東京株式市場では、多くの企業が年度末となる3月末を迎えようとしています。日経平均株価は昨年3月末終値が21,290円であり、時価はそれを少しだけ上回っています。また、TOPIX(東証株価指数)でみると、時価は昨年度末に比べ7%強ほど低い水準となっています。平均的な株式投資ではなかなか、損益をプラスにもってゆくことが難しい年度であったかもしれません。

そうした中、雑誌やネット等で紹介されることが増えたこともあり、株主優待の権利獲得を目指す投資家が増えたように思われます。株主優待制度を取り入れている上場企業は1,500社余りですが、3月末に権利確定となる企業は821社あり、月別ではもっとも多くなっています。3月は年間で「株主優待」への関心がもっとも高まりやすい季節と言えそうです。

「日本株投資戦略」では過去2回、配当や株主優待に関心をもつ投資家のお役に立つべく、それらに関連した情報を提供してきました。2019年3月末の権利取りを対象とした情報提供としては今回が「最終回」となります。投資家の関心が高い3月優待銘柄を「最低投資金額」と「業績」でふるいにかけ、厳選された銘柄が抽出されるように条件を考えてみました。

株主優待生活のエンジョイ、また株主優待銘柄への投資をうまく活かし、投資パフォーマンスを少しでも高めること等に貢献できれば幸甚であると、「日本株投資戦略」では考えています。

20万円以下で買える「好業績3月優待20銘柄」はコチラ!?

日本株投資戦略,投資チャンス到来銘柄
(画像=PIXTA)

冒頭でもお断りしましたように、2019年3月末の株主優待や配当の権利取りを対象とした情報提供としては今回が「最終回」となります。投資家の関心が高い3月優待銘柄を「最低投資金額」と「業績」でふるいにかけ、厳選された銘柄が抽出されるように条件を考えてみました。

(1)3月末に株主優待の権利が確定する3月決算銘柄であること。
(2)3月優待銘柄で、弊社株主優待検索ページで閲覧回数が多い上位50銘柄に入っていること。
(3)権利付最終日まで最低投資単位(100株)以上を保有していれば株主優待の権利が得られる銘柄であること。
(4)最低投資単位(100株)を買い付けた時の売買金額(諸コスト未考慮)が20万円以下の銘柄であること。
(5)その銘柄の保有期間にかかわらず、株主優待の権利が得られる銘柄であること。
(6)第3四半期累計(2018年4~12月期)営業増益率(前年同期比)が今期予想営業増益率を上回っていること。

上記のすべての条件を満たした銘柄について、(2)での順位に従い上位20銘柄を掲載したものが表1となります。

冒頭でもご説明したように、株主優待制度を取り入れている上場企業は1,500社余りと言われていますが、3月末に権利確定となる企業は821社あり、月別ではもっとも多くなっています。今回はそうした銘柄のうち、投資家の関心の深い銘柄から順に50銘柄を母集団としてみました。

株主優待について調べる時、どのような株主優待が投資家にとってもっとも魅力的か、それを計測する客観的、絶対的な条件などなかなか存在しないと思います。金券であれば、それを現金換算した時の金額が魅力度を左右しますが、利用できる場所に制限が大きく、利便性が低ければ魅力度は低下するでしょう。株主優待の魅力は人により異なることが多いようです。ただ、弊社株主優待検索ページで閲覧回数が多いということは、その銘柄の株主優待について、何らかの魅力があり、投資家の多くが関心を抱いているということだと思います。

一般的には100株を最低投資単位としている上場企業が多く、権利付最終日に100株保有していることで、株主優待の権利を獲得できることが多くなっています。しかし、保有株数が増え、保有期間が長くなると、株主優待の内容がより充実する銘柄も少なくありません。上場企業としてはなるべく多くの投資家に、なるべく多くの株式を、なるべく長く保有してもらいたいというのが「本音」ではないでしょうか。

(4)で条件に入れたように、最低投資単位(100株)を買い付けた時の売買金額(諸コスト未考慮)を20万円以下に設定してみました。売買金額の低い銘柄が投資対象として優位ということはありませんが、相対的に買いやすいことは確かです。また、限られた金額の投資金額でも、多くの銘柄に分散投資し、リスクを分散できるというメリットがあります。

表1の銘柄をすべて100株ずつ投資した場合、必要金額(諸コスト未考慮)は242万円と計算されます。言い方を変えれば、242万円あれば、20銘柄に分散投資し、20銘柄の株主優待サービスを楽しむことができます。また、242万円投資する余力のない場合、20銘柄からお好みの銘柄を選ぶという選択肢もあります。3月決算で株主優待を実施する821社をすべて調べるよりは楽ではないでしょうか。

そもそも、(6)の条件を満たしていることで、会社予想の業績が未達に終わり、株価が下がるようなリスクは低減されています。なお、短期的・中期的な増益の可能性よりも、足元の下方修正懸念の小ささを「好業績」を計るスクリーニング条件としているのは、あくまで、株主優待や配当を論議の中心としているためです。中には四半期決算が減益だったり、通期業績見通しを下方修正した銘柄も含まれています。

雑誌やインターネットでも、株主優待が多くご紹介されていますが、業績面や株価の変動等、リスクに対する説明が十分でない場合も多いようです。株主優待や配当の権利確保を狙った投資であっても、業績面での一定の配慮は必要ではないでしょうか。

20万円以下で買える「好業績3月優待20銘柄」
(画像=SBI証券)

表1:20万円以下で買える「好業績3月優待20銘柄」
コード / 銘柄 / 株価(3/14) / 1株当たり下期予想配当 / 3月末株主優待内容概要(100株保有時)
<3254> / プレサンスコーポレーション / 1,365 / 23.00 / VJAギフトカード2,000円相当
<4275> / カーリットホールディングス / 780 / 12.00 / UCギフトカード500円相当
<8935> / エフ・ジェー・ネクスト / 865 / 16.00 / カタログギフト1,500円相当
<3023> / ラサ商事 / 851 / 16.50 / クオカード500円相当
<5976> / 高周波熱錬 / 861 / 13.00 / クオカード1,000円相当
<1780> / ヤマウラ / 1,007 / 2.50 / 地場商品3,000円相当
<9405> / 朝日放送グループホールディングス / 783 / 15.00 / クオカード500円相当
<8818> / 京阪神ビルディング / 934 / 13.00 / クオカード500円相当
<2802> / 味の素 / 1,711.0 / 16.00 / 自社商品詰合せ1,000円相当
<8897> / タカラレーベン / 347 / 11.00 / おこめ券1㎏分
<7294> / ヨロズ / 1,551 / 23.00 / 商品又はクオカード1,000円相当
<4062> / イビデン / 1,643 / 20.00 / クオカード500円相当
<7215> / ファルテック / 897 / 29.00 / クオカード1,000円相当
<3738> / ティーガイア / 1,937 / 36.50 / クオカード1,000円相当
<9850> / グルメ杵屋 / 1,198 / ※15.00 / 優待食事券1,000円相当
<4732> / ユー・エス・エス / 1,971 / 24.60 / クオカード500円相当
<6407> / CKD / 968 / 8.00 / クオカード500円相当
<3132> / マクニカ・富士エレホールディングス / 1,480 / 25.00 / クオカード1,000円相当
<6333> / 帝国電機製作所 / 1,132 / 12.00 / クオカード1,000円相当
<8697> / 日本取引所グループ / 1,892 / 27.00 / クオカード1,000円相当

※弊社株主優待検索ページや各社WEBサイトをもとにSBI証券が作成。株価および1株当たり下期予想配当金の単位は「円」。
※3月末株主優待内容概要(100株保有時)は、権利付最終日(すべての銘柄が3/26)まで100株保有していた場合の株主優待サービスの概要を示しています。必ずしも、そのすべてを説明しているとは限りません。また、株主優待内容や配当政策、業績予想等は3/14(木)時点の情報をもとに作成されたものであり、その後変更される場合がありますのでご注意ください。
※1株当たり予想下期配当金は基本的に会社予想ベースですが、グルメ杵屋のみ、前期実績ベース(会社予想は未公表)となっております。
※ヤマウラは決算期変更をしており、それを考慮した実質ベースで増減益を計算しています。
※味の素は「営業利益」にかわり、「事業利益」をスクリーニングで用いています。

抽出銘柄の株主優待・配当政策のポイント

ここでは、表1でご紹介したいくつかの銘柄について、業務内容と株主還元策について概要を補足説明したいと思います。

プレサンスコーポレーション(3254)は大阪市を本社とする分譲・投資用マンションの中堅企業です。第3四半期累計営業利益は前年同期比58.9%増と好調で、通期予想営業増益率の32.7%を上回るペースになっています。

1株配当は上期17.5円、下期23.0円(予想)で、年間40.5円の予想(年間予想配当利回りは2.96%)です。さらに100株保有の株主にVJAギフトカード2,000円分が贈呈される計画です。

図1:プレサンスコーポレーション(3254)・週足

図1:プレサンスコーポレーション(3254)・週足
(画像=SBI証券)

エフ・ジェー・ネクスト(8935)も投資用ワンルームマンションをおもに首都圏で展開しています。1株配当は上期16.0円、下期16.0円(予想)で、年間32.0円の予想(年間予想配当利回りは3.69%の計算。さらに100株保有の株主にカタログギフト1,500円分が贈呈される計画です。なお、1,000株以上保有の株主に対しては、株数に応じ自社子会社運営旅館優待利用券(10,000円)が1~6枚贈呈されます。

ヤマウラ(1780)は長野県地盤で民間比率の高い建築会社です。100株以上保有で3,000円相当の地場商品を1つ、同様に300株以上で2つ、1,000株以上で3つ選択できる株主優待サービスを実施しています。味噌汁、乳製品といった食品が主体のようです。

図2:ヤマウラ(1780)・週足

図2:ヤマウラ(1780)・週足
(画像=SBI証券)

タカラレーベン(8897)が株主優待で贈呈予定の「おこめ券」ですが、他の多くの企業でも使われています。例えば発行者側は500円で購入し、もらった人は440円分(表紙には1㎏と記載)のお米に交換することができます。使用期限がないことや、お米以外の商品・サービスに使えることも多く、利便性の高いことが魅力と言えそうです。

同社では、100株以上保有の投資家におこめ券1㎏分、500株以上保有で3㎏分、1,000株以上保有で5㎏分贈呈する計画になっています。

味の素(2802)は我が国の消費者になじみの深い企業です。我が国最大の調味料メーカーで、事業利益の44.6%は「海外食品」のグローバル企業です。

100株以上の保有で1,000円相当の自社グループ商品詰合せセット(調味料等)が贈呈されます。1,000株以上保有の投資家に対しては3,000円相当のセットが贈呈される予定です。また、1,000株以上を3年以上保有する投資家には6,000円相当の自社グループ商品を複数より選択できるサービスになっています。

1/31(木)に今期業績見通しの下方修正を発表しました。それを受けて株価は下落しています。株価への織り込みは進んだと考えられます。

図3:味の素(2802)・週足

図3:味の素(2802)・週足
(画像=SBI証券)

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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鈴木英之
SBI証券 投資調査部

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