◯イギリスでのISA制度の概要


まず初日は TISA (Tax Incentivised Savings Association:ISAに関する業界団体)の説明を伺いました。

ここでは、英国でのISAの成立の歴史から、現在の利用方法、将来の発展について投資の税制優遇制度として政治的な判断や評価をどのように得てきたかという概要が聞けました。

正直急にこのツアーに参加することになったので、英国のISAについては全く知識が無い状態でのスタートでした。
他の参加者の皆さんはある程度予備知識があったのかもしれませんが、私は完全に初心者でしたので、初心者的な質問と理解に終始してしまいました。

簡単にまとめますと、

「英国での証券投資優遇は1987年サッチャー時代の国営企業の民営化プログラムに合わせて、個人投資家に民営化した企業の株を保有させることが大きな目的のひとつであった。」

「その後政権交代などの流れを経て、ISA制度に変遷してきているが、25年ほど優遇制度があるので、制度的な信頼と利用が普及している。現在では国民の半分以上がISAを利用している。」

「子供達のためには、昔CTFs(Child Trust Fund)という投資優遇制度兼支援制度を設けていたが、これは財政的な制約の中で支援制度は外された。現在はJunior(ジュニア)ISAとして子供の将来資産の為のISAが利用されている。」

「英国では投資だけではなくCash ISAという、銀行預金に対する優遇制度も存在している。一般的な個人はやはり株式ISAよりもCash ISAの方が利用ハードルは低い。」

といった内容が学べました。


◯ISAの利用者、専門のアドバイザーの感想


その後は、実際のISA利用者に対するヒアリングです。

こちらは集約すると「せっかく、投資に関する優遇制度があるのだから、使わない理由はどこにもないでしょ」という意見が大半でした。
ISAの特徴は、いつでも現金化して利用できることです。そのため、いわゆる退職金準備制度としてだけではなく、住宅購入や教育費、また介護などいかなる用途に応じても利用できる制度だというところが受けが良いみたいです。

それから今度はIFA(Independent Financial Adovisor)に対してのヒアリングです。

英国のIFAはアメリカで言うところのCFPと非常に近い立ち位置です。つまり運用に対するアドバイスを行うことで、クライアントからフィーをもらうのが主な仕事になっています。

参考: 保険セールスの罠〜営業マンの「お勧め商品」は信頼できるのか?〜

結論を言いますと、IFA達にとってISAは必ず利用する制度ではあるが、投資家にとってのポートフォリオの一部としてという位置づけでした。
なぜならば、やはり投資に関してアドバイザーを利用する層は金融資産3000万円程度以上を持つ若干の富裕層以上であり、そうした層にとっては年間130万円の非課税枠というものは、もちろん利用するのですが、それだけでは投資ポートフォリオで利用するのには不十分ということになるからです。

なおここでは、ISA制度に関する話だけではなく、彼らのビジネスモデルや2013年1月から施行されたRDR(Retail Distribution Review)という制度によって完全にコミッションが廃止されたことに関するお話など聞いてきました.

伺った内容は、個人として、またFPとして、ライフプランニングを考える上でもとても大事なポイントでしたので、次回エントリーで丁寧に説明したいと思います。

BY 小屋 洋一( マネーライフプランニング 代表)

本人の同意のもと、ブログ記事を一部加筆・修正等を行った上で掲載しています。
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