(本記事は、午堂登紀雄氏の著書『私が「ダメ上司」だった33の理由』=日本実業出版社、2018年7月1日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

部下から好かれようとした

私が「ダメ上司」だった33の理由
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教訓
部下に好かれる、嫌われるはどうでもいい。
役割は部下を育て、業績を上げること。

●なぜ、部下に好かれる必要はないのか?

こういう話を聞いたことがあります。

部下の仕事のやり方が非効率なので、親切のつもりでアドバイスした。すると「ありがとうございます」という感謝の言葉を期待していたのに、ムッとした表情になり不満げな反応。

「はい、わかりました」と部下は答えるものの、明らかに納得していない様子が態度や口調からうかがえる。

「なんだよ、その態度は」とイラっとしつつ、あとで休憩室の前を通りかかったら、その部下が同僚と談笑しているのが耳に入った。

「ほんとウチの課長は、いちいち上から目線で押し付けてきてムカつくんだよな」

腹立たしさとともに、「いったいどうすればいいんだ」とがっくり落胆。部下を指導する熱意も失せ、部下からどう思われるかを気にして指示や助言を躊躇するように。

部下たちが話しているのがすべて自分への陰口ではないかとやたらと気になり、上司としての自信を失う……。

こういう場面に遭遇した上司もいると思います。部下からどう思われるか気になる。委縮してしまい、言わなければならないことが言えなくなってしまう……この気持ちはよくわかります。

しかし、部下に好かれようとすると、過剰な遠慮や媚びるという態度になりかねません。それでは部下になめられてしまう。

そこでこの際、次のように割り切ってみてはいかがでしょうか。

つまり、「部下から好かれようが嫌われようが、チームとして業績を上げるのが自分の役割である」という点にフォーカスするのです。

「いい上司」とは、たいてい部下に対して甘い人が受ける評価で、仕事上では尊敬される人が受ける評価ではありません。

好かれよう、嫌われないようにしようとすると、指示やアドバイスを躊躇し、接点も少なくなり、よけいに心が離れていく。

逆に、「鬼コーチ」「鬼監督」は、そのときは「あのクソ野郎」と思われても、結果が出てあとから「あれは愛情の裏返しだったんだ」と感謝されます。「あのときがあったから、いまの自分があるんです」という話はよく聞くと思います。

●「仕事の意義」を丁寧に説明する

鬼になる必要はありませんが、「結果を出すため」に必要なことであれば、部下にどう思われようと言うしかありません。それが言えないとしたら「上司失格」です。

ただし、その際に重要なのは、「つべこべ言わずにとにかくやれ」と押さえつけるのではなく、「なぜそうすべきなのか」という理由を懇切丁寧に説明することです。

たとえば、「これこれこういう理由だからやるべきだと自分は思っている。ほかにもっといい案があれば言ってくれ」などといった具合です。

とくに、いまの若者は非効率なことが嫌いで、意味や理由を聞いて納得しないと動きません。上司から命令された本人は、「やらされている」と感じながら、しぶしぶやりますからクオリティも下がります。

逆に納得さえすれば、もともと優秀な人が多いですから、集中して取り組んでくれます。自分の意見が採用されればなおのことです。

●仕事を通じて得られるものを説明する

もうひとつは、「この仕事を通じて、こういうスキルが身につく。それは将来のこういう仕事をやるときに役立つ」などと、その仕事と、それをこなすことによって得られる本人のスキルや能力のアップを関連付けて意義を説明することです。

仕事の意義が理解できれば、本人はやる気になるものですし、部下のほうも上司の説明に反論できなければ、納得せざるをえないでしょう。

そうやって結果を出すこと、部下の能力が上がることにフォーカスすれば、言うべきことを堂々と言えるようになります。

「部下にどう思われようと、これは必要なことである。その理由も説明している。それで部下から嫌われるというなら、ほかにもっといい方法の提案をすべきで、自分はそれを受け入れる用意があることは示している。もっといい案が部下から出てこないなら、それをやるしかない。それで文句を言うのなら部下のほうが怠慢だ」

と上司自身も覚悟が決まります。

そういう発想が土台にあれば、感情的になることもないし、イライラする場面も減るでしょう。

そして「この人の言うことさえ聞いていれば結果につながる」ことがわかれば、そのあとは説明が少なくてもだんだんと理解してくれるようになります。

そうして「好き嫌い」という感情を超え、「尊敬できる」リーダーになっていくのです。

部下の前で弱音を吐いてしまった

教訓
心の中は「真っ暗」でも、
部下の前では「明るい姿勢」を崩すな。

●部下に弱音を吐かない

リーダーが弱音を吐けば、部下は不安になります。

「この人についていって本当に大丈夫だろうか」と感じ、優秀な人材ならなおのこと「この人ではダメだ」と判断し、その組織から離れていってしまうでしょう。

それなのに私は、「いまお金がないからそれは出せない」「この売上ペースが続くと会社がもたない」などと、いま思えば「そりゃ誰もついてこないだろう」というような弱音を吐いていました。

資金繰りのプレッシャーで正常な思考ができなくなっており、「スタッフが、自分の発した言葉をどのように受け止めるか」ということを考えたうえで発言する余裕はまったくありませんでした。

逆境に動揺し、余裕を失ってあたふたしている私の姿は、部下から見れば滑稽で、幻滅していたと思います。

そもそもリーダーたる人物は、どんなときでも部下に対して弱音を吐いてはいけない。むしろ大変なときこそ、ニコニコしてどっしりしていなければならない。内面は不安でいっぱいでも、表向きは「なんとかなる」「未来はきっと開ける」という姿勢を崩してはならない。

そんな精神的な強さがなかったからこそ、私は最後には一人になったのです。

●リーダーが組織の中で最も本気でなければならない

テスラやスペースX社を率いるイーロン・マスク氏は、大真面目で不可能とも思える指示、矛盾した要求をすることで有名です。

技術的にはトレードオフで成り立っているクルマのトレードオフを解消する開発を要求するのはもちろん、新工場を4ヵ月で立ち上げろとか、ロケットの部品のコストを10分の1にしろとか、無茶な要求ばかり。

でも、彼は誰よりも本気なのです。「できる」と信じているから、従業員にも「絶対やれ」と求める。その真剣さが伝わるからこそ、従業員も必死で食らいついていく。そして本当に実現する。

テスラやスペースⅩ社には、イーロン・マスク氏よりも専門知識に長けているか、死に物狂いで課題を達成できる人材しか残らないそうです。しかしそれが企業の活力につながり、イノベーションを起こす原動力になっている。

つまり、リーダーは誰よりも本気で真剣でなければならず、そうでないリーダーのもとでは部下もテキトーに手を抜くということでしょう。

これは私も実感したことです。業績が下がって苦しくなったとき、当時の株主の提案でチラシのポスティングをやろうということになりました。

ほかに低コストで即効性のありそうな策も見当たらなかったため私も納得しましたが、心の奥底では効果に疑問を感じていました。

そのため、「各人1000枚配ろう!」と号令はかけるものの、「もっと行ってこい!」などとおしりを叩くほどの熱心さは持てませんでした。

すると、初日は張り切って出かけたスタッフたちも、次の日からはパラパラとしか出かけなくなり、やがてチラシの在庫だけが残ってしまったのです。

チラシのポスティングというほんの小さな仕事であっても、リーダーの本気度を部下は敏感に感じ取り、それが行動に現れるということです。

私が「ダメ上司」だった33の理由
午堂登紀雄(ごどう・ときお)
1971年岡山県生まれ。中央大学経済学部卒。米国公認会計士。大学卒業後、東京都内の会計事務所にて企業の税務・会計支援業務に従事。大手流通企業のマーケティング部門を経て、世界的な戦略系経営コンサルティングファームであるアーサー・D・リトルで経営コンサルタントとして活躍。2006年、株式会社プレミアム・インベストメント&パートナーズを設立。最盛期は30人ほどの従業員を抱えていたものの、リーマンショックの影響で資金繰りが悪化し、あえなく空中分解。現在は個人で不動産投資コンサルティングを手がける一方、投資家や著述家としても活躍。

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