコンテストを行なった企業もあります。カレーはほとんどの人が好きですし、欧風カレーもあればインドカレーも、タイカレーもあり、具材も様々で、バリエーションの幅が広い。そのため、どんなカレーを作るかの話し合いは盛り上がりやすく、コミュニケーションを活発化させるのにとてもいいのです。

社食やオープンスペースなど、社内の場所を使って、ヨガをしたり、スイーツを食べたりするイベントを、定期的に開催している企業もあります。

社員旅行も復活しつつあります。ただ、昔の慰安旅行とは違って、オフサイトミーティングや研修を目的としているケースが多いです。例えば、リノベーションのベンチャー企業が廃校を改装した施設で今後の事業を語り合ったり、サービス業の社員が旅館に泊まってホスピタリティや外国人客への対応を学んだり、といったものです。