東京株式市場では、日経平均株価が一時21,500円という約2ヵ月前の高値水準を回復するなど、比較的堅調な動きが続いています。米国でFRB(米連邦準備制度理事会)が金融政策について、引き締め気味のスタンスを改めようとしていることや、米国と中国の通商協議で妥協が成立する可能性が膨らんでいることなどが背景になっていると考えられます。

もっとも、世界経済はピークアウトから減速に転じる様相を強めており、我が国でも上場企業の業績予想下方修正が目立つようになってきました。このため、投資家の間に「上値追い」の空気はいまだ乏しいようです。米国市場が休場となった日の翌営業日に当たる2/19(火)には、東証1部市場の売買代金が2兆円を割り込む「閑散商状」となるなど、まだまだ「迫力不足」と言わざるを得ないのが現実です。

このような空気の株式市場で、良好な投資パフォーマンスを勝ち取るには「ひと工夫」が必要かもしれません。そこで、今回の「日本株投資戦略」では、高配当と株主優待の両方を享受することが期待できる銘柄を「欲張り銘柄」と称し、スクリーニングにより抽出してみました。インカムゲイン等を着実に確保するのにとどまらず、キャピタルゲインも積極的に狙っていくことを目的にしています。

高配当&株主優待の両方が期待できる「欲張り銘柄」(中小型株)はコチラ!?

日本株投資戦略,投資チャンス到来銘柄
(画像=PIXTA)

それではさっそく、スクリーニングを実施してみたいと思います。以下のすべての条件を満たした銘柄について、予想配当利回り(予想は市場予想)が高い順に並べたものが表1となります。これらの銘柄は、高配当と株主優待の両方を享受することが期待できる「欲張り銘柄」と考えられ、インカムゲイン等を着実に確保するのにとどまらず、キャピタルゲインも積極的に狙っていくことが可能な銘柄であるとみられます。

(1)東証1部上場銘柄であること
(2)時価総額1,000億円未満の銘柄であること
(3)3月決算銘柄であること
(4)市場予想配当利回りが3%超の銘柄であること
(5)市場予想純利益が黒字の見込みであること
(6)最低投資単位(原則100株)以上の保有で株主優待の権利を得ることができる銘柄であること

なお、表1に掲載されたすべての銘柄について、権利付最終日は3/26(火)になっています。2019年3月末付の株主優待および配当の権利を獲得するためには、この日までに買い付けておく必要があります。

貴金属リサイクルを主業務とするアサヒホールディングス(5857)は1株当たり、上期末60円(実施済み)、下期末60円の計120円の年間配当を計画(市場予想も同じ)し、予想配当利回りは5%台半ばに達します。株主優待については、100株以上保有の場合、生活を快適にする製品を中心にWEBサイト上に提示された自社グループ製品の中から選ぶことができます。

ホンダ・日産系自動車ディーラーであるVTホールディングス(7593)は1株当たり、上期末10円(実施済み)、下期末10円の計20円の年間配当を計画(市場予想も同じ)し、予想配当利回りは4%台後半に達します。保有株式100株以上の株主に対し、「株主優待券」1冊が贈呈されます。この1冊には(1)新車・中古車購入時利用優待券(30,000円)1枚、(2)車検時利用優待券(10,000円)1枚、(3)レンタカー利用割引券1枚(一般料金より20%割引他)が含まれており、活用の仕方によっては「お得度」が高い株主優待になっています。

トピー工業(7231)では、保有株式100株以上の株主に対し、交通傷害保険(期間は7/1~12/31)が贈呈されます。死亡・後遺障害は最高100万円まで補償され、他に入院特約は1日3,000円が付加されています。ユニゾホールディングス(3258)は保有株式100株以上の株主に対し、自社グループのホテルを2,000~4,000円割引で宿泊できる優待券が計10枚贈呈されます。また、東光高岳(6617)で「1株以上」を保有する株主は水素生成器等を割引で購入することができます。

日本株投資戦略,欲張り銘柄
(画像=SBI証券)

表1:高配当&株主優待の両方が期待できる「欲張り銘柄」(中小型株)はコチラ!?
コード / 銘柄 / 株価(2/21) / 市場予想一株配当 / 市場予想配当利回り / 最低投資単位で享受できる株主優待内容の概要
<5857> / アサヒホールディングス / 2,189 / 120.0 / 5.48% / 自社製品優待価格販売
<7593> / VTホールディングス / 418 / 20.0 / 4.78% / 優待券1冊
<7231> / トピー工業 / 2,377 / 90.0 / 3.79% / 交通傷害保険他
<6407> / CKD / 1,065 / 40.0 / 3.76% / クオカード500円相当
<3258> / ユニゾホールディングス / 2,147 / 80.0 / 3.73% / ホテルで使える優待券10枚
<6419> / マースグループホールディング / 2,152 / 80.0 / 3.72% / 1,000円相当のクオカード
<4708> / りらいあコミュニケーションズ / 996 / 36.0 / 3.61% / 魚沼産コシヒカリ新米4kg
<6617> / 東光高岳 / 1,415 / 50.0 / 3.53% / カタログ掲載商品割引他
<5976> / 高周波熱錬 / 889 / 30.0 / 3.37% / 1,000円相当のクオカード
<4636> / T&K TOKA / 1,045 / 34.0 / 3.25% / 1,000円相当のクオカード
<9405> / 朝日放送グループホールディン / 778 / 25.0 / 3.21% / 500円相当のクオカード
<4671> / ファルコホールディングス / 1,445 / 46.0 / 3.18% / 1,000円相当のクオカード
<8871> / ゴールドクレスト / 1,616 / 50.0 / 3.09% / 1,000円相当のクオカード
<9619> / イチネンホールディングス / 1,331 / 40.0 / 3.01% / 1,000円相当のクオカード

※会社公表データ、弊社WEBサイト、Bloombergデータ等をもとにSBI証券が作成。「市場予想」は、Bloomberg社が集計した市場コンセンサス。「最低投資単位で享受できる株主優待内容の概要」は、最低投資単位(100株)における株主優待内容の概要を示したもので、株主優待内容のすべてを示すものではありません。保有株式数や保有期間等により、株主優待内容が異なる場合があります。なお、東光高岳は株主優待を贈呈する最低単位を「1株以上」としています。また、予想配当利回りは、1年間に予想される配当をすべて受け取ったと仮定した場合、その一株当たりの金額が株価の何%に当たるかを示したものです。株価や配当政策等により変動しますのでご注意ください。

「高配当&株主優待銘柄」でキャピタルゲインにも期待

高配当と株主優待の両方を享受することが期待できる「欲張り銘柄」は、インカムゲイン等にとどまらず、キャピタルゲインも積極的に狙っていくことが可能な銘柄であるとみられます。

図1は表1に掲載した銘柄のうち、2008年以降の株価データを採取できる銘柄について指数化したものとTOPIX(東証株価指数)を比較したものです。「高配当&株主優待銘柄」は市場平均を大きく上回っていると見受けられます。ただ、この数字はあくまでも平均であり、個別銘柄の格差は大きくなっているので、その点は注意が必要であると考えられます。

また、配当や株主優待を狙う投資家の買いは3月末にかけて盛り上がり、それ以降はいったん収束するという傾向があります。特に「権利落ち」の直後は反動が出やすいので注意が必要です。

ただ、現実には異なる面も少なくありません。図1の中で赤い矢印は各年の3月末のタイミングを示していますが、その直前にかけて株価が上昇し、その後は下がるという傾向が明確に出ている訳ではありません、ただ、3月末よりも少し前のタイミングに、株価の上昇局面が見られることが多いという「緩やかな傾向」はありそうです。

「3月末」の株価はその直前の投資環境の影響を強く受けることになります。その意味で、「高配当&株主優待銘柄」とはいえ、「3月末」の株価について考える時、その局面で株価のトレンドがどちらを向いているのかを冷静に判断する方が重要に思われます。

図1:市場をアウトパフォームしてきた「高配当&株主優待銘柄」

日本株投資戦略,欲張り銘柄
(画像=SBI証券)

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。「高配当&株主優待銘柄」は表1に掲載した銘柄のうち、2008年以降の株価データを採取できる銘柄について指数化したもの。各銘柄の2008年初週終値を1として指数化し、その単純平均を「高配当&株主優待銘柄のパフォーマンス」としました。また、赤い矢印は各年の3月末のタイミングを示唆しています。

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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鈴木英之
SBI証券 投資調査部

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