数年以内に、日本にいながらも英語が必須になる

40代からの英語,山元賢治
(画像=THE21オンライン)

かつて、アップル・ジャパン代表取締役としてスティーブ・ジョブズをはじめ、海外の一流ビジネスパーソンとともに活躍した山元賢治氏。その卓越した英語力をもってしても、ジョブズからのある1通のメールを機に、乗り越えられないと感じた「壁」があったという。その経験も踏まえ、山元氏は、これからは40代のビジネスパーソンも英語を身につけることは必須としながらも、その範囲は限定したほうがいいと話す。我々が身につけるべき、世界基準の英語力とは。

「英語で考える習慣」なくして世界で戦えない

「コミュニカ英語塾」の運営および、経営者を対象としたリーダー育成事業に携わる山元賢治氏。山元氏から見て、日本のビジネスパーソンの現状は大いに憂慮すべきものだという。

「日本のビジネススタイルは、海外にまったく通用していません。国際会議で発言できない、日本人同士で固まる、現地に派遣されてもその場で決裁せずに本社に案件を持ち帰る──一体、何をしに来たのかと問いたくなることばかりです」

その要因の一つは間違いなく「英語力不足」だが、山元氏はさらに根深い問題があると指摘する。それは我々が日々使う「日本語」の性質だ。

「日本語は文章の構造上、ビジネスに合わない言語です。一番の問題は結論までが長いこと。日本語は結論が最後、それまでは長々と経緯や理由を説明するので、最後まで言いたいことが伝わらない。スピードが遅すぎるのです。

一方、英語では結論を最初に、次いで理由や根拠を述べるので、速い意思決定ができます」

主語抜きで語れてしまう曖昧さも問題だという。

「これはリーダーシップの醸成を阻みます。政治家を見れば一目瞭然。彼らは婉曲な表現で巧妙に責任を回避しますね。日本語を使うと『言い訳のテクニック』が悪い意味で発達します。思考までが主体性に欠けてしまうこと、これが大問題です」

自身は、長年現場で英語を使い、英語で考えることで、自ずと思考自体が論理性・速度・責任感を伴うものになったと語る。

「この逆の環境にいるのが現段階の日本人です。英語を話せなくても生活していけるので、語学力も伸びず、思考にも変化が起こりません」

しかし、「日本語だけで生きていけるのは今だけだ」と山元氏は語る。

「私の経営塾に通う中小企業経営者の皆さんはここ数年、採用する人材のほとんどが外国人だそうです。数年以内に、すべてのビジネスパーソンが日本にいながら、海外の働き手と接することになるでしょう。

ちなみに、政府は外国人労働者の在留資格のひとつに日本語の習得を挙げていますが、これは愚の骨頂。日本は海外からますます選ばれなくなり、国際社会から立ち遅れます。日本人こそ、英語を学ぶべきなのです」

真に考えるべきは「HOW」より「WHY」

もちろん、すでに危機感を覚えて勉強を始めている人もいる。それでも日本人の英語上達は遅い。その原因は何だろうか。

「一つは○×教育です。構文や文法の正確性ばかり問う教育を受けたせいで、会話でも『時制が合っているか、語順は正しいか』と気にしてモタモタしてしまう。

しかし、会話の目的は正確さよりも、スムーズなコミュニケーションです。必要なのは会話の流れやリズムや発音に熟達することなのですが、そこが取り違えられています」

こうした目的の取り違えは日本人の悪いクセだと語る。

「ともすれば、手段を目的化してしまうのです。大学合格や就職をゴールとみなす風潮はその典型。資格取得でも、TOEICスコアを上げることばかり考えて、使える英語を磨けていない人は多いですね」

書店に何十冊と並ぶ資格対策のテキストにも同じ問題を感じるという。

「いずれもどうやって筆記試験の点数を伸ばすかを説くものばかり。しかし大事なのは、どう成績を伸ばすかという『HOW』以前に、どんな目的で英語を習得するのかという『WHY』です」

なぜ、英語を学ぶのか。山元氏は、半年に一度、塾生たちにそれをスピーチさせるという。

「『グローバルに活躍したいです』などの定性的表現ではなく『○%増達成』『○年までに』といった定量的表現を使うべし、と言っています。目的が明確なら、達成のための方法も自ずと決まるからです。目指すレベルに応じて、一日何時間かけるか、何を学ぶべきかといったプランを練られるでしょう」