【目次】
①HPCシステムズIPOの基礎情報
②ビジネスモデル解説(執筆=株価プレス管理人)【9/11更新】 ※一部有料会員限定
③IPOジャパン編集長 西堀敬 氏のコメント 【9/13更新】 ※有料会員限定
- 会社名
- HPCシステムズ株式会社
- コード
- 6597
- 市場
- マザーズ
- 業種
- 電気機器
- 売買単位
- 100株
- 代表者名
- 代表取締役 小野 鉄平 /1974年生
- 本店所在地
- 東京都港区海岸三丁目9番15号
- 設立年
- 2006年
- 従業員数
- 86人 (2019/07/31現在)(平均43.6歳、年収547.1万円)
- 事業内容
- 科学・工学向け高性能コンピューターのソリューション提供
- URL
- https://www.hpc.co.jp/
- 株主数
- 18人 (目論見書より)
- 資本金
- 153,000,000円 (2019/08/21現在)
- 上場時発行済み株数
- 4,090,000株(別に潜在株式311,500株)
- 公開株数
- 3,198,500株(公募50,000株、売り出し2,731,400株、オーバーアロットメント417,100株)
- 調達資金使途
- ソフトウエア開発費、サーバー取得費、工場設備投資、人件費
- 連結会社
- なし
- スケジュール
- 仮条件決定:2019/09/06→1,930~1,990円に決定
- ブックビルディング期間:2019/09/09 - 09/13
- 公開価格決定:2019/09/17→1,990円に決定
- 申込期間:2019/09/18 - 09/24
- 払込期日:2019/09/25
- 上場日:2019/09/26→初値1,870円
- シンジケート ※会社名をクリックすると外部サイトへ飛びます
- 主幹事証券:SMBC日興証券 (SMBC日興証券の詳細記事はこちら)
- 引受証券:SBI証券 (SBI証券の詳細記事はこちら)
- 引受証券:みずほ証券
- 引受証券:東海東京証券
- 引受証券:むさし証券
- 引受証券:岩井コスモ証券
- 大株主
- TKHK投資事業有限責任組合 3,050,500株 70.10%
- 菱洋エレクトロ(株) 450,000株 10.34%
- ナラサキ産業(株) 279,000株 6.41%
- 小野鉄平 133,000株 3.06%
- 椎名訓子 45,000株 1.03%
- (株)ハイアテック 40,000株 0.92%
- 長谷川真樹 30,000株 0.69%
- 関浩行 28,500株 0.65%
- 齋藤正保 28,500株 0.65%
- 廣石昭彦 25,500株 0.59%
- 業績動向(単位:百万円)売上高 営業利益 経常利益 純利益
- 2017/6 単独実績 3,900 244 254 162
- 2018/6 単独実績 4,053 282 291 189
- 2019/6 単独実績 5,395 369 367 219
- ロックアップ情報
- 指定された株主は上場後180日目の2020年3月23日までは普通株式の売却ができず(例外あり)
- 調達額(公開株数×公開価格)
- 63億6501万5000円(3,198,500株×1,990円)
- 潜在株数(ストックオプション)
- 311,500株
- ビジネスモデル解説(執筆=株価プレス管理人)
-
HPCシステムズ<6597>は専門的な知見が求められる研究者や開発者向けに、科学技術計算に関連するコンピュータの開発及びソリューションの提供を行う企業である。
PCの組み立て販売などを行っていたプロサイドの分社型吸収分割を2006年に行い、実質的な事業を開始している。
■事業内容について
同社は下記2事業から構成されている。
・HPC事業
・CTO事業
●HPC事業について
HPC事業は科学技術計算に関連するソリューションの提供を行う。具体的には下記サービスを提供している。
・科学技術計算用高性能コンピュータとシミュレーションソフトウェアの販売
・システムインテグレーションサービス
・シミュレーションソフトウェアプログラムの高速化サービス
・導入後のサポートなど
上記をワンストップでトータルに行う体制を有しサービスを提供中。
従来の企業向けのSI事業とは異なり、科学技術計算、モノ作りにおける流体構造シミュレーション、創薬や材料開発に必要な計算化学、機械学習や人工知能解析、ビッグデータ解析用など、専門的な知見が必要とされるSIサービスを提供する。自社開発の化学計算ソフトウェアも有しており、特定の専門領域で効率的なソリューション提供が可能である。またユーザー層の裾野が拡大により、柔軟な利用環境を求めるユーザーが増加しており、クラウドでのサービス提供も開始している。
ユーザーとしては大規模・高精度な化学技術計算やビッグデータ解析、深層学習/AI処理を必要とする大学、公的研究機関、企業の研究者と開発者が対象である。
尚、2017年6月にヤフーへ納入したディープラーニング活用に特化した省エネ性能の高いスーパーコンピュータ(スパコン)が、スパコンの省エネ性能ランキング「GREEN500」において世界第2位を獲得した実績が存在する。
●CTO事業
CTO事業は顧客の注文仕様に応じた産業用コンピュータの開発、製造及び販売を行っている。同社の産業用コンピュータは、組込コンピュータとして各種製造装置や工作機械、計測装置・検査装置、医療機器、デジタルサイネージなど、様々な産業分野において活用されている。
仕様設計から試作機提案、量産前検証、量産製造、出荷後まで一貫した体制を顧客に対して提供中。
尚、米国Super Micro Computer,Inc.が主要仕入れ先であり、代理店契約を締結。Super Micro Computer社の製品を中心に組み合わせ、コンピュータを開発している。
■部門別損益
2018年6月期
HPC事業 売上高26億円、セグメント利益1.4億円
CTO事業 売上高14億円、セグメント利益1.4億円
2019年6月期Q3(累計)
HPC事業 売上高33億円、セグメント利益2.8億円
CTO事業 売上高12億円、セグメント利益1.5億円
システムをソリューションとして提供するHPC事業が同社の主力事業となっているが、CTO事業も黒字を継続中である。
■業績推移
2016年6月期 売上高29億円、経常利益0.8億円、当期純利益0.4億円
2017年6月期 売上高39億円、経常利益2.5億円、当期純利益1.6億円
2018年6月期 売上高41億円、経常利益2.9億円、当期純利益1.9億円
2019年6月期(見込み) 売上高54億円、経常利益3.7億円、当期純利益2.2億円
2020年6月期(予想) 売上高58億円、経常利益4.6億円、当期純利益3.1億円
AIやビッグデータ解析など、高性能コンピュータの活用ニーズが拡大する中で、同社業績も拡大を続けている。
2019年6月期は売上高50億円を突破の見込みである。尚、2018年6月期が公開申請決算期であり、期越え決算での上場である。
2020年6月期(予想)は高確度案件の積上げを中心に予想を策定している。
■財務状況
2018年6月期末時点で、資産合計20億円に対し純資産合計8.3億円、自己資本比率41%となっている。
借入金7.2億円に対し、現預金は5.8億円を有している。また棚卸資産(製品・仕掛品・円材料及び貯蔵品)は5.6億円である。
他の新規IPO企業に比べ、自己資本比率が若干低めの水準にあるが、懸念される内容ではない。
■資金使途
IPOにより2.5億円の資金調達を行い、下記の使途を予定している。
・クラウドサービス向上のためソフトウェア開発及びクラウド用サーバ増設費 1.4億円
・検証用サーバ取得費 0.9億円
・産業用コンピュータ事業拡大のための工場設備投資、人件費 0.2億円
調達資金の半数以上がクラウドサービス関連の投資に充当される。
■株主状況
筆頭株主はTKTH投資事業有限責任組合であり、株主シェアは70%である。TKTH投資事業有限責任組合は国内中堅企業への投資を手掛ける、トライハード・インベストメンツの運営するファンドである。
2位株主は半導体商社の菱洋エレクトロ<8068>で株主シェア10%。3位株主はナラサキ産業<8085>で同6.4%ある。
筆頭株主のTKTH投資事業有限責任組合は保有する3,050,500株のうち、2,731,400株を売出に拠出する。よってIPO後は菱洋エレクトロが筆頭株主となる。
尚、TKTH投資事業有限責任組合と菱洋エレクトロ、ナラサキ産業は、上場後180日間のロックアップ契約を締結している。
■まとめ
研究者や開発者向けに、科学技術計算に関連するコンピュータの開発及びソリューションの提供を行う企業のIPO案件である。ファンドが70%の株式シェアを有しているが、IPO時の売出で保有株式の大半が売却される。
AIやビッグデータ解析など、高性能コンピュータが必要とされる場面が増加しており、同社の業績も拡大している。ビッグデータ解析を始め、莫大なデータ解析ニーズは今後も増加すると予想され、高性能コンピュータに対するニーズも底堅いと予想される。
ただし同社サービスは研究者及び開発者向けのサービスであり、同社の製品やサービスの利用者層は限定される。ユーザー層が限られる中で、IPOを機に成長性を高めることができるのか、という点が今後の注目ポイントになると考えられる。また筆頭株主のファンドが売出で大半の株式を売却するため、IPO後の株主状況にも注意が必要と考えられる。