不動産の売買契約を結ぶ際には、印紙税を納入する必要がある。税を納めるといっても、どこかの窓口でお金を支払って終わりというかたちではない。市役所や郵便局で収入印紙を購入し、それを契約書や領収書などの書面に貼り、消印をする。また、印紙税は取引の金額によって課税額が決められている。印紙を貼った経験がある人でも、印紙を貼る意味や決まりについて、正確に知っている人は少ないのではないだろうか。そこで、取引内容に応じた税額などの印紙税のルール、非課税となるケースなどについて解説しよう。

不動産取引で印紙税が必要な書類とは

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(画像=Watchara Ritjan / Shutterstock.com)

不動産取引で印紙税が必要となる書類とは、土地建物などの売買契約書、新築住宅などの工事請負契約書、土地を貸し借りする際の土地賃貸契約書、住宅ローンを利用する場合の金銭消費貸借契約書、金銭の授受が行われるときの領収書などだ。

不動産取引となれば、たいていの場合、取引額は数百万から数億円。もちろん、賃貸契約なら10万円以下の取引もあるだろうが、数千円、数百円ということはほとんどない。

印紙税は、取引額が高額になるほど増え、税額だけで数十万円を超えることもある。このため、取引の際には、どんな取引に対して、どのくらいの印紙税が必要になるのか、事前にしっかり把握しておくことが必要になる。

実際に印紙税はいくらかかるのか

不動産取引で必要な書類に課せられる印紙税について、具体的にそれぞれの取引内容に沿って税額を確認してみよう。

不動産売買契約書の印紙税額一覧表

不動産売買契約書の記載金額 本則税率 軽減税率
1万円未満のもの 非課税 対象外
1万円を超え10万円以下のもの 200円 200円
10万円を超え50万円以下のもの 400円 200円
50万円を超え100万円以下のもの 1000円 500円
100万円を超え500万円以下のもの 2000円 1000円
500万円を超え1000万円以下のもの 1万円 5000円
1000万円を超え5000万円以下のもの 2万円 1万円
5000万円を超え1億円以下のもの 6万円 3万円
1億円を超え5億円以下のもの 10万円 6万円
5億円を超え10億円以下のもの 20万円 16万円
10億円を超え50億円以下のもの 40万円 32万円
50億円を超えるもの 60万円 48万円

10万円を超える不動産売買の契約書に対する印紙税には、軽減措置がある。金額によっては大幅に減額されるため、注意しておきたい。ただし、軽減措置の対象は平成26(2014)年4月1日から令和2(2020)年3月31日までの取引となっている。

売買以外の不動産取引の契約書に課せられる印紙税額一覧

不動産取引では、売買契約以外にも、工事請負契約や土地の賃貸借契約、金銭貸借契約といった書類が作成される。それぞれの印紙税は次の通り。

工事請負契約金額 本則税率 軽減税率
1万円未満のもの 非課税 対象外
1万円を超え100万円以下のもの 200円 200円
100万円を超え200万円以下のもの 400円 200円
200万円を超え300万円以下のもの 1000円 500円
300万円を超え500万円以下のもの 2000円 1000円
500万円を超え1000万円以下のもの 1万円 5000円
1000万円を超え5000万円以下のもの 2万円 1万円
5000万円を超え1億円以下のもの 6万円 3万円
1億円を超え5億円以下のもの 10万円 6万円
5億円を超え10億円以下のもの 20万円 16万円
10億円を超え50億円以下のもの 40万円 32万円
50億円を超えるもの 60万円 48万円
土地賃貸借契約及び金銭消費貸借契約の金額 税率
1万円未満のもの 非課税
1万円を超え10万円以下のもの 200円
10万円を超え50万円以下のもの 400円
50万円を超え100万円以下のもの 1000円
100万円を超え500万円以下のもの 2000円
500万円を超え1000万円以下のもの 1万円
1000万円を超え5000万円以下のもの 2万円
5000万円を超え1億円以下のもの 6万円
1億円を超え5億円以下のもの 10万円
5億円を超え10億円以下のもの 20万円
10億円を超え50億円以下のもの 40万円
50億円を超えるもの 60万円
契約金額の記載のないもの 200円

工事請負契約書の印紙税にも、軽減措置がある。対象期間は不動産売買契約と同じく、平成26(2014)年4月1日から令和2(2020)年3月31日まで。軽減措置は平成9(1997)年以来延長され続けているが、2019年10月には消費税率の引き上げが予定されており、再び延長されるかどうかはわからない。不動産取引などを予定している人は、こうした動向を注視しておこう。

領収書にかかる印紙税額一覧

領収書の金額 税率
5万円未満のもの 非課税
5万円を超え100万円以下のもの 200円
100万円を超え200万円以下のもの 400円
200万円を超え300万円以下のもの 600円
300万円を超え500万円以下のもの 1000円
500万円を超え1000万円以下のもの 2000円
1000万円を超え2000万円以下のもの 4000円
2000万円を超え3000万円以下のもの 6000円
3000万円を超え5000万円以下のもの 1万円
5000万円を超え1億円以下のもの 2万円
1億円を超え2億円以下のもの 4万円
2億円を超え3億円以下のもの 6万円
3億円を超え5億円以下のもの 10万円
5億円を超え10億円以下のもの 15万円
10億円を超えるもの 20万円
金額の記載のないもの 200円

不動産取引で売買代金を受け取ったとき、通常は領収書を発行するが、一部のケースを除いて、領収書にも印紙税が課されることになる。非課税扱いとなる領収書については後で触れる。

少額の領収書の非課税範囲については、平成26(2014)年4月に「3万円未満」から「5万円未満」にまで引き上げられた。

領収書に印紙税が不要な場合とは

不動産取引で発行された領収書が非課税扱いになるケースの一つに「営業に関しない受取書」がある。どのような要件であれば「営業に関しない受取書」になるか、次の表で確認しよう。

受取書(領収書)の発行者 税区分
株式会社などの営利法人 課税
公益社団法人・公益財団法人 非課税
協同組合など会社以外の法人 (※法令の規定又は定款の定めにより利益金又は剰余金の配当又は分配をすることができる法人で、出資者以外との取引は課税) 非課税※
人格のない社団 (※人格のない社団が作成するもので収益事業に関するものは課税) 非課税※
個人で私的日常生活に関する場合 (※「商人」としての取引は課税) 非課税※

個人及び会社で、かつ営業上の場合は必要

営業目的を持つ会社であればもちろんのこと、個人であっても営業上の取引に関わる場合は、印紙税の課税対象となる。たとえば、駐車場といった営業用資産の取引などだ。

個人かつ非営業の人は不要

個人が自宅や別荘などの非業務用資産売却した場合、印紙税は非課税となる。

自宅を売却する場合、個人が売り主となるケースは多いだろう。しかし、あくまで自宅や別荘などが対象であり、個人であってもたとえば農家が農地を売却した場合には「営業」と判断されて課税される。一方で、同じ農地でも家庭菜園程度の範囲ならば「非営業」と判断される。「営業」か「非営業」か、専門知識もないまま判断するのは危険で、必ず税理士か税務署で確認しておいたほうがよい。

印紙税を払わないとどうなるのか

本来、所定の書面に貼らなければならなかった印紙を貼っていなかった場合、どうなるのか。うっかり忘れてしまうケースも考えられるので、しっかり覚えておこう。

国税庁によると、印紙税に相当する印紙を貼っていなかったときは、過怠税を課せられる。つまり、税の納付漏れで罰則があるということだ。

過怠税は、納付すべきだった印紙税の2倍に相当する額となる。これにもともと納付すべきだった金額も支払う必要があるので、税額の3倍を納めなくてはならないことになる。高額の取引だった場合は、相当な負担になってしまう。

ただし、税務調査を受ける前に、自ら不納付を申告した場合には、「過怠税」は1.1倍に軽減される。忘れていた場合には、早めに申告したほうがよい。

また、過怠税は印紙に消印がない場合でも徴収の対象になる。この場合の過怠税は印紙の額面相当の額となるので、印紙を貼った際には消印を忘れていないかどうか、しっかり確認しておこう。

「印紙が貼ってあるかどうかまで、いちいち調べないだろう」と安易に考える人もいるかもしれないが、法人が税務調査を受けるときは、契約書類や領収書も1枚1枚チェックされる可能性は十分にあるので、「黙っていればわからないだろう」という考えは禁物だ。少なくとも不動産や建設関係の法人なら、売買契約書や工事請負契約書は必ずチェックされているはずだ。

印紙税をお忘れなく!

不動産取引では、売買や住宅ローン、領収書などあらゆる場面で印紙税が課税される可能性がある。それぞれの書面で税額が異なり、軽減税率が適用されるかどうかでも税額は変わる。後から税務署に不納付と判断されて「過怠税」を徴収されることがないように、正しい額の印紙の貼付や消印などを確実にしておくことが大切だ。

特に、業者を介さず個人で取引を行う場合は、「うっかり忘れていた」ということも考えられるので、専門家のアドバイスも受けながら慎重に進めてほしい。