2022年に控える生産緑地の放出(2022年問題)によって、不動産市場にさまざまな変化が起こると予測されています。
ここでは、「2022年問題」の詳細と不動産市況への影響を説明するとともに、同問題への準備を2020年に行う理由について解説します。

資産運用に欠かせない不動産の動向

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(写真=ImageFlow/Shutterstock.com)

資産運用を着実に進めていく上で、不動産の動向を注視しておくことは大切です。市況的な変化や市場の推移を見ておくのはもちろんのこと、とくにチェックしておきたいのは、「制度的な変化」についてです。この場合の制度的な変化とは、法律の改正や期限の到達によってほぼ確実に起こるであろうと考えられる、不動産の動向です。

では、なぜ制度的な変化を見ておくべきなのでしょうか。そもそも、市況の変化や市場の推移は完全に予測できるものではありません。むしろ、その時々の状況を注視しておくことで、全体の流れや方向性を把握するものでしょう。一方で制度的な変化は、おおむね予測可能である確実な変化をもたらします。そのため、対策が立てやすいという特徴があるのです。

実は、2022年に大きな動きが……

それでは、この先の制度的な変化にはどのようなものがあるのでしょうか。最も大きな変化として挙げられるのは、2022年問題として懸念されている「生産緑地の問題」です。これまで営農義務が課せられていた土地が解放され、宅地化が進むのではないかというものです。

現代の日本では、少子高齢化を背景とした急速な人口減が進んでいます。そのため、地方や郊外だけでなく、都市部の中でも賃貸需要が減少しているところもあります。そのような状態にありながら、生産緑地が解放されて宅地転用が増えると、不動産の供給過多になり兼ねません。その結果、不動産価格や賃料の下落につながる可能性があるのです。

生産緑地が解放される「2022年問題」とは

ここであらためて「2022年問題」についてまとめておきましょう。ポイントは、改正生産緑地法と生産緑地が解放されることによる影響、そして準備開始の目処として考えられている2020年についてです。

改正生産緑地法とは

日本で「生産緑地法」が交付されたのは1974年のことです。当時は人口増加に伴う住宅不足が深刻で、農地の宅地化を促すために生産緑地法が交付されました。その後、1991年になると、今度は進みすぎた宅地化を抑制する目的で、生産緑地法が改正され翌年施行されました。この改正生産緑地法が適用される期間は30年。つまり、2022年が期限になるということです。

生産緑地が解放されることによって生じる影響

では、改正生産緑地法が期限を迎えるとどうなるのでしょうか。まず、30年間の営農義務が解除され、自治体への買い取りの申し出が可能になります。自治体が財政難を理由に土地を買い取らなかった場合、多くの農業地の転用・売却が進むでしょう。とくに都市部の生産緑地は、農地から宅地へと転用され、その多くはマンションやアパートなどの賃貸住宅になることも予想されます。

2020年前後を目処とした準備が必要となる

その結果、供給過多になり、既存の不動産価格が下落する可能性があります。また、賃貸住宅が増えれば、段階的に賃料水準も下落していくかもしれません。もちろん、2022年にそうした変化が確実に起こるとは言えず、重要なのは、不動産の動向を注視しておくことです。その目処となるのが、東京五輪開催年の2020年というわけです。

五輪は、東京だけでなく、日本全体に大きなインパクトを与えるイベントです。当然、不動産市況への影響も無視できません。そのタイミングであらためて、市況をチェックし、保有している不動産の現状を把握しておく。そのうえで、不動産を含む資産戦略を、中長期スパンで考案し準備するタイミングがまさに、2020年なのです。

所有不動産の処分は慎重に

一方で、生産緑地に付随する「相続税の納税猶予」を考慮した場合、それほど急激な宅地への転用は起こらないとも考えられますが、未来のことは誰にもわかりません。いずれにしても、2022年に実施される「営農義務の解除」を考慮し、2020年をひとつの目安として準備を進めておくのがよいでしょう。(提供:プレミアサロン