2019年2月期に最終損益で60億円を赤字計上した大手牛丼チェーン「吉野家」の運営会社が、黒字転換を果たした。好調の理由は「小盛」「超特盛」の導入とされ、サイズの多様化と吉野家の復活で、牛丼チェーン競争が再び過熱しそうだ。
2020年度2月期の第一四半期、営業利益は10.4億円に
吉野家を運営する吉野家ホールディングスは7月、2020年度2月期の第一四半期(2019年3〜5月)の営業利益が10億4,400万円に上ったことを発表した。前年同期は1億7,800万円の赤字を計上、その後も前年度は赤字が続いていたが、ようやく黒字転換した。
吉野家ホールディングスには吉野家のほか、うどん店「はなまる」やステーキ店「アークミール」などの業態があるが、主力事業である吉野家のセグメント利益が前年同期比182.7%の増益となる14億4,500万円に達したことに注目したい。
はなまるのセグメント利益は前年同期比8.8%増に留まり、アークミールは1億4,700万円のセグメント損失を計上している。現在は、吉野家事業が吉野家ホールディングスを牽引していると言えるだろう。
吉野家復活の起爆剤となった「小盛」「超特盛」の導入
吉野家復活の起爆剤となったのは、28年ぶりに導入した牛丼の新サイズと考えられている。主に男性をターゲットにした「超特盛」、主に女性をターゲットにした「小盛」を新たに追加、特に超特盛は導入後1ヵ月で100万食の販売を記録する好調ぶりをみせた。小盛は、女性客だけでなくシニア層の取り込みにも成功し、顧客層の拡大に貢献した。
さらに、5月にはRIZAPとコラボ開発したご飯抜きの牛丼メニュー「ライザップ牛サラダ」を発売し、健康志向の強い顧客の取り込みを強化した。
吉野家は宅配需要を開拓するために、宅配サービス店舗も拡大している。吉野家の店舗自体もこの期間に6箇所(出店:14店舗/閉鎖:8店舗)増え1,216店舗となっており、新サイズの導入やコラボメニューで第二四半期の利益がどこまで伸びるか注目したい。
ライバル「すき家」「松屋」の業績は?
吉野家のライバル、「すき家」と「松屋」の業績はどうだろうか。すき家を運営するゼンショーホールディングス(HD)が5月に発表した2019年3月期の連結決算では、牛丼カテゴリーの既存店売上高が前年比103.4%と好調だったことが明らかになった。
すき家は「お好み牛玉丼」や「白髪ねぎ牛丼」などの新メニューを導入しており、商品力の強化が売上増に結びついたと見られている。また同社は「すき家de健康」をテーマとして掲げており、ミニサイズやご飯の代わりに豆腐を使用したダイエットメニューを導入するなど、吉野家と戦略が重なる部分がある。
松屋などを展開する松屋フーズホールディングス(HD)の2019年3月期の連結決算によれば、同社の牛めし定食事業の販売実績は前年同期比102.6%。同社は1ヵ月で新メニューの追加を2回程度行っており、こうした取り組みが売上伸長に寄与していると見られている。
牛丼チェーンの今後の争点は「効率化」
「健康」「ダイエット」などをテーマにしたメニュー作りや続々と投入される新商品によって、顧客獲得合戦が激しさを増す牛丼業界。通っていた店に1ヵ月行かないだけで、品揃えはがらりと変わっているかもしれない。
近年は人手不足もあり、各社はセルフレジや電子決済を導入するなどして利益率や利便性の向上に努めている。フード以外の部分の競争も激しくなりそうだ。
文・MONEY TIMES編集部/MONEY TIMES
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