パフォーマンス向上や戦略実行力につなげるための目標管理方法として、「OKR」が注目を浴びています。GoogleやFacebook、Amazonなど名だたる企業で採用されている、企業経営者に必須の目標管理の最新フレームです。組織における目標共有やコミュニケーション強化に課題を感じている経営者にとって、ヒントとなる考え方をお伝えします。

OKRが生まれた背景

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(写真=PIXTA)

OKRは、組織、チーム、個人の「目標と主要な成果(Objectives and Key Results)」に焦点を当て、全従業員に優先順位を明確に示すことで、目標達成に向かう足並みをそろえるアプローチです。

考案したのはIntelの元CEO、アンディ ・グローブ氏です。当時、組織改革の一環として従業員が優先度に応じて仕事に専念できる方法を模索していたグローブ氏は、「ペースの速いビジネス環境に合わせ、目的をより頻繁に設定する必要がある」と考えていました。また、「難易度の高い目標設定が、従業員のエンゲージメントやパフォーマンスの向上につながる」と確信していました。

そこでグローブ氏は「自分はなにをしたいのか」「目標までの到達度をどのように測るのか」という2つの問いかけに基づき、組織内の明確性、透明性、調整力を向上させる強力な目標設定システムを生みだしたのです。その結果、Intelの方向転換は見事に成功を収めました。

Intel勤務時代にグローブ氏からOKRについて学んだGoogleの取締役であるジョン・ドーア氏が、2000年代後半にOKRをGoogleでも採用したことで、パフォーマンスと成果を向上させる「次世代管理システム」としてさらに注目を浴びるようになりました。実際にMicrosoft、Netflix、Twitter、GE、Yahooなどが導入しています。

OKRの特徴

OKRは組織における最も重要な目標を設定し、その目標に労働力を集中させ、パフォーマンスをモニタリングするためのツールです。したがって、適切な環境作りが成功のカギをにぎっています。

例えばGoogleでは「ストレッチゴール」と呼ばれるハードルの高い目標を設定し、70%の達成率を理想としています。また通常、4半期と1年に1度のサイクルでOKRを設定しています。

目標と指標の設定方法

【Objectives=達成目標】
・3~5個の目標を設定する。達成率が60~70%であれば理想的。100%であればOKRの設定レベルを上げる必要がある。
・「継続・維持」など、現状維持でレベルアップを目指さない表現は使わない。
・「○○(新商品)をXX台売る」など、目標は簡潔、客観的、具体的に。

【Key Results=成果指標】
・ゴールまでの距離感を示す指標や各目標に対して、測定可能な目標を3~4つ設定する。
・行動そのものに重点を置かず、行動の成果を記述する(例:〇4月20日までに企画書を提出する ×企画書を作成する)。

OKR導入における4つのメリット

OKRを組織に取り入れることで、組織と個人においてさまざまなメリットが生まれます。

戦略的アラインメント

管理者と従業員の歩調を合わせ、組織全体が同じ目標に向かって活動するように導きます。また目標サイクルを短くすることで、調整の迅速化、変化への適応性、イノベーション力の向上、リスクの軽減が期待できます。目標設定プロセスも簡潔化されるため、時間や労力の短縮にもつながります。

透明性の向上、モチベーションの最大化

目標を設定し作業に優先順位を付けることで、重要事項が明確化されます。限られた目標に専念することで、集中力やモチベーションが最大化され、予想以上の結果を得られるかもしれません。

コミュニケーション力、従業員エンゲージメントの向上

透明性の向上により、チームは組織の目標と優先順位、そして一人ひとりがどのように貢献できるかを理解しやすくなります。また目標を共有することで、従業員エンゲージメントが高まるでしょう。

自主性、責任感の強化

チームは目標達成手段を自由に選択する権利が与えられているため、目的と行動に対する自主性や責任感が強化されます。OKRを報酬から切り離し、ハードルの高い目標を設定することで、チームは大胆でやりがいのある目標にも挑戦できます。

KPIやMBOとの違い

OKRは「KPI(主要業績評価指標)」や「MBO(目標管理制度)」の延長線上にあるととらえられることもあるようですが、実際には異なる目標達成ツールです。

KPIは組織の目標達成に必要な要素を見極めるために、主要なビジネス目標をどれだけ効果的に達成しているかを数値化したものです。例えば営業部門の受注件数や訪問件数をKPI化することで、個人や組織の目標達成プロセスを確認できます。

KPIが100%の達成率を目指すのに対して、OKRはより難しい目標を設定して70%程度の達成率を見据えます。これにより、組織やチームのさらなるパフォーマンス向上を促すものとなっています。

MBOは経営陣と従業員の両方が合意した目標を明確に定義することで、組織の業績向上を図るための戦略的管理モデルです。マネージャーとチームのコラボレーションを網羅する最初のビジネス管理アプローチとされています。個別・グループごとに設定した目標に対する達成度に基づき、評価を行います。MBOは人材やチームの評価と管理が主な目的であるのに対して、OKRは全社的な目標共有やコミュニケーション強化に主眼を置いています。

目的にあった手法を取り入れて最大限の効果を出す

企業が成長していくためには、個人の目標と組織の目標がリンクし、お互いに成長していけるような関係性を築くことが大切です。OKRは、全社的な目標を共有することで、個人と組織が同じ方向を向くことができるので、エンゲージメントの強化も期待できます。人材の重要性がますます高まる中、企業は従業員のモチベーションアップや定着率の向上を実現させなければなりません。コミュニケーションを促進させるOKRの実践は、それらの課題への解決策となり得ます。

また、めまぐるしく変化するビジネスシーンにおいて、早いサイクルで目標の評価、修正、再調整を行うOKRは、市場への素早い順応を可能にさせ、企業業績の拡大にも効果を発揮するでしょう。従来から取り入れられているKPIやMBOも活用しながら、さまざまな管理手法や考え方を、組織や目的などによって使い分けることが成功へとつながります。それぞれのアプローチ法を把握し、上手に組み合わせることで最大の効果を期待できるでしょう。(提供:企業オーナーonline

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