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序章

不動産を賃貸して得た利益を分配金として受け取ることができる金融商品「J-REIT」は、アベノミクスによる期待感を背景に不動産取引が活発化し、7月末には時価総額が8兆6200億円と月末ベースで過去最高を更新しました。ここでは、緩やかながらも回復基調を続けるJ-REITの今後について投資物件別に予想してみたいと思います。


日本の人口動態、2015年以降東京圏でも減少へ

J-REITには、オフィスやレジデンス、商業施設、物流など、いろいろな種類の投資物件がありますが、不動産投資市場における用途別の証券化対象不動産の取得実績を見てみると、オフィス・住宅・商業が7割を占め、最近ではここに物流不動産が加わるようになりました。まずはJ-REITの今後を予測するヒントになる「日本の人口動態」について考えてみたいと思います。

民間シンクタンクの調査によれば、日本の人口は少子高齢化の影響もあり、2010年をピークに減少しはじめ、65歳以上の人口も2040年以降は減少に転じると予測しています。それに伴い東京圏(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)の人口も2015年をピークに減少するとされ、東京都では中央区、江東区、港区の湾岸3区でのみ中長期的に人口が増加すると考えられています。


オフィス市場、東京と地方で回復に差、2017年には都心3区で大量供給も

オフィス市場ついて見てみましょう。現在、日本の賃貸オフィス市場には約9400万平方メートルのストックがあると言われていますが、その6割は東京23区に集中しています。2008年に起こったリーマンショックの影響などで、東京オフィス市場の年次空室率は8~10%台になるなど高水準が続いていましたが、ようやく2013年になって下がり始めました。特に渋谷区や千代田区では5%台まで低下してします。今後は需給がさらに引き締まり、賃料の上昇に期待が寄せられます。

東京23区では2012年に延べ床面積1万平方メートル以上の大規模オフィスビルが32棟も完成したため、2013~2016年は相対的に供給量が少なくなりましたが、2017年以降は都心3区(千代田・中央区・港区)を中心に再び大量供給になる可能性があります。少子化などの影響によるオフィスワーカーの減少が目前に迫る中で、地方のオフィス市場は依然として空室率・賃料とも改善の兆しが見えないことから、需給のバランスを見極める必要がありそうです。


住宅市場、家賃減少も回復傾向、リート組入物件なども好調続く

住宅市場についてはどうでしょうか。全世帯の居住形態割合を見てみると、6割が持家、4割が借家となっており、借家の中でも賃貸マンションに住む割合は6~7割を占めるまで増加していることが分かります。1991~2013年における新規住宅(持家、貸家、給与住宅、分譲住宅)着工戸数は、1996年には160万戸を突破していましたが、それ以降は減少または微増となり、サブプライム問題があった2007年と、リーマンショック翌年の2009年は大幅な減少となりました。2009年以降の着工戸数は毎年増加し、回復傾向にありますが、消費増税による駆け込み需要が見込まれた2013年でさえも、100万戸には届きませんでした。

家賃は民営借家の場合、2000年あたりまで上昇傾向にありましたが、2000年以降はゆるやかながらも減少の一途をたどっています。借家の直近の空室率は、東京全域で上昇傾向にあるほか、札幌や福岡といった地方の主要都市でも15%前後の空室率です。ただ、J-REIT保有物件の含み益が改善しつつあり、資金が借りやすくなるなどプラスの効果が期待できることから、リート組入物件や私募ファンド物件の稼働率は上昇傾向で、今後もこの状態は続くと思われます。