公務員・士業
会計士、税理士、弁理士は厳しい。付加価値をつける工夫が必須
士業といえども、機械化によって業務の大半が代替可能になる流れは避けられない。最も機械化されやすいのは、会計士、税理士、弁理士。今までと同じ仕事のやり方では生き残れないので、顧客満足度が高まるよう付加価値を高めていく必要がある。例えば弁理士なら、特許を使ったビジネスを提案できるようコンサルティングの知識を身につけたり、コンサルティング会社と協業したりすることが求められる。士業の世界でも淘汰が始まる。(中原氏)
定型的な入力作業はRPA(ロボットによる業務自動化)によって自動化され、付加価値の低い仕事は急速に機械に代替されていく。ただし、弁護士の仕事が完全にAIに置き換わることはなく、判例の抽出などでAIが弁護士の仕事をサポートしていく形となる。公務員は、文書仕事の多さから本来の仕事に時間が割けていないのが現状であり、自動化によって作業効率が高まれば、課題解決や政策立案など付加価値の高い仕事にシフトしていけるようになる。(長谷氏)
医療
医師の仕事の7割は機械化。診断時間の大幅短縮で診断料が下がる
早ければ2020年代後半には、病気の診断や薬の投与、手術など医師の仕事の7割程度をAIやロボットで補完できるようになり、医師はAIの判断を確認するだけでよくなる。まずは都内でAI導入が進むので、供給過剰となった医師が地方へ向かえば、地方の医師不足解消に一役買うことができそうだ。創薬の分野でも、2020年代後半にはAIによる画期的な新薬の誕生が期待できる。開発にかかる費用圧縮と時間短縮が可能になるので、ベンチャー企業の参入も増えていく。(中原氏)
医師の仕事をサポートする形でAIが活用されていく。例えば画像診断では、膨大な数のMRI・CT画像を1枚ずつ見る代わりに、AIにあらかじめ問題箇所を抽出させ、診断の抜け漏れを減らせる。また、AI技術による診断機械の高速化にも注目したい。海外では、スキャンの荒いMRI画像から高精細な画像を生成する技術開発が進められていて、診断時間は約10分の1にまで短縮される可能性がある。そうなれば診断コストも下がり、誰でもMRIを気軽に使えるようになる。(長谷氏)
マスメディア
テレビ局はもはや不動産業?AI記者に仕事を奪われる恐れも
新聞や雑誌は、市場の縮小に伴い今後も部数が減り続ける。オンラインメディアで補うのは難しいし、ネットには色々な企業が参入しやすいため、薄利多売競争に陥りやすい。コンテンツの付加価値を高めることが打開策になるが、残念ながら、読者の喜ぶような味のある記事を書ける優秀な記者が減ってきている。テレビも近年は付加価値の高いコンテンツが減り、本業の地上波よりも不動産業で稼いでいるのが実情。マスメディアは全体的にシビアな状況になっていくだろう。(中原氏)
すでにAI化が進んでいる分野。特にネット広告は、閲覧する人のプロファイルをもとに広告が最適配信されるなど、ほぼAI化が実現している。コンテンツ作成の領域でも、スポーツ速報や決算速報など定型的な文章はすでにAIが書いている。また、ゼロから文章を作成する場面でも、海外では数年前からAI記者が登場。人が取材して集めた情報をAIが集約したり、決められた取材項目をチャットボットが取材して文章化したりするといった事例が出始めている。(長谷氏)
食品
海外市場を視野に入れる必要あり。調理ロボよりもAIレシピが先行中
日本はこれから人口減と高齢化で胃袋の数が減っていくので、国内需要の減少を海外でどう補うかが重要な視点になる。安全性の面で信頼されている日本の農産物は、海外での需要が高い。ただし、輸出のための輸送手段や鮮度を保つ技術が発展途上なので、その辺をどうクリアしていくかは課題。また、外需を取り込んで国内の雇用を増やしていくには、企業による大規模な農場運営を可能にする規制緩和も同時に進めていく必要がある。(中原氏)
外食店舗で調理ロボットが活躍するまでには、まだしばらく時間がかかる。倉庫内の自動化の話と同じで、人間の手の動きを再現する技術がネックになっている。一方、献立やレシピの考案においては、人間が思いつかない斬新なアイデアがAIによって生まれている。まずは調理より献立やレシピ考案でのAI活用が進んでいくと考えられる。また、注文を取るなど簡易な接客作業はAIが担うのが一般的になっていくだろう。(長谷氏)