(本記事は、ジャスパー・ウの著書『実践 スタンフォード式 デザイン思考 世界一クリエイティブな問題解決』インプレス2019年9月11日刊の中から一部を抜粋・編集しています)

継続してトレーニングする

思い込みを変えることの難しさ
(画像=Ollyy/Shutterstock.com)

デザイン思考を学ぶとは、皆さんのマインドセット(考え方)を変えるということです。そのためには、デザイン思考を継続的に使い続け、自分自身で身に付ける必要があります。

スポーツジムに行くことを想像してみてください。1日だけお試しでジムに行くのと、「10キロダイエットできるまでジムに通い続ける」というのではまったく違うモチベーションと結果になるはずです。

体重を10キロ減らそうと思ったらジムに通い続け、トレーニングを続けることで半年後、ようやく理想の自分になれるのではないでしょうか。デザイン思考も同じです。継続して学ぶことで身に付くものなのです。即時性を求めるのではなく「継続してトレーニングすること」が非常に重要なポイントです。

たとえるなら、これはリーダーシップについても同じように言えます。たとえば、私が明日からマネージャーを任されたとしても、すぐにリーダーとして立ち居振る舞いできるわけではありません。リーダーとしての知識や考え方を学び、繰り返し実践していく中でようやくリーダーシップを身に付けることができるのではないでしょうか。

これと同じように、実践と練習をしなければ、デザイン思考とは何かを知ることはできません。トレーニングを継続すること、繰り返し実践すること、それこそがデザイン思考を身に付ける方法といえるでしょう。

思い込みを変えることの難しさ

デザイン思考のプロセスは、一見するとシンプルです。しかしこれだけを見て、「簡単で単純そう」と決めつけないでください。一度思い込んだ誤解を解くのは、簡単なことではありません。

レオナルド・ディカプリオ主演の『インセプション』という映画を観たことがありますか? この映画を観たことがある方なら、小さな考えがその人の思考や行動に大きな影響をもたらすことを実感いただけると思います。この映画の主人公たちは他人の潜在意識に入り込み、意識下に隠された情報を盗み出すという(違法な)仕事をしています。ある日、主人公たちは渡辺謙が演じる実業家に、情報を盗み出すのではなく、「ある考えを植え付ける」ことを依頼されます。考えが少し変わることで、現実での選択が大きく変わっていくというテーマが示唆されているように感じました。

デザイン思考を身に付ける難しさは、この映画にたとえることができます。つまり、人がもつ考え方は、その人の経験や環境の中で積み上げられてきたものなので、デザイン思考を学んでも、急にその考え方を変えるのは難しいということです。日々チャレンジを続け、自分の考え方として身に付けていくしかないのです。私の場合は、スタンフォード大学という環境が、考え方の変化を後押ししてくれました。失敗を恐れずにデザイン思考を用いて問題に挑戦できる環境は、私がもっていた価値観や考え方を捉え直す本当によい機会でした。

急に大きく環境を変えるのは難しいと思ったら、たとえば家族との会話をファシリテート(促す)してみる、普段の生活に不便を探してみる、そういった小さなことから始めてみましょう。また、もしあなたが先生や企業でイノベーションを起こそうとしている方だとしたら、ぜひ新しいことや、今までとは違うことに挑戦できる環境や機会をつくることを考えてみてください。

実践 スタンフォード式 デザイン思考
ジャスパー・ウ(Jasper Wu)
スタンフォード大学による「d.school」でデザイン思考を学び、デザイン思考のワークショップファシリテーターとしてキャリアをスタート。またプライベートでは「増し増し.inc」を立ち上げ、"Unlock your creativity" をテーマにデザインワークショップやトレーニングなどを行う。
見崎 大悟(みさき・だいご)
工学院大学工学部機械システム工学科准教授。
東京都立大学大学院 工学系研究科 機械工学専攻 博士課程修了。 2015年~2016年に、Stanford University, Center for Design Research, Visiting Associate Professorとしてデザイン思考の研究を行う。

※画像をクリックするとAmazonに飛びます