老舗ネット証券である松井証券の魅力は、とにかくシンプルで分かりやすいことだ。投資初心者や中高年ユーザーに優しい取り組みや、無料で利用できるサービスなど、松井証券を特徴付ける商品やサービスなどを紹介する。

松井証券はどんなネット証券会社なのか?

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(画像=松井証券ホームページより)

松井証券の経営の基本方針は「個人投資家の利益に資するイノベーティブなサービスを他社に先駆けて提供していくこと」である。

インターネット取引を業界でいち早く取り入れたのは松井証券であり、無期限信用取引を開発したのも同社。商品開発力に秀でた松井証券の商品仕様やサービスはいずれも、革新的であるだけでなく、投資初心者や特定のユーザーの視点に立って考案されている。

松井証券の取引手数料 1日10万円以下なら手数料無料

株式投資をする上でもっとも気になるのが手数料。まずは松井証券の手数料体系を見ていこう。

松井証券は国内株式の現物取引手数料に対して「ボックスレート」を採用している。ボックスレートは松井証券が業界で初めて導入した1日定額制手数料体系。

ボックスレートの手数料の対象となるのは、

・国内株式の現物取引
・信用取引(制度信用取引、無期限信用取引)

1日分の現物取引と信用取引の約定代金を合計した金額ごとに、取引手数料が設定されている。

なお国内のETF(上場投資信託)、国内ETN(上場投資証券)、REIT(不動産投資信託)もボックスレートの対象取引である。

松井証券の手数料設定表

1日の約定代金合計金額 取引手数料(税抜)
~10万円 0円
~30万円 300円/0円 ※
~50万円 500円
~100万円 1,000円
~200万円 2,000円
100万円増えるごとに、1,000円ずつ加算
1億円超 上限 10万円

※新たに信用取引口座を開設してから6カ月後の月末まで、1日の約定代金合計金額が30万円以下の場合、手数料は0円になる。 ※上記一覧は、松井証券のホームページを参照して、筆者が作成した。

無期限信用取引の手数料無料条件

信用取引には、取引所の規則で定められている「制度信用取引」と、各証券会社が自由に決められる「一般信用取引」(松井証券の場合は「無期限信用取引」と「一日信用取引」の2種類)がある。

松井証券では制度信用取引と無期限信用取引がボックスレートの対象であり、そのうちの無期限信用取引では、以下の場合は手数料が無料になる。

① 日計り取引の片道手数料
② 保有期間6カ月超の返済手数料

日計り取引の片道手数料については、当日の取引中はボックスレートによる手数料全額分が買付余力から拘束されるが、取引時間終了後のデータ一括処理で、片道手数料無料として処理される。

一日信用取引の取引手数料は基本0円

信用取引のうち、一日信用取引はボックスレートが適用されない。一日信用取引では、新規建で当日中に決済されるデイトレードに限り、新規買建や新規売建、売決済、買決済、あるいは約定代金の金額を問わず、取引手数料は0円である。

新規建を行った当日大引けまでに建玉が決済されなかった場合は、松井証券側の任意で決済されることになる。この場合、約定代金×0.3%、最低手数料20円(税抜)が発生する。

松井証券の4つメリット 手数料の設定やIPO、ロボアドサービス、信用取引をチェック

次に手数料を含めた、松井証券の主だったメリットを紹介していこう。

メリット1,1日10万円以下の取引なら無料の手数料設定

松井証券が採用する取引手数料体系は、1日の約定代金合計金額区分ごとに手数料が設定されている「ボックスレート」である。最大の特徴は、1日の約定代金合計金額が10万円以下であれば、取引手数料が0円であること。10万円の取引が1回でも、5万円の取引が2回でも、どちらも1日分としての手数料は0円だ。

投資を始めたばかりで株式投資に慣れることを第一に考える人や、損失額をできるだけ抑えるために少額取引に限定して投資したいと考える人には、「1日の約定代金合計金額が10万円まで手数料0円」は絶好の取引環境だ。

メリット2,前受金がいらないIPO投資の仕組み

初値高騰に対する期待感から人気の高いIPO。松井証券では、抽選に先立って行われるブックビルディング(需要申告)申込時点では前受金を必要としない。実際に抽選に当選した場合だけ、購入申込期間内に「発行価格×申込株数」の購入代金を入金すればよい。

多くの証券会社では、IPOのブックビルディングに参加する場合、「申告金額×申込株数」相当額の前受金を入金しなければならない、または買付可能額を拘束することが定められている。

IPOの抽選で当選するには、何度も抽選に参加する必要がある。その都度、証券口座に十分な買付余力があるかを確認したり、買付可能額分を入金したりするのは手間がかかる。当選した時だけ購入代金を入金すればよい松井証券は、IPO投資を始めたいと考えている初心者の心理的負担の軽減になる。

メリット3,無料で利用できる3つのロボアドバイザーサービス

松井証券が提供するロボアドバイザーサービスは3種類。スマートフォン用の投信アプリ「投信工房」、投資信託を3つ提案する「投信提案ロボ」、そして投資信託の乗り換え推奨銘柄を提案する「投信見直しロボ」である。

・「投信工房」――AIによる本格的な運用サポート
スマートフォン専用アプリ「投信工房」は100円から積立可能で、8つの質問に答えるだけで本格的な運用サポートを受けることができる。その上、利用料は0円だ。利用料0円を可能にしているのは、人を介さないAIを利用し、買付手数料や信託報酬が安い投資信託を厳選して徹底的な低コスト運用を行っているため。

・「投信提案ロボ」――ユーザーに最適な投資信託を提案する
「投信提案ロボ」は、ユーザーが興味のある資産や地域、方針を選択すると、自動的に条件に合った高スコアな投資信託が3つ提案されるサービスだ。提案された投資信託の過去の値動きやファンドの評価が表示され、投資信託選びの強力な味方となる。もちろん、利用に際して手数料は発生しない。

・「投信見直しロボ」――保有する投信をスコア化して見直すべきかどうかを判断する
「投信見直しロボ」とは、保有中の投資信託をそのまま持っているべきか判断しかねるときに利用できる無料サービスだ。

条件への合致度を多角的に判断して数値化することで、長期投資に適した投資信託かどうかを自動的に判断し、スコアが低い場合には、同じような条件でより高いスコアになる投資信託を、乗り換え推奨銘柄として3つ提案してくれる。

いずれも、自動化された信頼性の高いロボアドバイザーサービスを無料で利用できるので、投資信託の選択に自信がない人や、忙しくてじっくり検討する時間をとれない人におすすめのサービスだ。

メリット4,一日信用取引なら、信用取引の手数料が何回でもいくらでも無料

「一日信用取引」とは、松井証券のデイトレード専用の信用取引のこと。松井証券が業界で初めて導入したこの信用取引の最大の特徴は、返済期限が当日であることと、徹底的に低コストにこだわった取引であることだ。

低コストを象徴するのが、デイトレードの約定代金に関わらず取引手数料が0円である点だ。金利・貸株料でも、1注文あたりの約定代金合計が300万円以上であれば年利0%、あるいは約定代金合計が300万円未満の場合は年利2.0%という低コストに設定されている。

さらに、一日信用取引には、3つの専用サービスが用意されている。

・「プレミアム空売り」――空売り人気の高い銘柄を取引できるプレミアム感
制度・無期限信用取引で空売りできないものの、人気の高い新興市場銘柄や新規上場した銘柄も空売りできるサービスのこと。貸株料と、1株あたりで前営業日の終値×1%(上限)のプレミアム空売り料が発生する。

・「プレミアム空売りゼロ」――プレミアムにしてコストメリット最大化
制度信用取引の空売り対象銘柄(貸借銘柄)の中でも、日経レバレッジETF <1570> など、人気が高く株式を調達できない銘柄に対して、一日信用取引で空売りを可能にするサービスのこと。プレミアム空売りゼロ対象銘柄にはプレミアム空売り料が発生しない。

・「一日信用成績表」――得意も苦手も一目瞭然
一日信用取引の損益額や損益率、勝率、建玉保有時間などを日次または月次で一覧表示したもの。過去の成績と比較して、取引成績が改善しているかを数値で確認できる。取引を繰り返すデイトレーダーならぜひ役立てたい。

松井証券の3つの特徴 初心者にうれしい使い勝手を重視したサービスが充実

松井証券の特徴を一言でいうなら「ユーザーフレンドリー」なネット証券だ。上述のように、投資初心者や特定のユーザーにやさしいサービスや手数料体系が用意されている。それ以外にも、松井証券らしいユーザーフレンドリーなサービスの一例として、以下が挙げられる。

他社で有料の「QUICKリサーチネット」が無料利用できる

他社では原則有料情報サービスとなっている「QUICKリサーチネット」の情報が、松井証券の会員なら誰でも無料で利用できる。

QUICKリサーチネットでは、個別銘柄または国内外マーケットを対象とした「レポート総合」やQUICK企業価値研究所が独自取材した「株主優待」の最新情報の閲覧、あるいは独自の株価格付を基にIPO情報や決算関連情報を検索するなど、付加価値の高い投資情報を入手できる。

株主優待やIPO投資を始めたい人は、銘柄選択や銘柄研究のために大いに活用してほしい。

初心者でも安心の充実したサポート体制

松井証券のサポート体制は、HDI-Japan主催の「2018年度サポートポータル格付け(証券業界)」において、8年連続で三つ星を獲得している。ユーザーへのサポート体制も分かりやすい。証券総合口座にあたるネットストックの「ご利用の手引き兼取引規程・約款」は、PDFで印刷することができるので読みやすく、振り返りも容易だ。

分からないことがあれば、最初にWEBサイト上の「よくあるご質問(Q&A)」を自分でチェックできるだけでなく、サポート動画を見ながら操作方法を確認することもできる。それでも解決しなければ、ネットストックにログインしてからWEBサイトの「問い合わせ・ご意見」(24時間受付)から問い合わせる、あるいは電話でオペレーターに問い合わせ(平日8:30~17:00)も可能だ。

ネットストックを開設している人なら「松井証券リモートサポート」を利用することもできる。このサービスでは、ユーザーのパソコンと同じ画面を見ているオペレーターから、操作方法などの指示を受けられるので、初めてネット証券で取引する人やパソコンに不慣れな人でも安心して取引を始められる。

読みやすいWEBサイト

松井証券のWEBサイトは他社のWEBサイトに比べると、非常にシンプルで読みやすい。1画面に表示される情報量を極力抑えて、知りたい内容だけを簡単に読むことができる。その上、難しい専門用語もあまり使用されていないため分かりやすい。

このような、シンプルで分かりやすいWEB画面なら、専門知識が不十分な投資初心者や、分かりやすさを重視する人、または読むことに不都合を感じる中高年ユーザーなら、使い勝手の良いWEBサイトだと感じるはずだ。

松井証券の2つのデメリット 投信の取扱銘柄本数

一部のユーザーには使い勝手のよい松井証券であるが、その反面、松井証券がベストな選択にならない場合もある。ここでは、松井証券のデメリットについてもチェックしておきたい。

デメリット1,取扱商品や、投信の取扱銘柄本数が多くない

松井証券では

・外国株式
・海外ETF
・債券
・CFD
・商品先物
・金・プラチナ

といった商品を取り扱っていない。ハイリスクでもリターンが大きい商品に積極的にチャレンジしたい人、または幅広い種類、数多くのラインナップの中から、自分の投資方針や投資スタイルに合った商品を自分自身で厳選したい人にはやや物足りないかもしれない。

投資信託でさえも、2019年8月29日現在で、松井証券の取扱本数は1,048本であり、ネット証券業界最大手のSBI証券の取扱本数が2,650本であることに比べると少ない。

松井証券の投資信託取扱本数が少ない理由は、松井証券がノーロードを中心に低コスト運用の投資信託を厳選してユーザーに提供しているという背景がある。これは、取扱投信総数1,048本中793本、つまりおよそ8割がノーロードであることからも明白だ。そのため、コストよりもとにかく高い運用利回りを見込める投資信託をみつけたい場合には、選択肢が少なくなってしまう可能性はある。

デメリット2,取引次第では、取引手数料が割高になる場合も

松井証券では、1日の約定代金合計金額が10万円以下になる少額取引の手数料は0円である。その一方で、50万円や100万円を超える高額な国内株式現物取引については、他社より取引手数料が割高になる。

例えば、国内現物株式取引の約定代金が50万円、100万円、3,000万円の場合の税抜き取引手数料は、SBI証券スタンダードプラン(1約定ごとの手数料)では順に250円、487円、921円である。松井証券は、それぞれ500円、1,000円、3万円になる。

高額な現物株式取引については、松井証券の取引手数料に割高感があるのは否めない。

松井証券はシンプルさと分かりやすさを追求したネット証券

松井証券は料金体系にせよ、サポートシステムにせよ、シンプルで分かりやすいのがネット証券だ。

低コストに特化した一日信用取引はデイトレーダーには魅力的だ。前受金不要のIPOは負担感の少なさから、多数のIPO抽選に参加したい人には最適だろう。さらにQUICKリサーチネットの無料閲覧や、少額取引手数料0円を始め、シンプルなWEB画面やWEBだけで簡潔せず人が介在するサポート体制は、投資初心者にうれしい仕組みだ。

松井証券は「なんでも揃っていて、万人が使える」というわけではない。しかし投資初心者やネットに慣れていない人が初めて証券口座開設をする時の、有力な選択肢のひとつとして検討する価値が多いにあるだろう。

文・近藤真理(フリーライター)/MONEY TIMES

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