20年続く超低金利政策ですが、景気の下振れリスクが高まっていることもあり当面終わりそうもありません。

そんな中、消費者金融のアイフルがアメリカで人気を集めている投機格付け社債(ハイイールド債)を国内で初めて発行し投資家の話題を呼んでいます。

米国で根付いたハイイールド債市場

アイフル,ハイイールド債
(写真=Monster Ztudio/Shutterstock.com)

格付けとはムーディーズやS&Pといった格付け機関により企業の債務支払い能力をランキングするものです。

格付けはアルファベット記号で表示され、最上位とされるのがトリプルA(AAA)であり、「債務を履行する能力が極めて高い」ランクになるわけです。

高格付けを獲得しているのは、東京ガス、JR東海、JR東日本、NTTグループなど財務的に安定した企業が名を連ねます。

ダブルB(BB)未満は低格付けとなり、「状況によっては債務履行が難しくなる」というランクです。シャープ、日本原子力発電といった、債務超過など財務的に問題を抱えている企業が並んでいます。

ちなみにもっとも格付けが低いのはDです。

格付けは社債発行や借入の金利にも影響し、高格付け企業ほど優遇を受けられます。

アメリカの投資家はリスクを取ってでも高利回りを求める傾向が強く、1970年代からハイイールド債市場が整備されており発行残高は2兆ドルにおよびます。ハイイールド債とは、格付けダブルB(投機的要素大)以下のいわゆる低格付け企業が発行する社債のことです。

今まで日本の投資家は安全性を重視し、格付けの高さを気にする傾向が強かったため、ハイイールド債市場は育ちませんでした。それが最近になって風向きが変わってきたのです。

ほとんど金利がつかない国債・高格付け社債

ハイイールド債が注目されたのには長期にわたる金融緩和政策が影響しています。

日銀の速水総裁が0.25%の政策金利(無担保コールもの)を引き下げ、世界初のゼロ金利に突入したのが1999年で、深刻なバブル後遺症に苦しんでいた時期です。

それから20年が過ぎ去ろうとしていますが、その後も日銀は量的・質的金融緩和を追加するなど実質的にゼロ金利政策を維持してきました。

2019年6月に開かれた日銀金融政策決定会合でも、少なくとも2020年春まで短期金利マイナス0.1%、長期金利0%程度で据え置きを決めています。

この結果、国債や高格付け社債では利回りを稼げない状況が続いています。金利は国債10年物で0.05%、JR東日本の10年償還普通社債が0.100%です。

リスクを取ってでも利回りを求めざるをえない、そんな背に腹は代えられない状況からハイイールド債を受け入れる土壌が形成されてきたわけです。

高金利が人気のハイイールド債

プロミス・アコムなどと並ぶ大手消費者金融業アイフルは2019年5月、150億円の社債(償還期間1年6ヵ月・金利0.990%)を発行しました。

アイフルの格付けはダブルBであり、今回の社債は日本初のハイイールド債です。GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が国内投資基準を緩和したことで運用マネーが集まりました。

ハイイールド債は発行企業側にもメリットがあります。アイフルは事業再生ADR手続きによる復活企業であり、資金調達手段が限られてきました。今回のハイイールド債発行により、調達の選択肢は大きく広がったのです。

アイフルが今回発行する社債は機関投資家向けですが、今後は個人向けハイイールド債に期待が集まります。

ただし、忘れていけないのがリスクです。いったん景気が悪くなり始めたらハイイールド債は一挙にデフォルトリスクが高まります。某外資系投資銀行の調査によると、ハイイールド債のデフォルトリスクは最大4800億ドルに達するとされています。

投資に当たっては、高金利は常にリスクと隣り合わせであることを念頭に置く必要があるでしょう。(提供:Incomepress

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