目的を持った事業法人や個人に対して出資を行うクラウドファンディングは、新しい事業資金の調達方法としてだけでなく、投資としても注目されている。そんなクラウドファンディングを行うサイトはたくさんあるが、どのサイトがおすすめなのだろうか。出資者と調達者、両方の目線でみたサイトの選び方や手数料について解説していこう。
クラウドファンディングとは
クラウドファンディングとは、インターネットのサイトを通じて資金調達を行う仕組みだ。クラウド(crowd)は群衆、ファンディング(funding)は資金調達を意味する。ある目的のために資金調達をしたいと考える調達者は、サイトを通じて目的や目標額、出資者へのリターンを提示する。2000年代後半からアメリカで盛んになり、日本では2011年の東日本大震災を契機に広まった。
出資者はクラウドファンディングサイトに提供されたプロジェクトの情報から、自分が共感するものを選び、資金を提供する。出資後はプロジェクトの報告を受けたり、見返りとしてサービスや商品、現金配当を得たりすることもできる。
クラウドファンディングの種類
クラウドファンディングは、以下の大きく分けて5つに分類できる。
・寄付型クラウドファンディング
・融資型クラウドファンディング(ソーシャルレンディング)
・ファンド投資型クラウドファンディング
・株式投資型クラウドファンディング
・購入型クラウドファンディング
それぞれについて解説していこう。
寄付型クラウドファンディング
寄付型クラウドファンディングとは、社会的な問題の解決のために無償で資金提供を行うクラウドファンディングだ。通常の「寄付」と同じだが、クラウドファンディングサイトで広く募集することで、寄付金を効率的に集めることができる。
寄付型クラウドファンディングの仕組み
寄付型クラウドファンディングは、インターネットのクラウドファンディングサイトを通じて行われる。
まず調達者が、サイトに資金を調達したいプロジェクトの内容や意義などを提示する。出資者はその内容に共感した場合、サイトを通じて資金提供を行う。寄付型クラウドファンディングは一般的な寄付や募金と同様、出資者に対するリターンはない。ただし、出資者限定でプロジェクトの活動報告やお礼の手紙などが届けられる場合もある。
出資者のメリット
寄付型クラウドファンディングにおける出資者のメリットは、社会的に意義のある活動に気軽に参加できることだ。
通常寄付を行うには、活動を行っているNPOなどの団体に出向いたり、団体の口座に金額を振り込んだりするなどの手間がかかる。しかし寄付型クラウドファンディングの仕組みを利用すると、目的や意義などに賛同する活動があれば、すぐに支援することができる。寄付金の提供もクレジットカードなどを使い、ネット上で完結できることが多いため便利だ。
寄付金を確定申告すれば、寄付金控除を受けることもできる。年収が高く、税金をたくさん支払うよりは、自分の共感できる社会的支援活動に金銭援助したいという場合は、寄付型クラウドファンディングにはメリットが多い。
出資者にとっての寄付型クラウドファンディングのデメリット
寄付型クラウドファンディングをする場合、出資者のデメリットはリターンがないことだ。
もともと寄付型クラウドファンディングはリターンを目的としていないため、いくら出資したとしても何かが戻ってくるわけではない。また、サイトによっては寄付金控除を受けられない場合もある。あらかじめ寄付控除を受けられるかどうかは確認しておこう。
調達者にとっての寄付型クラウドファンディングのメリット・デメリット
調達者にとっては、手軽に広く寄付金を募ることができることがメリットだ。
街頭募金などはマンパワーも必要なうえ、地域も限定されてしまう。しかしクラウドファンディングであれば、手軽に広い地域の人から資金を募ることができる。
デメリットは、手数料がかかることだ。なお、運営者に支払う手数料はサイトによって異なる。
寄付型クラウドファンディングサイトの例
・レディーフォーチャリティー
クラウドファンディングを行うレディーフォーが非営利活動を行う団体のために立ち上げた寄付型クラウドファンディングサービス。調達側の手数料12%または17%
・LIFULLソーシャルファンディング
夢のために行動する人とそれを支援する人をつなげるプラットフォーム。国内最大級の団体登録数を誇る。調達側の手数料15%
・A-port寄付型
朝日新聞が主催するクラウドファンディングサイト。サイトだけでなく朝日新聞を中心にメディアで紹介される可能性が高いのが強み。調達側の手数料20%。
融資型クラウドファンディング(ソーシャルレンディング)
事業資金を集めたい企業や個人に対して、資金を貸し付けする形態のクラウドファンディング。融資型なので、出資した金額は金利を上乗せして返済される。
ソーシャルレンディング、貸付型クラウドファンディングと呼ばれることもある。
仕組み
融資型クラウドファンディングの仕組みは、他のクラウドファンディングと同様、まず実現したいプロジェクトの内容や目的をクラウドファンディングのプラットフォームに提示する。そのとき「loTデバイス付き車両販売会社」や「再生可能エネルギー発電事業者」など、事業内容は提示されるが企業名は明かされない。同時に出資された資金に対して、返済する際の利率や予定運用期間も提示される。
企業名が匿名である理由は、貸金業法で個人が継続的に他人に金銭を貸し付けすることが禁じられているからだ。しかし金融庁が2019年3月18日に発表した公式見解により、一定の要件のもとで融資先企業名や所在地の開示ができるようになった。
出資者側は事業内容や利率を確認し、納得できた場合に資金を提供する。その後出資金は金利を上乗せして返済される。毎月返済される場合もあれば、満期に一括返済されるスタイルもあるので、あらかじめ確認しておくこと。
出資者にとってのメリット
融資型クラウドファンディングにおける出資者のメリットは、利回りが高いことだ。超低金利が続く現在の日本において、9.0%や10.0%という利回りはかなり魅力的であろう。
また、最低1万円などの少額から投資できるため、分散投資をしてリスクを減らすこともできる。
株式投資などと違い、元本の価格変動がないのもメリットと言えるだろう。株式投資やFXでは相場の上げ下げがあるため、投資した後も価格変動をチェックし、損失を出さないように運用を続けなくてはならない。しかし融資型クラウドファンディングでは、一度投資すれば基本的に運用期間が終わるまで返済金額を受け取るだけなのでとても手軽だ。
出資者にとってのデメリット
出資者にとってのデメリットは、大きく利益を出すことができないことだろう。株式投資であれば、株価の高騰によって投資した資金を大きく増やすことができる。しかし融資型クラウドファンディングの場合は当初予定された利回りのみで、利益が跳ね上がることはない。
基本的には出資する企業も匿名になっており、貸付先の業態や業況の詳細を確認しにくいのもデメリットだ。金融庁の公式見解によって、出資先の詳細がきちんと提示されるようになったクラウドファンディングサイトも多いが、情報が提示されていない場合もある。その場合は特に注意しておきたい。
またデフォルトが起こることがあり、元本割れの可能性もある。あらかじめクラウドファンディングプラットフォーム側で企業やプロジェクトの選別は行っているものの、クラウドファンディングで資金調達するのは銀行から融資を受けること難しい企業だ。中には事業がうまくいかず、返済遅延や貸し倒れになることもある。
流動性も低く、満期を迎えるまで資金を引き出すことができないのもデメリットだ。
調達者にとってのメリット・デメリット
調達者にとってのメリットは、銀行からの融資が難しいベンチャー企業や中小企業でも、事業資金を調達できることだ。高金利の事業ローンよりも、金利を低く抑えることができる。
デメリットは資金が調達できるまで時間がかかること、資金が必ず全額調達できるわけではないということだろう。
融資型クラウドファンディングサイトの例
・SBIソーシャルレンディング
SBIグループが手掛ける融資型クラウドファンディングサイト。利回りは3.0~10.0%と高利回りだ。登録、販売、分配金送金の手数料は無料。商品ラインナップも豊富で、1万円から投資できる。
・maneo
2008年にサービスを開始した、融資型クラウドファンディングサイト。成立総額は2019年6月21日現在1,632億円を超えており、数万円からの少額投資を手数料0円で提供している。
・OwnersBook
不動産投資に特化した融資型クラウドファンディングサイト。不動産を購入する際の自己資金に当たる部分をクラウドファンディングで募り、対象不動産が生み出す賃料収入や売却益を配当にあてる。不動産のプロが厳選した物件に投資ができ、全案件不動産担保付きであることが魅力だ。
・Crowdcredit
海外に特化したクラウドファンディングサイト。伊藤忠商事などが出資しており、信用度が高いのが魅力。海外製彫刻に投資する、年率12.7%といった高利回り商品も揃っている。
・ネクストシフトファンド
経済的リターンだけでなく、社会問題の解決にもつながる「社会的インパクト投資」に特化したクラウドファンディングサイト。貧困削減、地方創生、介護・福祉など国内外の社会課題解決につながる事業に投資できるため、リターンだけでなく社会貢献も考える投資家に向いている。
>>Nextshift Fund(ネクストシフトファンド)の公式ページはこちら
・Crowd bank 日本で初めて証券会社が運営を行っており「第一種金融商品取引業者」としてファンドを提供している。多くのソーシャルレンディング事業所が第二種であるため、より厳しい管理下で運営を行っていることがわかる。累計応募総額が580億円(2019年7月現在)を突破しており、業界最大手のmaneoに続く第2位の実績がある。
太陽光発電ファンドや不動産ローンファンドなど、さまざまなテーマのファンドに投資できることが特徴である。利回りが7%前後の安定したファンドが多く、1万円から投資が可能、また融資元本回収率が100%のため、ソーシャルレンディング初心者も検討しやすい。
・LENDEX 不動産業界大手の東急リバブル株式会社と業務提携を結んでおり、不動産に特化したファンドを提供している。担保付きのファンドが多く、貸し倒れリスクを下げていることが特徴である。最低投資金額が2万円からで、利回りが10%を超えるファンドも多い。
手数料に関しては、出金手数料、口座開設料、取引手数料が無料である(入金手数料は自己負担)。運用期間が6ヶ月〜12ヶ月と比較的短く、利息が毎月分配となっており、資金の流動性を重視する投資家は活用を検討してみるとよいだろう。
>>ソーシャルレンディング各社を横断比較 ZUU fundingはこちら
不動産投資型クラウドファンディング
不動産担保付きのソーシャルレンディングの案件も多いが、不動産投資型クラウドファンディングは事業所を介して直接的に不動産へ投資を行うことが可能である。
不動産投資というと家賃収入を得ることを思い浮かべる人も多いだろう。だが、不動産投資クラウドファンディングでは、短・中期的な利益を目指すことを目的にしている。
仕組み
不動産投資型クラウドファンディングは、事業所が投資家から資金を集めて、その資金を利用して不動産を取得し運営を行う。ここから発生した利益を投資家に配分するという仕組みである。
ソーシャルレンディングは企業に融資するために投資家から資金を集めるので、不動産投資型クラウドファンディングとは資金を集るための目的が異なることが特徴的だ。
出資者にとってのメリット
一般的な不動産投資では、莫大な投資資金を用意しなければならないが、不動産投資型クラウドファンディングでは1万円から投資ができる事業所が多く、入居者管理や家屋の修繕などの煩雑な手続きもないため、低リスクで気軽に不動産投資を行うことができる。
また不動産投資クラウドファンディングでは、不動産を運営する事業所へ直接的に出資しているので、実際に投資を行っている不動産の情報が公開されている。そのため、ソーシャルレンディングより透明性が高いこともメリットだろう。
出資者にとってのデメリット
投資という性質上、元本の保証がないことはデメリットである。しかし、不動産投資型クラウドファンディングでは「劣後匿名組合出資」と呼ばれる、損失が出た場合に投資家への被害を抑えるためのリスク軽減の措置を取り入れている。
調達者にとってのメリット・デメリット
調達者にとっては、投資家による資金によって不動産を取得することができるため、投資リスクを分散させることができる。また自己資金が少ない場合でも、自ら資金を集める場合とは比較にならないスピードで資金を調達できることがメリットだ。だが、実際に案件を公募ても、予定通りに資金を調達できない場合もあることがデメリットとして挙げられるだろう。
不動産投資型クラウドファンディングサイトの例
・CREAL
「CREAL(クリアル)」はその名の通り、不動産投資の情報を明確(クリア)にして、情報格差をなくすことを目的にしており、株式会社ブリッジ・シー・キャピタルが運営を行っている。
第1号案件であった「第1号浅草ホテルファンド」の募集金額が8.8億円と、他の事業者と比べても桁違いの規模を誇っている。初年度で100億円の投資目標を掲げており、今後も大型な案件が出てくると予想される。
法人口座の開設を可能としており、投資対象の物件を動画で確認できることが特徴として挙げられる。最低投資金額が1万円からと投資初心者におすすめできる事業所である。
・FANTAS funding
中古マンションや再生物件などを主に取り扱っており、株式会社Fantas Technologyが運営を行っている。
利回りが10%を想定される案件もあり、他の事業所よりも高い利益が設定されていることや、空き家を再生させる案件に投資を行えば、社会問題となっている「空き家問題」の解決にも結びつけていることが特徴だ。
・RENOSY
2018年にマザーズに上場した株式会社GA technologiesが運営を行い、首都圏の中古マンションを主に取り扱っている。また手続きをすべてオンライン上で完結することが可能だ。
他の事業所では案件に投資できる権利は先着順だが、RENOSYでは抽選式で投資者を決定している。そのため投資先をじっくりと決めることができる。
最低投資金額が1万円からで投資期間が3ケ月の案件も多く、資金の流動性を重視したい投資家にとってはおすすめの事業所と言えるだろう。
ファンド投資型クラウドファンディング
ファンド投資型クラウドファンディングは、特定の事業に対して投資を行うものだ。融資型との違いは、融資型では投資額を「返済」されるのに対し、ファンド投資型は投資のため「分配金」として配分されることだ。配当金とは別に商品やサービスをリターンとして受けられるものもあり、購入型クラウドファンディングと共通する要素もある。
仕組み
ファンド投資型クラウドファンディングでは、まず調達者が資金調達をしたい事業をクラウドファンディングプラットフォームに提示する。提示される内容は事業目的、内容、募集金額、リターン内容だ。
金利などがあらかじめ決定されている融資型クラウドファンディングに対し、ファンド投資型クラウドファンディングでは目標金利が決まっていない場合も多い。支援した企業の売上が多ければ配当金も高くなるが、予想よりも売上が少なければ配当金も少なくなる。
出資者にとってのメリット
出資者から見たファンド投資型クラウドファンディングのメリットは、投資した額よりも大きなリターンが得られる可能性があることだ。たとえば、融資型クラウドファンディングは当初決められた利回り以上に利益を出すことはできない。しかしファンド投資型では、投資した企業が想定以上の売上を上げれば、得られる分配金も増える。
投資する事業についても詳しく掲載されているため、ベンチャー企業の応援をしたいという気持ちを満たすことができる。分配金以外の物やサービスをリターンとして受け取れるため、楽しみもある。
出資者にとってのデメリット
ファンド投資型クラウドファンディングのデメリットは、元本を下回る可能性があることだ。事業が失敗すれば、分配金が予想を下回るだけでなく、分配自体を受けられなくなる可能性もある。
調達者にとってのメリット・デメリット
調達者にとってのメリットは、銀行では融資を受けられないベンチャー企業や中小企業でも、事業資金調達ができることだ。プロジェクトをアピールすることで、サービス開始前から知名度を上げ、ファンを増やすこともできる。
デメリットとして、必ず事業資金を調達できるとは限らないこと、事業資金が調達できるまでに時間がかかることなどが挙げられる。
ファンド投資型クラウドファンディングサイトの例
・セキュリテ
一口数万円から出資できるインパクト投資プラットフォーム。経済的なリターンだけでなく、貧困や環境などの社会的な課題解決に力を入れている。
・Sony Bank GATE
ソニー銀行が手掛けるファンド投資型クラウドファンディングサイト。ソニー銀行が事前に財務状況や事業計画を審査し、基準を満たす事業だけが募集できる。口座開設、申込、分配金の受け取り手数料が無料であること魅力。
株式投資型クラウドファンディング
事業を行う非上場企業の株式に対して出資者を募るのが、株式投資型クラウドファンディングだ。出資するとその会社の株式を取得でき、業績に応じた配当を受け取ることができる。
仕組み
株式投資型クラウドファンディングの仕組みは、サイトを通じて株式未公開のベンチャー企業や中小企業が発行する株式を購入するというもので、2015年5月の金融商品取引法の改正により解禁された、クラウドファンディングの中でも新しい仕組みだ。
出資者が株式を購入すると、購入資金は手数料を差し引かれて事業者へ渡る。企業側は出資者を株主登録し、業績に応じて配当金を分配する。ただし投資できる金額は、1企業に対して年間50万円までに制限されている。
出資者にとってのメリット
出資者から見た株式投資型クラウドファンディングのメリットは、非上場企業の株式を取得し、ベンチャー企業や中小企業を応援できることだ。ベンチャー企業への投資は個人では難しいが、株式投資型クラウドファンディングであれば手軽にできる。業績が良ければ配当金を得られるのもメリットだ。
株式投資型クラウドファンディング最大の魅力は、株式上場を実現すれば大きな利益が得られることだろう。今後の成長が見込める企業に投資すれば、業績が上がって上場した場合、数万円で購入した株が数十倍になって多額の利益を得られる可能性もある。抽選で外れる可能性があるIPOとは違い、すでに取得している株なので、上場すればかなりの確率で大きな利益を生み出してくれる。
出資者にとってのデメリット
株式投資型クラウドファンディングに出資するデメリットは、事業が失敗して投資した資金がすべて消えてしまう可能性があることだ。
ここで資金調達を行う企業は、ベンチャー企業や中小企業など体力が十分でない場合が多い。そのため事業が立ち行かず倒産してしまえば、投資した資金が戻ることはない。倒産すれば株式の価値がなくなるのは上場企業も同じだが、上場している企業よりも倒産の可能性は高いことを念頭に置かなくてはならない。
流動性の低さもデメリットの一つだ。株式投資型クラウドファンディングで発行された企業の株式は上場していないため、市場で売買できない。また、一度購入すると資金を動かすことができないため、長期的な投資として考えなくてはならない。
調達者にとってのメリット・デメリット
調達者にとっての株式投資型クラウドファンディングのメリットは、設立後間もないベンチャー企業や上場することが難しい中小企業でも、株式を発行して事業資金を調達できることだ。
デメリットは、不特定多数の株主が増えることで、株主名簿の管理や決算情報の公開などの手間が増えることだ。
株式投資型クラウドファンディングサイトの例
・FUNDINNO
2017年4月に日本初の株式投資型クラウドファンディングサイトとしてスタート。個人投資家保護の観点から、投資先企業を詳しく調査しリスクの洗い出しを行うなど、厳正な審査を行うことが特徴だ。公認会計士をはじめ、専門知識を有するスタッフが審査を行うことで、投資リスクの低減を図っている。また、エンジェル税制の税制優遇を受けられる商品もある。
・GoAngel
CVCサポートを手がけてきたDANベンチャーキャピタルが運営する株式投資型クラウドファンディングサイト。2019年1月に会計事務所や中小企業に業務システムを提供するMJSとの資本業務提携を結んでおり、中小企業の資金調達や新たなビジネスの創造サポートに力を入れている。
・エメラダ・エクイティ
プロの投資家が出資しているベンチャー企業に投資できる株式投資型クラウドファンディングサイト。株式を取得するのではなく、将来株式を取得する権利を保有する「エメラダ型新株予約権」という独自の制度がある。
購入型クラウドファンディング
購入型クラウドファンディングは、物やサービスでリターンを受けられるのが特徴だ。プロジェクトでしか手に入らない特別な物やサービスを、先行割引価格で購入できる場合もある。
仕組み
購入型クラウドファンディングでは、まずサイト上にこれから実現したいプロジェクトを提案する。そしてそのプロジェクトに対して資金提供をした場合、実現できる物やサービスをリターンとして提示する。リターンには、映画であれば先行上映会への招待、新商品であれば商品を割引価格で先行購入できる権利などがある。
出資者はプロジェクトの目的やリターンに共感し、応援したいと思えば資金を提供する。プロジェクトが成功した後、物やサービスのリターンを受ければ完了だ。
出資者にとってのメリット
購入型クラウドファンディングにおける出資者のメリットとして、新しいプロジェクトを一から応援できる喜びを感じられること、他では手に入らない特別な商品や経験をリターンとして得られることが挙げられる。
出資者にとってのデメリット
出資者にとってのデメリットは、出資金額に対してリターンが見合っていない場合もあることだ。購入型クラウドファンディングは「共感」や「支援」が核となっており、リターンと出資額のバランスは考慮されない。10万円支援を行っても、リターンを金銭に換算すれば1万円以下という場合もある。経済的に利益が出るほどのリターンは、ほとんど見込めない。
調達者にとってのメリット・デメリット
調達者にとっては、プロジェクトに賛同してもらえれば資金調達ができることがメリットだ。銀行からの融資とは違い、購入型クラウドファンディングは物やサービスを提供すれば、資金を返済する必要はない。デメリットは、プロジェクトに賛同を得られなければ資金調達ができないことだろう。
購入型クラウドファンディングサイトの例
・CAMPFIRE
日本最大級のクラウドファンディングプラットフォーム。2017年度の購入型国内クラウドファンディングにおいて、年間支援プロジェクト成立件数第1位を誇る。調達側の手数料17%
・Kibidango
プロジェクト成功率約8割を誇るクラウドファンディングプラットフォーム。ライター、デザイナー、プロジェクトマネージャー、ファイナンシャルプランナーなどのキャリアを持つスタッフがサポートしてくれる。調達側の手数料10%
・MotionGallery
映画、アート、音楽、写真、ゲーム、書籍などの創作活動に力を入れているクラウドファンディングプラットフォーム。プロジェクトの調達金額の最高記録は約4,000万円。調達側の手数料10%
【目的別】クラウドファンディングサービスの選び方
ここまで、クラウドファンディングサービスはいくつかの種類があることや、そのメリット・デメリットを紹介してきた。では、いざ投資しようというときに、どのサービスを選べばいいのだろうか。
目的別にクラウドファンディングを選ぶ方法を紹介していこう。
投資に対するリターンを重視したい
クラウドファンディングを投資としてとらえ、リターンを重視したい場合は融資型、ファンド投資型、株式投資型を選ぶといいだろう。
なるべく安定した利回りを求めるなら、融資型クラウドファンディングだろう。融資額に対して「返済」という形で金銭を受け取るため、事業の利益がそこまで出ていなくても回収できる。また、資金提供する時点で利回りが決定しているので、利益を計算しやすい。
融資型クラウドファンディングを選ぶなら、SBIソーシャルレンディング株式会社やManeoが手数料も無料で使いやすいだろう。より安定性を求めるなら、不動産を対象としているOwnersBookがある。こちらは投資対象の不動産が担保となるため、万が一事業が破たんしても、担保を売却した売却益である程度までは元本を回収できるだろう。
興味のある事業を応援したい場合や、事業の面白さ、将来性を重視する場合はファンド投資型を選ぶといい。こちらは購入型クラウドファンディングの要素も持ち、分配金に加えて物やサービスのリターンが受けられる。セキュリテやSony Bank GATEがファンドの種類も豊富なので、興味のあるものを見つけやすいだろう。
ハイリスクだが、ハイリターンが狙えるのが株式投資型クラウドファンディングだ。ベンチャー企業が成功し上場すれば、かなりの利益を得られることがある。ただし上場しなければ利益はほとんど得られないため、リスクも大きい。FUNDINNOは投資できる銘柄も多く、選びやすいだろう。
地域・社会貢献系プロジェクトに出資したい
地域や社会に貢献するプロジェクトに出資したい場合は、寄付型やファンド投資型が適している。寄付型クラウドファンディングは、文字通り寄付なので基本的にはリターンがない。提示されているプロジェクトに共感し、応援したいと思えるものに資金を提供しよう。
リターンはないが、サイトによっては寄付金控除の対象となるため節税対策としても有効だ。LIFULLソーシャルファンディングは調達者側の手数料も安く、多くの団体が登録しているため自分に合ったプロジェクトを選べる。
ファンド投資型クラウドファンディングにも、社会貢献や地域貢献ができるファンドがある。セキュリテのサイトにも地震被害による復興や貧困対策のためのファンドがあり、リターンだけでなく理念に共感して投資できるのが魅力だ。
融資型クラウドファンディングサイトでは、Nextshift Fund(ネクストシフトファンド)も社会貢献に力を入れている。マイクロファイナンスという新興国に見られる小口金融に出資することで、新興国の農業振興や貧困解決などの社会貢献ができる。
また、沖縄県初のソーシャルレンディングサービスであるPocket Fundingもある。沖縄の不動産を担保にしたソーシャルレンディング等が可能だ。
アートやクリエイティブ系プロジェクトに出資したい
アートやクリエイティブ系プロジェクトに出資したい場合は、購入型クラウドファンディングがいいだろう。MotionGalleryは特にアート・クリエイティブ系に力を入れており、映画、アート、音楽、写真、ゲーム、書籍などのプロジェクトに出資できる。出資者は作品が受け取れたり、公式サイトに名前が掲載されるなどのメリットがある。また、国内最大のクラウドファンディングサイトであるCAMPFIREにも舞台、書籍、映画などさまざまなクリエイティブ系のプロジェクトがあるのでチェックしておくといいだろう。
大手企業のサイトで出資したい
なるべく信頼のおける大手企業のサイトで出資したい場合は、Sony Bank GATEやSBIソーシャルレンディング、A-portがいいだろう。
Sony Bank GATEはソニー銀行が運営しているクラウドファンディングサイトで、ソニー銀行が事前に財務状況や事業計画を審査し、基準を満たす事業のみが募集できるファンド投資型クラウドファンディングサイトだ。
SBIソーシャルレンディングは、SBIグループの運営する融資型クラウドファンディングサイト。同社はSBI証券などを運営しており、信用度が高い。A-portは朝日新聞が運営しており、社会貢献や地域貢献ができるプロジェクトが充実しているのが強みだ。朝日新聞らしく「ジャーナリズム」というカテゴリーも用意されているのが特徴的だ。
投資から社会貢献までさまざまなプロジェクトが揃うクラウドファンディング
クラウドファンディングは新しい事業資金調達方法としてだけでなく、資産運用の方法としても注目を浴びている。
当初は寄付型や購入型が多く、リターンもそこまで期待できるものではなかったが、融資型やファンド投資型、株式投資型が登場し、資産運用の方法としても期待できるものになってきた。株式投資型やファンド投資型は、個人ではなかなか難しかったエンジェル投資の性格もあり、今後の日本経済の発展を担うベンチャー企業を応援できる面白みも味わえる。
投資として考える場合は、ベンチャー企業の倒産や事業縮小など、思っていたリターンが得られない可能性もあるが、分配金や金利などの利回りは高く、魅力的だ。特に融資型クラウドファンディングは利回りも高く手間もかからないため、本業を持つ投資家にも向いている。種類もたくさんあり、個々のプロジェクトの利回りや運用期間などの条件はさまざまなので、自分に適したものを見つけやすい。
社会貢献としても投資としても可能性の広がるクラウドファンディング。新しい資産運用の方法として、一度検討してみてほしい。(ZUU online 編集部)