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(画像=蒸し豚のピリ辛ガーリックソース(580円))

街の人々に喜んでもらえる店をつくりたい

松村さんに『二兎』の店づくりについて聞くと、次のように答えてくれた。

「この場所にお声がけいただいたとき、この街の人がどのような業態を必要としているのかが全く想像つきませんでした。ビルのオーナーは従来のCOMATSUグループがやってきたパスタやピッツァなども提供するカフェ的なお店をやって欲しそうではあったんですけど、それがフィットするとも思えず。せっかくお店をつくるなら、この辺りの人たちに喜んでほしいというのが一番でしたね。そういった状況で、彼がやってくれることになったわけですが、彼の料理はONOグループ時代からずっと食べてきていて、個人的にもファンだし、彼の料理だったらこの辺りの人たちが喜んでくれるというイメージも湧きました」

料理はすべて山北さんに任せ、COMATSUグループは得意とする店づくりやサービスを担当することになった。

メニューは『MANDARIN MARKET文華市場』でも提供しているものが3~4割。それ以外は、東京や台湾など、2人で視察をして“いいな”と思ったものを改良し、新たなメニューを開発した。

「地元が一緒だからかもしれないけれど、味の好みが似ているんですよね。2人とも根っからの食いしん坊。彼があちこちで食べたものの写真が送られてくるんですけど、福岡に帰ってくるまでにそのメニューを自分なりにアレンジして、帰ってきたときに食べてもらうんですよ」と山北さん。それに対して松村さんは、「毎回、想像以上のものが出てくるんですよ」と嬉しそうに話してくれた。

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(画像=ブルーベリー酢豚(780円))

一方、これまでオーナーシェフとして『MANDARIN MARKET文華市場』の厨房で腕を振るっていた山北さんだが、その店を離れ、新店舗の厨房に常駐することへの不安はなかったのだろうか。

「残ったスタッフもやる気になっています。常連さんから、僕よりも味付けがいいと言われることもあるくらいで、安心しています。しばらくは『二兎』に集中しますが、ゆくゆくは半々くらいで行ったり来たりできるといいと考えています。今回のことはうちのスタッフにとってもいいチャレンジになっています」

また、松村さんと山北さんは約8年ぶりに一緒に仕事をすることになったそうだが、久しぶりに松村さんの仕事ぶりを目の当たりにした山北さんは、学ぶことがすごく多いとも話す。

「普段話しているときとは全く違う一面も見えますし、日々、目から鱗が落ちています。徹底的に無駄を省く姿勢などは見習わなければと思いますし、スタッフ全員が同じ感覚でいることはすごいですよね。先日、うちのスタッフとミーティングがありましたが、『社長自ら研修に行っていると思っておくように』と伝えました。今度、うちのスタッフが全員でここにご飯を食べに来るのですが、多くのことを吸収して欲しいと思いますね」

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(画像=タピオカミルクティー(500円))

今回のコラボはゴールではなく、新たな挑戦の始まり

オープンから約1か月。界隈のビジネスマンや住民のお客様が徐々に増えているという。松村さんは言う。

「この界隈は地下鉄の駅も近く企業やマンションもあって人が存在していることはわかるんですけど、飲食店は極端に少なくてバランスが悪いんです。飲食店が必要とされていないのか、場所がないのか、博多駅の方に行ってしまうのか、オープンするまではわからなかったんですけど、実際はこの界隈の方がたくさん来てくださって安心しています」

とはいえ、今回のコラボはこれがゴールではない。2人は今後の飲食業界を見据え、新たなチャレンジをしているのだ。松村さんは続ける。

「『二兎』では、『MANDARIN MARKET文華市場』よりもメニューや味付けをシンプルに構成しています。今、飲食業界は人材不足と言われていますが、人が辞めて大変な思いをするという負の連鎖を断ち切っていきたいと考えていて。各駅や各エリアに、同じ味とサービスを提供できるフォーマットを作っておけば、どこかの店舗で人が辞めてもフォローすることができます。2人で一緒にすることは、単にお店を増やすということだけを想定したものではないんですよね」

一方、調理師学校に講師として招かれることもある山北さんも、中華料理業界の現状に警笛を鳴らす。

「中華を志望する学生さんはとても少ないんです。このままだと高齢化が進んでしまいますし、若手の育成は中華料理業界全体のテーマでもあるんですよね。しかし、1店舗だったら雇用できる人数も限られています。一方、COMATSUグループはパワーもあるし、多くのスタッフを雇用できます。若者にとっても魅力のある業界であるために、いろいろチャレンジしていきたいと考えています」

多忙を極める2人だが、時間を見つけては銭湯などへ行き、この店のことに限らず、今後のことを語り合っているという。

中学で出会って30年以上経つが、「話が尽きることがない」「一度も揉めたことはない」と話す2人だからこそ、一般的には難しいと言われがちなコラボも順調に進んでいるのだろう。「ネタはまだたくさんある」と話す2人の今後に期待が高まる。

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(画像=間口が広く店内の様子がわかりやすい)

『Chaina Stand 二兎』
住所/福岡市博多区東比恵1-5-5 THE RISE八重洲1F
電話番号/092-477-3315
営業時間/17:00〜24:00
定休日/日曜
席数/40
https://nitohigashihie.owst.jp

(提供:Foodist Media

執筆者:寺脇あゆ子