年収1億円を超える人たちと付き合っていて感じることは、みんな驚くほど軽装ということだ。S氏はミニマリストを極めており、不動産投資の視察やビジネス出張で海外へ滞在する時も機内持ち込み手荷物1個という驚きの軽装ぷりだ。S氏以外にも手ぶら派の富裕層は多い。なぜお金持ちは手ぶらなのかだろうか。

リスクとムダを嫌うS氏

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(画像=Jacob Lund/Shutterstock.com)

S氏はリスクとムダを徹底的に嫌う。昔は金融投資のトレーダーだったのだが、株式市場や金利の乱高下に嫌気が差して、不動産投資を中心とした資産運用でストレスフリーの生活をしている富裕層の一人だ。S氏いわく「リーマン・ショックで株は半分になるかもしれないが、賃料は変わらないから」ということだった。

そんなS氏のムダ嫌いは徹底している。国内の取引先や友人関係は東京の都心に集中しており、頻繁に会う人たちを点でプロットし、その中心地の住んでいる。その中心地は港区の超一等地の億ションだったのだが「ここなら誰と会う時も移動は最短で済む」という理由で住み続けている。

またS氏はアポイントの際、基本的に自宅に来てもらうようにしているという。これなら移動時間も削減でき、万が一待たされることになっても自宅で待つならストレスはかなり小さくて済むからだ。

海外へ不動産投資の視察へ行くときも、荷物は機内持ち込みの1個だけ。服は現地調達、PCはレンタルを利用。スマホとクレカ、パスポートと充電器だけあれば十分だというから驚かされる。荷物を預けるとロストバゲッジや待たされるリスクを負うからだという。

国内なら手ぶら生活でも困ることはない

S氏に触発され、筆者も最近は手ぶら生活を始めた。出張の際に持っていくのは小さな手提げバッグだけ、なかに入っているのは着替えのみ。現地ホテルに手提げバッグを預けた後はずっと手ぶら移動である。

重要な人物と会う時は服のレンタルサービスを利用すれば、終わった後にホテルから郵送して返送可能だ。都心の交通手段はSuica1枚で事足りるので財布すら必要ない。食事やクレジットカードのみで不自由することがなかった。

手ぶらのメリットは計り知れない。電車やタクシー移動、カフェやビジネス会場など様々な場所で荷物は置き場所に困るうえに、置き忘れや盗難の危険性が常にある。だが、手ぶらであれば置き忘れることや盗難の心配もない。手ぶらスタイルはメリットが大きいのである。

都心のお金持ちが手ぶらができる最大の理由とは?

だが、ここで1つ重要な真実を伝えなければいけない。都心に住んでいるお金持ちが「手ぶらスタイル」というメリットを享受できるのは、彼らの移動距離が短いという事情がある。

S氏は一日のうちにいくつも場所を移動する事があるという。午前中はクライアントに資産運用のアドバイザリーサービスを提供し、午後からセミナー講師を務め、夜はその懇親会に参加するという具合だ。

驚くべきことにS氏はそれらが終わったらいったん自宅に帰っているという。クライアントと別れた後は自宅でランチを取り、セミナー講師としての出番が来るまで仮眠を取り、シャワーを浴びて香水を振りかけるのだ。こうした事ができるのは、都内でも超一等地に住んでおり、ほとんど徒歩移動かタクシーワンメーターの距離内で活動ができるからである。

S氏は朝と夕方とで服が異なる場合がある。それは一度自宅に帰る事ができるからだ。多くの人にとっては、外出先から一旦自宅に帰るということは簡単ではない。お金持ちに手ぶらスタイルが多いというのは、お金持ち所以と言えるかもしれない。(黒坂岳央、高級フルーツギフトショップ「水菓子肥後庵」代表)