不動産投資のリスクを、実際に現場で起きている問題から学ぶ!

テナント,苦情
(画像=PIXTA)

不動産投資のトラブルは、ミクロで見るとさまざまな事情や状況で多岐にわたりますが、法的な結論はシンプルで、いくつかのポイントを抑えておけば、トラブル回避は充分に可能です。そこで、私たち弁護士が実際に相談を受けた案件から、よくあるトラブルをご紹介。なぜ問題が生じたのか、そしてどのように解決したのかをわかりやすく解説します。

新しいテナントが入ったら近隣から苦情が!

テナント,苦情
(画像=ヴェリタス・インベストメント)

東京都在住 飯田さん(55歳、男性)からのご相談

古い雑居ビルを所有し賃貸に出しています。このビルは、駅から近いのですがビルのすぐ裏が住宅街になっています。最近、ビルの1階に新しいテナント(居酒屋)が入りました。

ところが、この新しいテナントが営業を始めると、近隣の住民から深夜に酔った客が大声を出しているという苦情が入りました。私は深夜営業をしていることは知らなかったので、確認をしたところ、始発の時間帯まで営業をしていることがわかりました。

そこでテナントに苦情を伝えると、深夜が稼ぎ時だし、酔った客が出す声までどうにかしろと言われても困ると、まともに取り合おうとしません。契約書を確認すると、深夜営業を禁止する記載がありません。 でも、ご近所さんとの関係上、どうにかして深夜営業をやめさせたいのですが、法的に可能でしょうか?

よくあるトラブル(8)「近隣住民からの苦情」

これで解決!

契約書に深夜営業を禁止する文言がなければ、法律や条例に反しないかぎり、深夜営業をやめさせるのは困難です。仲介業者に任せっきりになってしまっていたのかもしれませんが、契約書はトラブルになった際にとても重要ですので、深夜営業の禁止など重要事項については、明記されているかを契約前にしっかりと確認する必要があります。ご相談のケースだと、前のテナントが深夜営業をしていなかったのかもしれませんが、すぐ裏が住宅街ということもあり、騒音などの問題は予想をして、敏感になっておくべきでした。

ただ、物件のオーナーとしては、ご近所付き合いは重要な場合が多いと思いますので、テナントが深夜営業をやめることを受け入れなくても、現状の契約書を前提に対応をしなければなりません。その点で、契約書に近隣の迷惑になる行為をしてはならないといった内容の条文が入っていることも多くあります。しかしこの条文は、一般的、抽象的な内容にとどまり、近隣の迷惑といっても、どの行為がそれに該当するのかの判断はそう簡単ではありません。たとえば、ご相談の件については、騒音がどの程度か、騒音測定器を使って測定をしたりするのですが、うまく測定できるとは限りませんし、仮に大きな数値が測定できても、それ1つで契約を解除することはできませんので、その数値を持ってテナントと根気よく協議をして、現状を改善する努力をせざるを得ません。

また、騒音対策で言えば物理的に騒音が少しでも漏れないように、ドアの開閉状況を確認し改善をテナントに提案したり、壁やガラスを防音性能の高いものに交換したりすることも効果があるかもしれません。

いずれにしても、近隣の苦情をよく聞きながら、その苦情に対応していることも示しつつ、テナントとも協議を続けることが解決への近道です。もっとも、そもそも契約書に禁止事項がしっかりと書いてあれば、このような苦情を受けることもなかったでしょう。そうは言っても、全て自分でチェックするのは困難ですから、信頼できる仲介業者、管理業者を選び、必要に応じて弁護士などの専門家に相談できる体制を整えることが重要だと思います。(提供:ヴェリタス・インベストメント

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弁護士 種田和敏(たねだ かずとし) 弁護士(第二東京弁護士会)。池袋の城北法律事務所に所属。1982年に滋賀県大津市に生まれ、神奈川県藤沢市で育つ。2005年に東京大学法学部を卒業後、東京都港区役所に5年間勤務、成蹊大学法科大学院(夜間コース)を修了、2011年に弁護士登録。借地借家の問題を中心に不動産関係の法律問題に取り組む。著書に『だけじゃない憲法』(猿江商會)。